paco Home>授業関連>演習科目一覧(九州大学)>大橋ゼミ第8期(00年度)
シラバス
基本情報
- 授業科目名: 法律演習
- 講義題目: 行政法演習
- 開講学期・単位数・時間帯: 通年・4単位・火曜日4限
- 対象学年: 3・4年生
- 担当教員: 大橋洋一
授業の概要
本年度の主要テーマは,「激動する社会に対応した行政法理論の再編」である。
前期は,下記の教材を素材として,参加者には担当となった章について,関連文献を探索し,検討した上で,教材を批判的に分析する内容の報告が義務づけられる。
後期は,参加者各自が自分のテーマを選定して,ゼミ論集掲載の論文作成にあたる。参加者の報告を基に,議論を深めるという形式をとる。
ゼミの開催にあたっては,角松ゼミと協力しながら進めることとしたい。
4年生の参加を中心に考えているが,3年生の参加も適宜認める。
授業の進め方
参加者の主体的な報告がベースとなる。報告とその準備を通して,問題発見能力,文献探索能力,情報解析能力,プレゼンテーション能力,ディスカッション能力を高めることに重点を置く。
教科書及び参考図書
前期には,自主教材(実費にて販売)を用いる。
試験・成績評価等
ゼミにおける研究報告とゼミ論集掲載の論文によって成績評価する。
その他
本演習と併行して「行政過程論特殊講義」(前期開講・4単位)を履修することが望まれる。
ゼミガイダンスパンフレット
今年度の活動内容
前期は2人グループで,行政法総論の重要論点である行政行為論について塩野宏・行政法Ⅰを素材に研究発表し,討論を行いました。夏期休暇中は各自,最新の行政法判例の評釈をしました。後期はゼミ論文作成に向けた活動をしています。具体的には自分の関心のある行政法関係のテーマ(都市計画・環境アセスメント・廃棄物処理・介護保険・原子力規制・行政改革・情報公開・PFI・住民訴訟など)を自由に選択し,よりよい論文を作成するために論文構想・経過報告と簡単な質疑応答を行っています。ゼミ論文の発表は様々な時事的問題が取り上げられるので,他のゼミ生の話を聞くだけでも普通のニュースをみるより勉強になります。活動の詳細は行政法ゼミホームページをご覧下さい。
来年度の方針
「明るく楽しく元気よく」「みんな仲良く時にきびしく」「行政法について楽しく学ぶ」ことをモットーにしています。具体的には,前期は行政法総論に関する基礎的な理解を深め,後期はゼミ論文作成にあてる予定です。同じ行政法ゼミである角松ゼミと協力して活動する予定です。
ゼミ外活動
年数回程度ゼミコンパがあります。今年度は行いませんでしたが公務員の方など実務家の方を招いてお話を伺う機会を持つ可能性もあります。
ひとこと
ほどよく笑い(大橋先生の知的なジョークもよく出ます),ほどよく楽しみ,しっかり学べるゼミ。公務員志望者はもちろんですが,大学に入ってまだ何かをやり遂げたという意識がもてない人や学習意欲旺盛な人にはとくにお勧めできます。ゼミ時間を無期限に延長することはないので遠距離通学の人も安心してご参加下さい。最南端(現在は大牟田市)最北端(現在は北九州市)記録を更新してくれる人,歓迎します。
その他
○前期は行政法総論(行政過程論)の基礎理論を扱うので行政法のことがまだよく分からない人も,ある程度分かったけど詳しく掘り下げて勉強したい人も是非参加してください。行政法って古くさいと思っている人もここで勉強すると考え方が変わるはずです。
○後期はゼミ論文作成の作業を行います。テキストから離れ現代的な問題を扱います。行政法の知識が現代社会で生活していく上で非常に役に立つことが分かると思います。条文解釈に飽きた人,法律と社会のギャップに嫌悪感を持っている人,判例嫌いな人におすすめです。
ゼミ活動の概要
前期
- 第1回(4月18日)行政法の基本構造
行政法の全体像を描くこと,今後の行政法のモデルを提示することを中心に議論が行われました。 - 第2回(4月25日)行政法の一般原則(森)
法律の留保の議論を整理した上で,予算と法律の関係,本質性理論の持つ意味などについての検討が行われました。 - 第3回(5月9日)行政過程における法律と条例の役割(水谷)
条例の法的性質や条例の制定範囲をめぐる検討が行われました。 - 第4回(5月16日)民事法と行政法の関係(井上)
いわゆる「公法と私法」の問題について,今後の方向性を示すとともに,民事法と行政法との差異についてどのような例が適当かが検討の中心となりました。 - 第5回(5月23日)行政情報の公開(宮島)
