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第29回 ゼミ論文発表会

今年度の最終回となった今回のゼミでは,ゼミ論文発表会が行われました。

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第28回 ゼミ論文経過報告8

報告の最終回となった今回は,次の2つの報告がありました。

・政党助成制度に関する憲法上の要請の内実(棚町)
ドイツの政党助成に関する判例の展開を踏まえて,日本の政党助成制度に対する憲法上の要請を考えるものでした。既存政党を有利に扱っているとされる現行制度に対して報告者は批判的でしたが,これに対しては助成の正当性や助成対象をどのように限定するのがよいのか等の点が議論されました。

・「自炊」からの権利者保護制度(秋吉)
書籍の自炊に対してどのような著作者保護のしくみが考えられるかが焦点になりました。その前提として自炊支援ビジネスがそもそも適法なのか,もし違法であればどのような規制手段を使ってコントロールすべきかという点が議論の際には問題になりました。

第27回 ゼミ論文経過報告7

新年最初のゼミは教育法に関係する3本の報告がありました。

・学校統廃合問題における条例と司法審査(丹下)
学校選択制の導入をきっかけとする学校統廃合問題についての判例を検討し,保育所廃止条例に処分性を認めた最高裁判決を小学校廃止についても押し広げて考えることができるかを扱うものでした。議論の中では,処分性と原告適格とを一体的に判断することの是非や,学校統廃合問題と学校選択制の問題とでは位相が異なるのではないかという意見が出されました。

・法科大学院の認証評価制度(小磯)
法科大学院の認証評価制度と小中高の学習指導要領とを比較し,教育内容に対する介入のあり方を考えるものでした。認証という手法そのものの意義や監督手法との違いがまだ十分には示されていなかったため,その点の解明が課題となりそうです。

・必置規制に対する条例制定権(前原)
大阪府教育基本条例案を素材に,地方教育行政法と条例制定権との関係を検討するものでした。知事の目標設定・教育委員に対する罷免権・教職員に対する懲戒処分基準の条例化などについて行政法上の論点を詰めて検討することや,教育委員会の政治的中立性をどう考えるかが課題として示されました。

第26回 ゼミ論文経過報告6

年内最後となったゼミでは,次の2本の報告がありました。

・原発訴訟(中山)
原発訴訟における原告勝訴の可能性を探るべく,第二次控訴審で原告が勝訴したもんじゅ訴訟(本案)の差戻後控訴審・上告審の検討を行い,そこから行政裁量の審査方法について検討する内容でした。質疑の中では実体的判断代置と判断過程統制との違いや,行政手続整備の必要性などが議論されました。

・再生可能エネルギーの固定価格買取制度(阿部)
今年成立した再生可能エネルギー特措法の法的しくみの分析と,類似の法制度を持つドイツとの比較が中心でした。RPS制度との違いや,発送電分離論との関係などに質問が集中していました。

第25回 ゼミ論文経過報告5

今回はオープンゼミでした。今回は以下の2報告がありました。

・北九州市のリサイクル事業(小木野)
北九州市のエコタウン事業・環境未来税・不法投棄問題が扱われていました。論文の中心がどこにあるのかという質問や,法定外目的税の課税対象・課税目的についての質問や議論が多かったです。

・公益通報制度の実効性確保(福地)
公益通報制度の制度の説明や,具体的な問題事例,改善の方向性を論じるものでした。内部通報と公益通報の関係や,行政が公益通報に対して何もしなかった場合の訴訟の可能性についての質疑がなされました。また自治体のコンプライアンス制度の位置づけについても活発な意見が出されていました。

第24回 ゼミ論文経過報告4

今日は以下の3つの報告がありました。

・長崎県における市町村合併(田代)
長崎県における市町村合併の事例をインタビューなども交えて分析し,地域自治区など合併後の地域自治を行うしくみの問題点を検討するものでした。質疑の中では地方財政の問題をどう考えるのか,恒久的な地域自治のしくみと合併とは矛盾するのではないかといった指摘がなされました。

