paco Home>授業関連>演習科目一覧(九州大学)>大橋ゼミ第9期(01年度)
シラバス
基本情報
- 授業科目名: 法律演習
- 講義題目: 行政法演習
- 開講学期・単位数・時間帯: 通年・4単位・木曜日4限
- 対象学年: 3・4年生
- 担当教員: 大橋洋一
授業の概要
この授業は,毎回,参加者が分担する研究報告を中心として展開される。報告者はテーマに関する最新の文献・法令等を収集し,独自の視点でまとめ,多数の参加者の前で説得力を持って説明するように努めるものとする。
最初は1999年に改正された都市計画法及び建築基準法に関して主要テーマを選択し,議論したい。続いて,近時制定された自治体条例を素材にして,景観形成,駐車場整備,協調的土地利用,福祉のまちづくり,中高層建築物規制,建築紛争調整など現代的課題を扱う。
少人数の共同学習形式を通じて,問題発見能力,情報収集能力,レポート作成能力,プレゼンテーション能力の開発・向上を図りたい。
授業の進め方
出席者の報告に続いて,参加者で議論する。
教科書及び参考図書
①大橋洋一『行政法 現代行政過程論』(有斐閣・2001年)
②できれば簡単な自主教材を用意する(初回に実費販売)
試験・成績評価等
研究報告とゼミ論文による。
その他
前期に開講予定の「行政システム論(都市計画法制概論)」への出席をゼミ参加者には要望する。
ゼミガイダンスパンフレット
今年度の活動内容
- 4-7月 行政過程論についての報告
- 7月 七夕企画「星に願いを2000」実施
- 10月 判例評釈
- 11月 ゼミ論構想発表
- 12月 ゼミ論経過報告
- 1月 ゼミ論最終報告
- ゼミ論提出
- ゼミコンパ
行政法というとあまり親しみないかもしれませんが、普段の生活の中で、電気、水道、バスなど全てに行政法が関わっています。そんな近くて遠い行政法に、このゼミでは焦点を当て、それを通じて社会認識の目を養うことを目標としています。
来年度の方針
来年度は街づくりをキーワードに都市計画をあつかう予定です。後期はゼミ論文の作成があります。活気ある明るいゼミを目指します。
ゼミ外活動
コンパ年若干。今年はコンパとは別に笹を用意し七夕を行いました。今年度は行いませんでしたが、実務家を招いてお話を伺う機会をもつ可能性もあります。
ひとこと
- プレゼンテーション能力・情報収集能力が身につき、就職などの面接時には多大な効果を発揮します。楽しく学び、達成感と充実感をえられるゼミです。
- 自分の力が上がっていくのが、目に見えてわかるゼミ。
- プレゼンテーション能力・情報収集力が身につき、公務員志望の人でも就職希望の人でも、面接時には絶大の効果を発揮します。
- 自由にゼミ論のテーマが決められるので、やらされるのではなく自分で頑張ろうという気になります。
- 人前で話す経験や、自分でいろんなことを調べつくす経験は、今後社会人になる上で、必ず大きな財産になります。
- 情報に流されない強い意志を鍛えることができます。
- 新聞をよりわかりやすく、かつ面白く読めるようになります。
- 今まで大学に入っても何をやればいいのかわからなかった人、このゼミでなら大きな達成感が得られます。
- 今までの授業に物足りなさを感じる人、このゼミならきっと満足できます。
- 「批判」がモットーのこのゼミ。周りの人とは違った視点が生まれ、ライバルにも差がつきます(笑)。
その他
- 行政法というとあまり親しみないかもしれませんが、普段の生活の中で、電気、水道、バスなど全てに行政法といわれるものが関わっており、行政法無しでは私達の生活は決して成り立ちません。そんな近くて遠い行政法に、このゼミでは焦点を当て、私達の日々の生活を法的視点から検討し、問題点を発見することによって社会認識の目を養うことを目標としています。
- ゼミ論文についての、個人的な感想としては、多くの他の人の考え方を学び、その中から、自分なりの新しい考え方を導き出す作業なのかなぁと思います。その、充実感・達成感は大きいですよね。