グローマー拒否をめぐって議論が沸騰しました。情報公開法と個人情報保護法を中心とした議論が行われました。 - 第6回(5月30日)行政手続法(内野)
「感受性」という言葉がキーワード?というのは冗談で,行政手続法によって改善された点と今後の課題は何かということを中心に検討が行われました。 - 第7回(6月6日)市民参加(水原)
地方議会改革の具体策をめぐって質問が集中しました。新しいテーマだけに不確定なことが多いですね。 - 第8回(6月13日)監査制度・オンブズマン・政策評価(森岡)
従来から存在している監査制度(地方自治体の監査委員,国の行政相談など)についての有効性をめぐり議論が行われました。 - 第9回(6月20日)行政の行為形式論について(山口)
行政法総論のなかでも中心的部分を占める行政の行為形式論についての議論が行われました。検討の中心課題は行為形式論の将来像でした。 - 第10回(6月27日)行政立法と行政計画(末石)
行政立法では法規命令と行政規則の二分論について,行政計画では行政立法との違いや行為形式の性格についての論議がなされました。この日,ゼミ写真撮影も同時に行いました。 - 第11回(7月4日)行政行為(森・宮島)
行政行為であって行政処分でないTypeA問題が議論されました。実体法的分類論や準法律行為的行政行為の位置づけなどわかったようでわからない,わからないようでやっぱりわからないテーマが多いです。 - 第12回(7月6日)行政契約(水谷・内野)
場の設定か,教科書的説明か...どっちがいいのでしょう? - 第13回(7月6日)行政指導(井上・水原)
行政指導のメリット・デメリット,今後のあり方についての議論がされました。
ゼミ論文ブレーンストーミングが行われました。 - 特別企画:星に願いを2000(7月7日)
行政法ゼミは怪しい集団ではありません。 - 第14回(7月12日)行政上の義務履行確保(古典的手法)(森岡・山口)
行政上の義務履行確保の現状と改善策についての検討が行われました。 - 第15回(7月12日)行政上の義務履行確保(新しい手法)(末石)
最近流行の氏名公表や給付拒否の効果と統制についての議論が行われました。
後期
- 第16回(10月17日)ゼミ論文テーマ決定,判例評釈提出
後期の日程が決定しました。次回からは判例評釈です。 - 第17回(10月24日)判例評釈①
学校作文開示請求事件(水谷,宮島)…永遠のライバル?テーマの競合の多い二人の見方の差異が興味深かったです。
荒川民商事件(末石←森)…行政調査の判例として知られる事件です。
非嫡出子住民票記載事件(内野←末石)…角松先生も評釈を書いた事件だけにいろいろおもしろい話が聞けました。 - 第18回(10月31日)判例評釈②
三菱タクシー運賃変更認可申請却下事件(山口,井上)…規制緩和との関係もあるタクシー運賃をめぐる事件を扱いました。
逗子市監査請求記録公開拒否事件(水原,森岡)…二人の見解が大きく異なっていて非常におもしろい対決でした。
二風谷ダム事件(森←内野)…様々な論点を含む有名判例ですね。 - 第19回(11月7日)
農業政策と行政法(内野←森)…米の生産調整や減反を素材として行政法的考察を加えようと言う意欲作に期待。
行政評価(宮島←末石)…まもなく始まる国レベルの行政評価についての詳細な報告でした。行政監察と行政評価のちがいはどこにあるのだろうか? - 第20回(11月14日)
ストーカー規制法を読む(水谷←内野)…行政手続,行政刑罰の点で非常に興味深いストーカー規制法に関する報告でした。僕は1割。
IT革命(森岡←水谷)…IT革命を批判的に見ることも大事。でもデジタルディバイドされないようにしましょうね。水谷君お疲れ。
年金制度(山口←水原)…大きく揺れている年金制度がテーマです。今回のゼミ論では唯一の社会保障法ですね。 - 第21回(11月28日)
地方財政(水原←山口)…地方分権で積み残しとなった地方財政,財政分権問題を扱います。
市町村合併(森←宮島)…市町村を1000にするという政府の行革大綱案をにらみながら市町村合併の是非について考えるものです。
志免町給水拒否事件(末石←森岡)…志免町給水拒否事件判決を素材にまちづくりの手法と水道について扱います。ゼミ論としては近年めずらしい事例研究タイプとなるのでしょうか? - 第22回(12月5日)
農業政策と行政法(内野)…今回は米の生産・流通問題に絞った報告でした。次第に行政法っぽくなってきた?