・住民投票(木下)
住民投票の法的拘束力と住民発議の住民投票が認められるべきかという2点に焦点を絞って,住民投票活性化のためのルールを考えるという方向性でした。それでもまだ問題意識や具体的な問題状況が絞り込めていないので,どの点を掘り下げるかの検討が今後の課題となりそうです。

・公立保育所の民営化(上山)
前回からテーマが変わって,公立保育所を社会福祉法人を受け皿として民営化する際の問題点が扱われていました。待機児童を減らすという目的からすると民営化が相応しい処方箋ではないのではないか,民営の法人組織にもバリエーションがあるのではないかといった指摘がなされました。

第23回 ゼミ論文経過報告3

今回は,以下の2本の報告がありました。

・行政型ADRにおける行政の役割と機能(安井)
公害等調整委員会・労働委員会・建設紛争の処理・高層建築物等に関する紛争処理などの具体的な制度を説明した後,ADRの一般的な意義をまとめ,行政型ADRの特色を検討するものでした。制度の詳細は緻密に調べられていましたが,これとADRの一般論との結びつきが不明確であったこと,行政型ADRを介入として捉えて良いのかどうか(対応する行為形式は行政行為なのか行政指導なのか)などの点が質疑では指摘されました。

・冤罪被害者への賠償(甲斐)
費用補償(刑事訴訟法)・国家賠償・刑事補償の3つの方法から冤罪被害者への補償を充実させることを検討する内容でした。質疑ではこれら3つの関連性が分かりにくいことや,報告者の本当の問題関心がどこにあるのかがなお明確ではない点が指摘されていました。

第22回 ゼミ論文経過報告2

今回は,交通問題に関する3つの報告が行われました。

・福岡市都心部における交通渋滞対策(上野畑)
ロードプライシングに焦点を絞り,その法的な制度設計の際の問題点を検討する内容でした。質疑の中では,そもそもロードプライシングの導入の是非や導入の必要性の判断基準については議論しないのか,法形式の問題はどの程度の意味があるのか,法律でロードプライシングを導入した場合にはどうなるのかといった質問が出されていました。

・ツアーバスの功罪(加藤)
従来のバス事業が,収益性の高い高速バス事業の収益によって不採算のローカル路線を維持する内部補助の方式を採っていたのに対し,ツアーバスは不採算部門を持たないために競争条件が平等になっていないことが指摘されました。報告者としては,高速バスに関する規制をツアーバス規制並みに緩和した上で,不採算部門についてはコミュニティバスなどの別の手段で維持することを考えているようです。これに対しては,ツアーバスの安全面での規制は現状のままではよくないのではないか,コミュニティバスによる路線維持は本当にうまくいくのかといった意見が出されていました。

・航空自由化(栄留)
前回とは方向が変わって,国際法的なしくみ(シカゴ=バミューダ体制)にも検討の対象を広げた上で,航空自由化の是非を問う方向での報告がなされました。質疑の中では,航空自由化の意味が議論の文脈によって異なっていることや,運賃の問題と路線の問題とを分けて議論した方がよいのではないかという点が指摘されていました。

第21回 ゼミ論文経過報告1

今回から2巡目の報告に入りました。

・原発作業員の労働問題(礒部)
前回から方向性を変更し,原発作業員の労働問題に焦点を当てる内容となりました。原発労働を巡る現状と問題点がよく整理されていました。質疑では,労災補償制度による認定がなぜ得られにくいのかという点や,放射線管理手帳の法的根拠や運営主体の法的性格が議論されました。

・放射能に汚染された廃棄物の処理(鵜篭)
福島第一原発周辺の廃棄物に関するこれまでの取り扱いの経緯や,廃棄物処理法制の一般的なしくみが紹介されました。議論の中では,放射性廃棄物の定義や,放射性廃棄物処理のルートでの解決の可能性などが指摘されました。