ゼミ活動の概要
前期
- 第1回(4月17日) 大橋洋一著『行政法 現代行政過程論』(有斐閣・2001年)を読む
まず自己紹介及びこのゼミでのねらいについての説明がありました。続いて標記の文献を素材に,行政法総論の諸論点についての議論がありました。 - 第2回(4月24日) 報告割当・よりよいゼミ報告のために(原田)・合同ゼミコンパ
前期ゼミの報告スケジュールを決定しました。その後,ゼミ報告準備の方法や文献の探し方に関するガイダンスをしました。合同ゼミコンパは総勢18人という(近年まれに見る)大規模コンパになりました。 - 第3回(5月9日) 都市整備におけるPFI法の活用(竹下)
PFIのしくみやとらえ方をめぐっていろいろと議論がなされました。第3セクターや外部委託などとの違い,金融との関係など考慮ファクターが相当多い分野だと改めて感じました。うちのさんどう思います? - 第4回(5月15日) 福祉のまちづくり(原田)
バリアフリーを実現する行政法上のしくみ,地域福祉と福祉計画の発展,都市法と社会保障法の連携可能性について議論しました。ちょっと情報量が多すぎました。 - 第5回(5月22日) パークランドライド(矢野)
九州でのパークランドライドの取り組みからこの問題の抱える課題について検討しました。 - 第6回(5月29日) 熊本市墓地埋葬条例と原告適格(石森先生)
墓地埋葬法と自治体条例との関係について,判例の読み方について,事前協議制の問題点についてなどの議論が行われました。 - 第7回(6月5日) ニセコ町まちづくり条例(末石)
1年間の薫陶を経てパワーアップ(?!)した末石君の力の入った報告でした。初めて1日1発言が実現しました。 - 第8回(6月12日) 土地区画整理事業(甲斐)
土地区画整理事業における参加手続を収用と比較した報告でした。しくみが細かいので理解に至るのが大変ですね。 - 第9回(6月12日) まちづくりにおける中央・地方関係論(廣田)
実務経験の豊富な廣田さんによる,近時の地方分権改革の評価に関する報告でした。権限配分やその前提条件となる市町村の規模の問題,自治事務と法定受託事務の関係など議論することが極めて多岐に渡りました。 - 第10回(6月19日) 自転車行政とまちづくり(木庭)
自転車道・駐輪場の整備や違法駐輪対策などを素材に住民参加の問題まで扱う報告でした。みなさんいろいろな自転車にまつわる体験をお持ちのようで...。 - 第11回(6月19日) 川辺川ダムと土地改良事業(土肥)
土地改良事業をめぐる法制度や訴訟上の問題について活発な意見交換がなされました。それにしても土地改良法の条文は相当わかりにくいものです。政治過程もおもしろいですね。 - 第12回(6月26日) 市街地再開発(古川)
市街地再開発をめぐる住民参加,とりわけ賃借人の保護の問題についての議論が行われました。 - 第13回(6月26日) 景観形成の手法(副田)
沖縄,熊本などの例を通して,自治体の景観形成手法とその問題点についての検討を行いました。 - 第14回(7月3日) 駐輪場と放置自転車対策(大瀬)
駐輪場をどうやってつくったらよいのか,放置自転車の費用はどうやって負担させるのがよいのかを中心に,法律や条例のつくりかたをはじめ,さまざまな検討がなされました。石森先生は今回が最後のご参加となりました。ご指導ありがとうございました。 - 第15回(7月10日) 柳川市の環境整備(古賀)
クリークで有名な柳川市の環境整備のとりくみについて様々な視点から批判的検討が行われました。
後期
- 第16回(10月16日) 読書案内,ゼミ論文のテーマ
<まちづくりと都市法>
○「防災まちづくり」(古川) 書評: 田中直人『福祉のまちづくりデザイン』(学芸出版社・1996年)
