角松生史 神戸大学教授

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ゼミ生から見た角松先生

自称,「角松ゼミ1期生」の私たちから見た角松先生は,一言でいえば,「無限の引き出し」を持った先生です。一度話せば,その引き出しの多さに圧倒されます。何せ,法律のみにとどまらず,政治・文学・芸能…と,あらゆることに精通していますから。お忙しいのに,一体いつ情報収集をなさっているのか…謎です。

そして,ゼミでの先生は,私たち一人ひとりの関心がその問題のどの部分にあるのか…ということを常に考え,それぞれの関心事を尊重してくださいます。ゆえに,学年末に作成するゼミの論文集のテーマは,学生それぞれ多種多様でした。一見すると統一感がないようにも感じられますが,それこそが角松ゼミの個性なのだと思います。

法学部卒業後,法科大学院での授業で再会した際には,「成長した姿をお見せできる!」と内心ドキドキしながら授業に臨んだのですが,ゼミ生であったがゆえに(?),難解な質問をされ困惑する…といった一場面もありました…。角松先生は,卒業後の今でも,私たちゼミ生のことを気遣ってくださいます(これも,いろいろなことについて)。何かにつけ,角松先生を心配させてばかりの1期生でしたが,私たちゼミ生も先生の,やや地理的感覚が弱い部分を心配しております(笑。

そんな角松先生は,これから先も,ご自身の研究へはもちろんですが,学生への指導に対しても力を注いでいかれるのだろうと思います。そして,先生に愛情を注がれ育てられた私たちゼミ生は,社会に貢献できる人材になれるよう日々努力することをお約束したいと思います。それまで暖かい眼で見守っていてくださいね。

(野上裕貴,樋爪葉子,松浦里美)

角松先生の研究業績

角松先生の院生時代

角松生史先生(神戸大学大学院法学研究科教授)は1963年に福岡県久留米市でお生まれになり,1986年4月に東京大学大学院法学政治学研究科修士課程に入学され,研究者生活に入られました(指導教官は塩野宏先生)。同時期に研究者生活に入られたのが,斎藤誠先生(東京大学教授)と中川丈久先生(神戸大学教授)でした。

最初に取り組まれたご研究は,いわゆる「民営化」の問題でした。国家学会雑誌に1989年に発表された修士論文「『民間化』の法律学-西ドイツPrivatisierung論を素材として」は,当時の西ドイツで議論されていた国家任務論・民営化論の思考枠組を忠実かつ印象的に紹介しながら,我が国における民営化に対する法律学のアプローチ方法を模索した作品で,この分野におけるパイオニア的な業績です。その後,博士後期課程へのご進学後は,民営化論のキー概念の一つである「公共性」をより具体的に検討するフィールドとして,土地法へとご研究がシフトされました。1992年から95年までの東京大学社会科学研究所助手時代の研究である,「憲法上の所有権? ─ドイツ連邦憲法裁判所の所有権観・砂利採取決定以後」(1994年),「『古典的収用』における『公共性』の法的構造─1874年プロイセン土地収用法における『所有権』と『公共の福祉』(1)(2)」(1995・96年),「土地収用手続における『公益』の観念─1874年プロイセン土地収用法を素材として」(1996年) はいずれも,土地収用を具体的な素材として,所有権概念や公益の捉え方の問題を鋭利に分析されたものであり,こうした問題を考える上で重要な数々の示唆を含んでいます。

九州大学着任後の研究

1996年4月に九州大学法学部にご着任後も,土地法・都市法を中心とするご研究が続きます。「『空間の秩序づけ』─Raumordnung概念をめぐって」(1999年),「分権型社会の地域空間管理」 (2000年)につづき,2001年に発表された「自治立法による土地利用規制の再検討─メニュー主義と『認知的・試行的先導性』」では,我が国の土地利用規制を「メニュー主義」という切り口から明快に分析され,その後同論文はこの用語とともに多く参照されています。 さらに,国立市のマンション事件を扱った一連の作品(「建築基準法3条2項の解釈をめぐって─国立市マンション建設差止仮処分事件(東京高決2000年12月22日)を素材にして─」(2001年),「景観保護的まちづくりと法の役割─国立市マンション紛争をめぐって」 (2002年),「地域空間における『景観利益』─国立市マンション訴訟」 (2003年)「景観保護と司法判断─国立市マンション事件民事控訴審判決」(2005年))では,景観利益の特色と,オーソライズに至っていないローカルルールの生成を理論的に把握することを試みていらっしゃいます。2004年に公表された「『計画による公共性』再考―ドイツ建設法における『計画付随的収用』は,こうした研究の集大成としての性格をもつ作品であり,ドイツの計画付随的収用を素材として,計画による公共性の創出と収用との関連性を明晰に提示しておられます。

これに対し,修士論文時点での問題関心とも接点のあるご研究として,次の2つの作品を挙げることができます。1つは,2002年の公法学会部会報告をベースとした「『公私協働』の位相と行政法理論への示唆─都市再生関連諸法をめぐって」(2003年)です。ここでは都市法において「公私協働」と捉えられている事象を具体的素材として,情報処理の観点からの規範的な評価を試みています。同じ観点から行政法理論の再構成を図っておられる部分も見逃せません。もう1つは行政法の争点(第3版)所収の「行政事務事業の民営化」(2004年)であり,ドイツ法からの知見も踏まえながら,従来の我が国の民営化に関する法学的な研究動向をコンパクトかつ示唆的にまとめておられます。

角松先生は(残念ながら)2005年10月から神戸大学に移られましたが,今後も,幅広いご関心を武器に,多様で興味深いご業績を次々と出されていくことと思います。

著作物の紹介

角松先生がこれまでお書きになった著作のリストは(草稿版へのリンクも含め)ご自身のサイトあるいはresearchmapにまとめられています。

(原田大樹)

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