第20回 ゼミ論文構想報告5

ゼミ論文構想報告の最終回は以下の4つの報告がありました。

・行政型ADRにおける行政の役割と機能(安井)
公害等調整委員会の裁定に代表される行政型ADRの機能が取り上げられました。報告者はこれを私人間紛争に対する行政の介入ととらえているようです。議論では,なぜ行政型ADRを取り上げるのか,行政指導とはどのような関係にあるのか,行政が規制権者としての立場にあるときとそうでないときとで状況が違うのではないかといった意見が示されました。

・公益通報制度の実効性確保(福地)
内部告発者を保護する公益通報制度の現状と問題点が指摘されました。議論の中では,組織内部での通報者保護の問題と,行政がこれを受け止めた際の行政調査権の迅速な発動の問題とを明確に切り分けて議論した方がよいのではないかなどの意見が出されました。

・政党に対する憲法学的統制と政党助成制度(棚町)
1990年代の政治改革の際に導入された政党助成金が「義務なき『特権』の付与」ではないかという問題意識から,憲法から政党助成制度に対する要請を引き出そうとする方向の議論でした。これに対しては,政党助成金は政治資金規正法の改正とセットだったのだから政治資金一般の問題も議論の射程に含めるべきでないか,あるいは憲法から政党助成制度に対する要請をどうやって引き出すのかといった意見が出されました。

・冤罪被害者に対する賠償(甲斐)
冤罪被害者に対する現在の刑事補償の額が低すぎるという問題意識から,刑事補償と国家賠償による救済・改善を検討する内容でした。質疑では刑事補償による補償額が概ねどのくらいなのか,報告者はどの程度の額の補償があれば良いと考えているのか,判例が固まってしまっている国家賠償法による請求は本当にできるのかといった点が議論されました。

第19回 ゼミ論文構想報告4

今回のゼミでは,前回やむを得ない事情で欠席した上山さんも含めて全部で5人からの報告がありました。

・自治体の民営化(上山)
千葉県佐倉市のユーカリが丘ニュータウンの事例を踏まえ,自治体が果たすべき役割と民間が果たすべき役割の境界線に報告者の関心の中心があるようです。議論の中では「民営化」の概念が指すものが分かりにくいといった意見が出されていました。今後は民営化論に関する文献を読んで概念を整理すると共に,どのような具体例を散り挙げて議論するとよいかを検討することが必要になりそうです。

・「自炊」支援ビジネスは違法か(秋吉)
書籍や雑誌を裁断してPDF化する自炊を支援するビジネスが著作権法違反になるのかという問題から,著作権制度の意義を考える内容でした。いわゆるカラオケ法理の問題など,著作権法のかなり詳細な内容に立ち入った報告でしたが,報告者の本当の関心事項と「自炊」支援の問題とが必ずしも重なっていないのではないかという気もしました。

・福岡市都心部における交通渋滞対策(上野畑)
福岡市の交通渋滞を解消するために自家用車の乗り入れ規制をどのように行うかという内容が中心でした。報告者は公共交通を重視する立場でしたが,議論の中では,都心部の渋滞はむしろバスやタクシーが多すぎることが原因なのではないかとの意見が出ていました。渋滞の原因について整理した上で対策を練り直すことが必要かも知れません。

・ツアーバス等に見るバス業界の規制緩和の功罪(加藤)
最近増加しているツアーバスによる格安高速バスをめぐる状況や問題点を整理した上で,規制緩和のあり方を考えるものでした。報告者の問題関心の中心が格安高速バスと規制緩和との間で揺れているようなので,中心をどちらかに絞った方が良いのではないかとの意見が出されていました。