○「障害者のためのまちづくり」(副田) 書評: 村尾信尚『役所は変わる。もしあなたが望むなら』(淡交社・2001年)
○「真鶴町 美の条例」(古賀) 書評: 坂和章平『実況中継 まちづくりの法と政策』(日本評論社・2000年)
○「都市法の構造分析と動態的把握」(竹下) 書評: 原田純孝編『日本の都市法Ⅰ・Ⅱ』(東京大学出版会・2001年)
<行政改革>
○「特殊法人論」(末石) 書評: 五十嵐敬喜=小川明雄『市民版 行政改革』(岩波書店・2001年)
○「行政評価法」(木庭) 書評: 金子勝『日本再生論』(日本放送出版協会・2000年)
○「自治体の行政評価と市民」(矢野) 書評: 小早川光郎編『分権改革と地域空間管理』(ぎょうせい・2000年)
<市民参加・自治>
○「市民参加」(甲斐) 書評: 西尾勝『権力と参加』(東京大学出版会・1975年)
○「住民投票の再評価」(土肥) 書評: 小谷野敦『バカのための読書術』(ちくま新書・2001年)
○「地方自治と国の関与・住民の統制」(廣田) 書評: 西尾勝『未完の分権改革』(岩波書店・1999年)
<参照領域>
○「循環型社会と廃棄物処理」(大瀬) 書評: 松本康監修 飯島伸子編著『廃棄物問題の環境社会学的研究』(東京都立大学出版会・2001年)
○「福祉・介護分野における行政契約の日独比較研究」(原田) 書評: 河野正輝『社会福祉の権利構造』(有斐閣・1991年) - 第17回(10月23日) 論文構想①
「地方自治と国の関与・住民の統制と協働」(廣田)…分権改革で残された問題に関する議論が行われました。
「福祉・介護分野における行政契約の日独比較研究」(原田)…行政契約の特色と行政行為にはない機能についてが話題になりました。福岡市の情報公開条例はおもしろそう…。 - 第18回(10月30日) 論文構想②
「条例と市民参加」(甲斐)…直接民主制の議論に甲斐君の情熱を感じました。この分野はまとまった先行研究が少ないので具体例の分析が鍵になりそうです。
「住民投票」(土肥)…95年から住民投票が急増した背景には新しい社会運動があるという仮説は論証されるのでしょうか。行政法の分野からも政治学の分野からも興味を引くテーマですね。 - 第19回(11月6日) 論文構想③
「地方自治体の行政評価(政策評価)と市民との関係について」(矢野)…行政学でも行政法でも近時議論が進んでいる分野ですが,未だによくわからない部分も多い不思議なテーマです。国の法律ができたことで研究素材は拡大しましたが…。
「行政改革における行政評価法の役割」(木庭)…政策評価のしくみを行政による自己統制のしくみととらえ,活用策まで検討する方向ですね。市民への説明責任の観点や予算との関係など,広範囲にわたる検討が求められそうです。 - 第20回(11月13日) 論文構想④
「循環型社会の構築にむけて-ごみとリサイクル-」(大瀬)…一般廃棄物の減量化に向けた取り組みにつき,容器包装リサイクル法と家電リサイクル法を中心とした制度の概要とごみ有料化問題がテーマとなりました。分野の拡大,政治過程分析,経済の国際化との関係などかなり広がりを持つテーマ設定ですね。
「特殊法人論」(末石)…特殊法人・認可法人の定義,沿革,組織形態と問題点,改革の動きなどが扱われました。行政組織法上のテーマではありますが政策手段の一つとして組織の問題を取り上げるという視点は興味深いです。 - 第21回(11月20日) 論文構想⑤
「神奈川県真鶴町の「給水規制条例」の経緯と条例についての考察」(古賀)…いわゆる「美の条例」で知られる真鶴町がその制定以前にマンション対策として制定していた給水規制条例に関する検討でした。マンション抑制=水攻めは昨年も末石君がとりあげたテーマでしたね。
「都市の管理運営について」(竹下)…都市空間管理という統一的な視座から行政法総論を眺めるという試みは大変興味深いものです。よくわからないことが多い公物法もそろそろ本格的な改革が必要なようです。 - 第22回(11月27日) 論文構想⑥