ストーカー規制法を読む(水谷)…桶川事件を素材にストーカー規制法の効果について検討しました。宿題は来世紀に持ち越し。 - 第23回(12月12日)
行政評価(宮島)…行政評価のチェック機関論がでてきたところで,昨年の原子力安全委員会の議論を思い出しました。
IT革命(森岡)…論点が出そろってきた感じです。次は突っ込んだ報告を。
年金改革(山口)…企業年金や401Kが素材として登場。次の課題は国家論のようです(社会保障をやるとどうしてもこういう議論の方向になってしまいますね...。) - 第24回(12月19日)
地方財政(水原)…補助金・地方交付税・地方税の3つをキーとして住民自治の観点から地方財政を眺めるという意欲作。就職先のことは気にせずに(??)がんがんやりましょう。
市町村合併(森)…市町村合併に伴う窓口減少を出張所の数で見るという方法がユニークでした。僕は毎朝香椎出張所の近くを通っているはずですけど,今まで存在を知りませんでした(福岡市民ではないから無理もないか?)。
志免町給水拒否事件(末石)…実際に現場を訪れたときの写真を報告で利用するとはさすがです。初の写真入りゼミ論? - 第25回(1月9日)オープンゼミ
ストーカー規制法を読む(水谷)…今回の発表は警告の基準を独自に作成するというものでした。すると警告が本当に行政指導なのかが再び論議に...。
農業政策と行政法(内野)…世界の農業政策と日本の農業政策史は興味深かったです。専門用語が多すぎるとの指摘も。 - ゼミ紹介(1月10日)
大橋ゼミからは幹事の(歳時記を愛する)内野さんと,副幹事の(ゼミの未来を背負う(とプレッシャーを掛けてはいけませんね,しかもネット上で)末石君が登場します。角松ゼミからはI君不在のため角松先生自らご出馬されます。今年度とは戦略を変更して合併はしないことを前提とする募集となりますが,効果の程は...? - 第26回(1月16日)
IT革命(森岡)…今回のテーマはネット事業者と規制の関係だったのでかなり行政法的なものになっていました。論点が多岐にわたるのでまとめるのは大変そう。
行政評価(宮島)…前回に引き続き行政監察と行政評価の違いが再び問題に。行政評価の実施で行政監察は後退するのか?それとも...。
年金問題(山口)…女性と年金の問題では民法家族法との関係が出てくることになって,この問題の広がり,深さを改めて知ることになりました。 - 第27回(1月23日)
地方財政(水原)…自治体が「つぶれる」の意味をめぐっていろいろと議論が...。地方交付税交付金は廃止できるのでしょうか?
市町村合併(森)…豊富なデータでの分析は非常に興味深かったです。結論はどちらに?
水道行政とまちづくり(末石)…市町村優先の都市計画か,県知事にも役割を期待するのか,難しいところです。
ゼミ反省会…ゼミ論で疲れる前にやっておいたほうがよいですね。 - 第28回(1月30日)
ゼミ論文提出…今年は昨年の反省に立って?徹夜組はわずか二人でした(その二人は辛そうだったなあ)。
提出されたゼミ論文のタイトルは次の通りでした。
- 内野美穂:「日本の米政策-食糧法下の米問題-」
- 水谷直人:「ストーカー規制の実現」
- 水原菜穂子:「地方財政を通して地方分権を考える」
- 宮島伸一郎:「監察・評価制度への評価,提言」
- 森義和:「市町村合併の具体検証」
- 森岡智:「IT革命-民間主導への転換-」
- 山口圭介:「年金危機の行方と未来」
- 末石裕光:「水道行政を通して街づくりの在り方を考える-志免町給水拒否事件を参考にして-」
ゼミ参加者
- 幹事:内野美穂(4年生),末石裕光(3年生)
- 4年生:内野美穂,水谷直人,水原菜穂子,宮島伸一郎,森義和,森岡智,山口圭介
- 3年生:末石裕光