・空港管理の再検討(栄留)
我が国の地方空港が多すぎて一方では不採算の空港が増え,他方では利用者が必要としているところに航空路線が割り当てられていないことを問題視し,空港管理に競争原理を導入してはどうかというのが報告の中心でした。航空自由化による弊害を交通基本法で解決するという方向性が示されていましたが,これに対しては航空自由化と空港管理との関係がなお分かりにくいことや,交通基本法の内容がこの問題の解決に繋がるのかといった意見が出されました。

第18回 ゼミ論文構想報告3

今回のゼミでは,広い意味でのまちづくりに関連する3本の報告がありました。

・放射能の付着した廃棄物の処理(鵜篭)
ゼミ合宿段階での災害に強いまちづくりという構想からやや転換し,震災によって多量に生じている放射能の付着した廃棄物の処理をどうするかという問題を扱う報告でした。問題意識は非常に明確なので,今後は関連する法制度の調査と,改善策の検討作業が必要となりそうです。

・市町村合併(田代)
ここ数年で進行した市町村合併(平成の大合併)がもたらしている光と影を評価し,今後の地方自治体のあり方を検討するものでした。議論の中では市町村の適正規模とはどのように決まるのか,長崎県の事例を見ながら合併の利点と欠点を類型的に分析したほうがよいのではないかといった疑問・提案が出されました。

・「まちづくり」における住民投票の意義(木下)
地方公共団体レベルにおける住民投票の意義や制度設計を取り扱う報告でした。報告者の関心の中心は住民投票一般というより,いわゆる迷惑施設を受け入れるかどうかを巡る住民投票にありそうです。議論の中では住民投票と憲法との関係や,行政過程における参加のあり方との関係が取り上げられました。

第17回 ゼミ論文構想報告2

第2回のゼミでは,原子力と環境問題に関する3つの報告がありました。

・再生可能エネルギー特措法における固定価格買取制度(阿部)
今年8月に成立した再生可能エネルギー特措法の法的しくみや諸外国の理事委のしくみ,今後の詳細な制度設計上の問題点が報告されました。価格固定の必要性や賦課金の法的性格,発送電分離との関係などが議論の中では取り上げられました。

・原発訴訟(中山)
これまでの原発訴訟で原告側がほとんど負けてきたという問題から,どのようにすれば原発訴訟において原告側の主張が入れられるようになるのかを検討するものでした。具体的には本案審理の活性化と原発専門裁判所の設置案が示されました。議論の中では,訴訟の問題だけでなく,原子力発電所の設置や管理に関する行政過程への参加権の問題も取り上げるべきではないかという点が示唆されました。

・北九州市の環境行政(小木野)
環境ビジネスによる北九州市のまちづくりの方向性が報告の中心でした。議論の中では,環境ビジネスの概念や,報告の中心となる問題意識をめぐってさまざまな質問が出されていました。今後は,問題意識の更なる明確化が必要となりそうです。

第16回 ゼミ論文構想報告1

後期初回となったゼミでは,次の4人の報告がありました。

・教基法改正による教育環境格差の表面化(丹下)
2006年の教育基本法改正などを中心とする最近の教育改革が教育権や学習権の議論にどのような影響をもたらしうるのかという点が報告の中心となりました。議論の中では教育権・学習権の概念の有用性や,学校選択制に対する評価などが取り上げられました。

・学習指導要領の法的性質(小磯)
本質性理論の観点から学習指導要領の法的性質や規律密度の問題を考える方向の報告でした。告示の法的性質よりもむしろ教育内容の決定者や決定方法に報告者の関心の中心がありそうです。

・地方分権と教育行政(前原)
教育委員会のあり方や,首長との関係,国との関係が取り上げられていました。問題関心の出発点は昨年度の報告者のゼミ論文(地方財政)のようですが,議論の中では,むしろ地方公共団体の教育行政組織を巡る議論にシフトした方がよいのではないかとの方向性も示唆されました。

・震災に伴うリストラ問題(礒部)
東日本大震災により生じているいわゆる震災リストラや労災の問題が包括的に示されました。議論の中では,もっと問題を絞った上で検討した方が論点の拡散が避けられるのではないかという意見が示されました。