「福祉の点からみるまちづくり」(副田)…福岡市福祉のまちづくり条例を中心として,他の類似条例やアメリカのADAと比較してまちづくりを考えるというテーマ設定です。
「災害に強いまちづくり」(古川)…阪神大震災をふまえて,災害に強いまちづくりの手法を検討しようというものです。今回の報告は災害対策基本法関係が中心でした。 - 第23回(12月4日) 論文経過報告①
「条例と市民参加」(甲斐)…憲法の国民主権の学説の対立を踏まえた上での住民自治・市民参加の重要性及び条例制定過程における問題と市民参加の必要性についての報告でした。特に条例制定過程における地方議会の問題点については政治学の視点も交え興味深いものでした。
「住民参加の意義と課題」(廣田)…住民参加の意義と地方分権推進委員会勧告,分権一括法及び住民投票制度の課題についての報告でした。廣田さんが実際にお仕事の中で経験されたことも交えての報告でした。文献では見えてこないことをいろいろと知ることが出来ました。 - 第24回(12月11日) 論文経過報告②
「住民投票」(土肥)…住民投票条例の可決状況と実施状況をめぐるデータの解釈はいろいろとありそうです。政治学からの分析はダイナミックにできそうな気がします。
「福祉・介護分野における行政契約の日独比較研究」(原田)…首都圏近郊の自治体を中心に行われている福祉・介護分野のサービス評価・認証に関する実態報告でした。 - 第25回(12月18日) 論文経過報告③
「地方自治体の行政評価と市民との関係について」(矢野)…地方自治体の先進事例の考察と国レベルのしくみとの対比が今後の課題となりそうです。マネジメントの方向で進んでいく場合,市民との関係をどう考えるのかが難しそうです。
「行政改革における政策評価法の役割」(木庭)…国レベルの政策評価法の丁寧な説明がありました。政策評価法における問題点は今回の行政改革の積み残し課題とも密接な関係があるのかもしれません。 - 第26回(1月8日) 論文経過報告④
「循環型社会の構築に向けて」(大瀬)…問題の切り口を決めて掘り下げる作業は結構大変ですが,論文を書く上での面白い局面の一つですので,時間を気にしつつ頑張ってください。
「特殊法人論」(末石)…今回の発表も非常に力が入ったものでした。特殊法人の問題は組織法的にも作用法的にも興味深い問題ですので提出されるゼミ論文が期待されます。 - 第27回(1月15日) 論文経過報告⑤
「神奈川県真鶴町の「給水規制条例」の経緯と条例についての考察」(古賀)…美の条例の構造や問題点が議論となりました。
「現代行政過程を規律する2大法システムと随伴的効果」(竹下)…行政財産の管理,共有の法律関係,PFIなどを複合させてひとつの問題を解決する方策を練らなければいけないことを示す現代的問題の報告でした。 - 第28回(1月22日) 論文経過報告⑥
「福岡市福祉のまちづくりの現状と問題」(副田)…福祉のまちづくり条例であまり力点が置かれていない教育・啓発・雇用差別の問題を取り上げた報告でした。
「災害に強いまちづくり」(古川)…阪神淡路大震災での復興方法をめぐる細かい議論が必要になりそうです。あとは時間との戦い? - 第29回(1月29日) 論文提出
最終的に提出された論文のタイトルは次の通りでした。
- 「条例制定過程における住民参加」(甲斐)
- 「行政改革における政策評価法の役割」(木庭)
- 「特殊法人論」(末石)
- 「住民投票の一考察」(土肥)
- 「循環型社会の構築に向けて」(大瀬)
- 「災害に強いまちづくり」(古川)
- 「真鶴町の「給水規制条例」「まちづくり条例」を通して」(古賀)
- 「福岡市福祉のまちづくり条例を検討する」(副田)
ゼミ参加者
- 幹事:末石裕光(4年生),古川るみ(3年生)
- 4年生:土肥勲嗣,甲斐治,木庭康宏,末石裕光
- 3年生:大瀬裕子,古賀響子,副田和彦,古川るみ