第15回 合同ゼミ

9月9日に学習院大学法学部において,学習院大学大橋ゼミとの合同ゼミが行われました。前回の合同ゼミは九州大学での開催でしたが,今回はホストとゲストが入れ替わる形になりました。学習院大学大橋ゼミからは約20名の参加があり,こちらからはゼミ生7名と教員2名が参加しました。

最初に,それぞれのゼミから3人ずつ,ゼミ論文構想の報告が行われました。
報告のテーマは以下の通りでした。

(学習院大学大橋ゼミ)
・東京臨海副都心におけるまちづくり
・原子力発電所をかかえるまち~柏崎・刈羽~
・国旗・国歌の強制と公務員の人権

(九州大学村上・原田ゼミ)
・北九州市の環境行政
・日本のエネルギー法制と原子力政策の再構築
・航空行政

次に,札幌市耐震偽装事件最高裁判決の検討が行われました。事案・原審の検討と最高裁判決多数意見の検討を九州大学側が,田原裁判官補足意見と那須裁判官反対意見の検討を学習院大学側が担当しました。終了後は合同ゼミコンパが開催されました。

また翌日には,東京在住者を中心とするゼミ生OB・OGとの交流会が開催されました。お集まりいただいた皆様,ありがとうございました。

ゼミ合宿

今年も9/5-6日に九重でゼミ合宿を開催しました。当初は2泊を予定していましたが,同じ週に大橋ゼミとの合同ゼミが入ったことから,予定を短縮することになりました。

ゼミ合宿ではゼミ論文の構想が報告されました。現在のところの構想は以下の通りでした。

・改正教育基本法の内容(丹下)
・学習指導要領の法的性質(小磯)
・地方公共団体における教育行政と教育委員会制度(前原)
・住民のための原発訴訟(中山)
・再生可能エネルギー特別措置法について(阿部)
・地方自治の本旨と地方分権(田代)
・民間主導のまちづくり(上山)
・福岡市の交通政策(上野畑)
・ツアーバス等に見るバス業界の規制緩和の功罪(加藤)
・災害対策法制(鵜篭)
・非正規労働の現状と課題(礒部)
・政党の内部秩序に対する憲法的統制(棚町)
・公益通報(福地)
・行政型ADR(安井)

・書籍の「自炊」支援サービスは違法か(秋吉)
・「まちづくり」における住民投票の意義(木下)
・冤罪と国家賠償(甲斐)

・北九州市の環境行政(小木野)
・日本のエネルギー法制と原子力政策の再構築(イモQ)
・航空行政(栄留)

第14回 自然公園法の不許可補償

前期ゼミの最終報告は,Eグループによる自然公園法の不許可補償に関するいくつかの下級審判決の報告でした。容易には手に入らない参考文献などを使った報告で,損失補償についての理解を深める点でも良い機会であったと思います。

議論の中では「憲法上の補償」と「政策上の補償」という概念が十分にクリアなものとはなっていなかったために紛糾する場面が多かったように思います。参考文献を踏まえつつも自分なりに問題の切り分けを考え直してみることも必要であったかも知れません。

第13回 国道43号訴訟

判例報告の4回目はDグループによる国道43号訴訟の報告が行われました。レジュメに写真が入っており,状況をイメージしやすかったです。

報告と議論で論点となったのは,受忍限度論の考え方と供用関連瑕疵の考え方です。いずれも直前の行政法IIで取り扱われた内容ではありましたが,具体的な事件を詳しく検討することで,教科書に書かれている内容をより実感を持って理解することができるようになるのではないかと思います。

第12回 伊方原発訴訟

判例報告の3回目はCグループによる伊方原発訴訟の報告でした。全階のテーマ報告に引き続き力の入った報告で,伊方原発訴訟に関する論点をほぼ網羅し,それぞれについて緻密な検討がなされていました。

質疑の中では,裁判所による行政判断の審査のあり方,原子力委員会の審査の手続の適切性が主として議論されました。

第11回 国立マンション訴訟

判例報告の2回目は,Bグループによる国立マンション訴訟でした。事前レジュメ以降は神戸大学の角松先生もメーリングリストで議論に加わられ,論点や立場が明確な報告となりました。

報告者の報告は同事件に関する公法系の研究者の評釈に依拠していたため,景観と財産権規制に関する民事法と行政法の違いの部分が強調される方向でした。これに対しては質疑の中で,絶対的所有権観とはどういう意味か,互換的利害関係論が民事法に適用できないのは何故かといった点が議論されました。

第10回 紀伊長島町水道水源条例事件

2巡目の報告は,各テーマに関連する重要な判例の検討です。その初回となった今回はAグループによる紀伊長島町水道水源条例事件の報告が行われました。

報告では,事業者に対する配慮義務がなぜ出てきたのかが中心に取り扱われました。ただ,判決文から離れた議論が目立ったので,次回以降の報告グループはもっと判決文を丁寧に読む方が良いと思いました。議論の中では今回の条例が「後出し」なのか「ねらい撃ち」なのか,対応する先例は何なのかなどが特に取り上げられました。

第9回 生物多様性保護と自然公園法制

記念すべき最後のテーマ報告は,小磯君・安井君・丹下君・加藤君のグループによる自然保護法制の報告でした。

問題設定は「曽根干潟を守るにはどうすればよいか」でしたが,これに対する方策として説明されたのが環境アセスメントと生態系保護,自然公園法制,市民訴訟・団体訴訟でした。いずれも詳細にわたって調査がなされており興味深い内容でした。

議論の中では,アセスメントの改善可能性や市民訴訟・団体訴訟の制度化に必要な基礎理論の理解に議論が集中していました。

第8回 環境メディア法制と公害紛争

今回は,木下君・前原君・イモQ君・福地君のグループでの環境メディア法と公害紛争に関する報告がありました。

報告ではまず日本の大気汚染防止などの公害対策のあり方が説明され,次に中国からの黄砂や汚染物質の九州地域への飛来とその問題点が説明されました。その上で,国内法と国際法の観点から中国の公害問題を解決する方向性を検討するという内容でした。

質疑の中では,国際的な環境保護のしくみ(京都議定書・ヨーロッパにおける大気汚染防止の枠組など)や日本で発展した環境技術の中国への移転の可能性などが議論されました。

第7回 エネルギー法制と地球温暖化問題

今回は,秋吉さん,甲斐さん,礒部さん,田代さんにより,エネルギー法制についての報告をしていただきました。

報告は,まず始めに日本におけるエネルギー法制を見たのちに,その中で特に原子力発電について関連法制度から現行法上の問題を指摘し,最後に,原子力発電所を維持する場合と廃止する場合のそれぞれの問題点について,住民参加や再生可能エネルギーの活用などによって解決をはかるべきとの主張がなされました。

議論では,原子力発電所の設置許可は行政法学上の許可か特許かといった問題や,住民投票に拘束力を持たせることについての憲法などからの問題点の有無などが話し合われました。また原子力発電所の立地選定において,日本では文献調査への応募さえ1件しかない点をあげ,フランスやドイツではなぜ原子力発電所の立地選定がうまくいったのかが検討されました(上山)。

第6回 景観法制と建築紛争

今回は,棚町くん,上野畑くん,上山さん,栄留くん,李さんのグループより,景観法制の報告をしていただきました。

内容としては,都市景観に関する法制の歴史的経緯を見たのち,景観法のしくみ(景観計画,景観地区)を説明し,最後にヨコ(私人間)の意見調整をする場として,公聴会,ワークショップなど設けるために法律レベルのルール策定をするべきという主張がありました。

議論としては,合意形成の手段として,公聴会などが本当に有効なのかどうかが話し合われました。公聴会以外にも,土地区画整備事業における組合方式など,ほかの手法に何かならうことはできないのかといった意見が出ました。また,景観計画と景観地区ではそもそも対象にしている場所の広さ,それに影響を受ける私人の数などに差があるため,それぞれに適した意見調整のやり方があるという点も指摘がされました。

景観法,都市計画法など,参照すべき法制度が多い分野でしたが,しっかりと調べられていたと思います。次回以降も,これ以上を目標に頑張っていきましょう(安井)。

第5回 循環管理法制と廃棄物処理問題

本日からグループ報告になります。授業等で大変だとは思いますが,報告のほうも頑張っていきましょう!
記念すべきグループ報告第1回目は,中山くん,阿部さん,鵜篭くん,小木野くんによる廃棄物処理に関する報告でした。

思い返してみれば,われわれも普段生活する中で,多くの廃棄物を出しています。1枚あたり30円(30リットル)の福岡市のゴミ袋は,一人暮らしの私の家でも減るのがなかなか早いものです。ご実家にお住まいの方はなおさらではないでしょうか。

報告の内容は,そんな家庭で出る廃棄物(一般廃棄物)ではなく,工場などで出る産業廃棄物に関するものでした。排出業者に関する問題,処理業者に関する問題に対応するためにマニュフェスト制度や許可制の採用などが廃掃法関連の法制度の整備で行われ,しかし住民参加の制度が不十分であるために本来優良な処理業者等にも住民の反対が集まるという分析から,住民参加の充実を主張していました。

それに対する議論としては,住民参加の方式として公聴会を提案していたことに対し,私のいたグループでは,ほかの制度を選択する余地はないかなどが話し合われました。

初回のグループ報告としては,すばらしいものをしていただいたと思います。このままハードルがあがっていくかと思うと,最後に報告するグループの一員としてはまさに戦々恐々ですが,この報告に負けないように頑張ります。ほかのグループの方も,今回の報告に負けないようなすばらしいものを期待します。なお,原島さんからもご指摘ありましたが,次回からはお互いに,もうひとつのグループに対する「適正配慮」をして,白熱した議論ながらも声は控えめでお願いします(もちろん私も気をつけます)(安井)。

第4回 環境法と環境政策の基礎

今回から環境法の具体的な内容に入りました。今回は事前に配られた予習課題に従って,環境法の重要な内容と報告テーマの前提となる事項の説明が行われました。とくに最初のグループは準備時間が限られてしまっていますが,今日の内容も踏まえて魅力的な報告を準備して欲しいと思います。

第3回 行政法Iの復習(2)

前回に引き続き今回も行政法Iの復習の報告がありました。報告者と報告テーマは以下の通りでした。

・インカメラ審理(加藤)
・行政調査(福地・イモQ)
・明白性補充要件説(丹下)
・裁判所による行政裁量の審査(小木野)
・代替的作為義務(田代)

いずれも行政法総論の中で理解が難しい問題ですが,この機会に理解を深めて下さい。

第2回 行政法Iの復習(1)

今週は,「行政法Ⅰの復習」ということで,3年生からそれぞれのテーマに関する報告をしていただきました。

報告の内容は,以下の通りです。
・阿部さん:行政裁量
・礒部さん:法律と条例の関係
・上野畑くん:行政行為と行政契約
・上山さん:契約正義論
・鵜篭くん:権限禁止濫用原則
・栄留くん:行政指導

阿部さんの行政裁量については,行政の活動を覊束行為と裁量行為にわけ,さらに後者を覊束裁量(法規裁量)と便宜裁量(自由裁量)にわけるという学問上のゼロサム的な分類は裁判上とられておらず,実際は行政の裁量の度合いの問題,つまり審査の幅の問題として表れていると見る方がよいのではないかということが話にのぼりました。

磯部さんの法律と条例の関係については,条例とひと口にいっても①法律の委任に基づく委任条例,②とくに法律の委任なく制定される自主条例があり,とくに①の委任条例が問題となるテーマです。従来の法律先占論の相対化が公害問題に端を発するなど,環境法ともかかわりの深いテーマですので,難しいながらしっかりと押さえたい論点です。

上野畑くんの行政行為と行政契約の区別については,①法律根拠の要否②規律力の有無③公定力の有無で区別するとあります。行政行為で行うのか,行政契約で行うのかについては,実務上のメリット・デメリットがあり(土地収用の例などは典型です),レジュメで述べられているように選択的関係となりやすく,論点としては重要なものだと思います。

上山さんの契約正義論の報告については,恥ずかしながら私は初耳のもので大変新鮮でした。契約正義論は,行政法規違反の契約の効力を私法上も無効とする余地を広げようとするもので,消費者保護などの場面で活躍しそうな論理ではありますが,行きすぎると私的自治の原則に抵触するなどの問題点には注意が必要そうです。

鵜篭くんの権利濫用原則については,比例原則との対比として,比例原則が量的規制なのに対し,権利濫用原則が質的規制ではないかという結論が提示されました。権利濫用原則は,とある目的のための法制度を異なる目的のために流用するという場面で特に問題となるので,確かに質的な規制といえる部分は多分にあるように思われます。目的の流用という側面から考えると,法律の目的規定違反による違法判断(つまり,単純な法解釈)でカタがつくということも考えられるという点も先生からご説明いただきました。

栄留くんの行政指導については,私のいたグループでは,石油カルテル事件との関連から,行政指導の適法性と違法性阻却事由との関係性の方に話がいきました。行政指導は,柔軟性のある行政の活動でありメリットも当然あるわけですが,このカルテル事件のような不透明性があるということは留意しておきたいものです。

以上6名の報告がありましたが,どの報告も水準が高く,良い報告だったのではないでしょうか。次回も同様に,3年生による行政法Ⅰの復習の報告があります。4年生も行政法Ⅰについては記憶があいまいな部分が多い(私だけ?)と思われますので,一緒に復習ができたらと思います(安井)。

第1回 オリエンテーション

記念すべき第1回は,ほかの講義・ゼミとおそらく同様に,オリエンテーションを行いました。
昨年から大幅に顔ぶれも変わった(思わず教室を間違えていないか確かめに行ったほどです)ので,気分も新たに頑張っていきたいと思います。

今回は,報告担当及びゼミ役員を決めました。ゼミの役員の方も,(幸運にも?)役員とはならなかった方も,ゼミの一員として,報告を頑張っていきましょう。私としては,はからずも昨年サボってしまった広報委員のおつとめを,今年こそはしっかり行っていきたい所存です。

また,モデル発表として「比例原則」について,私から報告をさせていただきました。内容としては,主に,比例原則と裁量統制の関係性が議論となりました。
①行政に裁量権がない場合は司法の判断が優先される(実体的判断代置)ため,「比例原則違反イコール違法」の判断ができる一方で,
②行政に裁量権が認められる場合は基本的に行政の判断を尊重し,どうしても認めることのできないほど程度のひどいものにかんして裁量権の逸脱・濫用という形での統制を行うため,比例原則違反の程度が問題となります。
また,行政に裁量がないということは,法律にしっかりと要件・効果が書いてある(ただし立法裁量はある)ということなので,法律による行政の原理の問題となり,比例原則の問題としてとらえにくいという点も先生からご説明いただきました。

さて,第1回のゼミは欠席者も出ず,とりあえずは幸先の良いスタートを切れたのではないかと思います。さしあたってはゼミの仲間の顔と名前を覚えることを目標に頑張っていきましょう。次回は,3年生による行政法Ⅰの復習に関する報告があります。良い報告を期待しています。

それでは,今年も1年よろしくお願いします(安井)。

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