paco Home>授業関連>演習科目一覧(九州大学)>大橋ゼミ第10期(02年度)
シラバス
基本情報
- 授業科目名: 法律演習
- 講義題目: 行政法演習
- 開講学期・単位数・時間帯: 通年・4単位・火曜日4限
- 対象学年: 3・4年生
- 担当教員: 大橋洋一
履修条件
行政過程論の講義を受講していることが望まれます。講義を聞いていない人は,講義テキスト(大橋『行政法』[有斐閣・2001年])を予め読んでおくことを勧めます。
授業の目的
皆さんが将来どのような職業につくとしても,社会で活躍するために是非大学で身につけておくことが望まれる知的技術・知的能力があります。それは,
・解決すべき課題を発見できること
・それに関する情報を多方面から収集できること
・情報の分析・加工を通じて私見を作り上げられること
・同僚の前でわかりやすく,しかも論理的説得力をもって報告できること
・そして同僚との議論を通じて修正・改善された解決策をまとめあげること
の5点にわたります。
これまでの講義は,聴き手として受け身の学習が主でした。ゼミナールにおいては、皆さんが報告者としての役割を引き受け,主体的に上記の能力を積極的に開発してほしいと考えます。行政法に関するテーマが素材となることが多いのですが,それは手段であって,決して目的ではありません。
授業の概要・授業計画
前期は,環境行政法の勉強を統一テーマに,ゼミ生で協同してして議論します。参加者は環境行政に関する個別テーマを担当報告し,上記の能力をどのような形で具体的に身につけられるのか,を学びます。合わせて,法律学の基礎理論,行政法の一般理論の復習も丁寧に行いたいと考えています。後期は,各自が自分のテーマを決めて,ゼミ論集の論文作りに挑戦します。
授業の進め方
参加者が研究調査報告を毎回分担し,それを素材にゼミ全員で議論します。
教科書及び参考図書
第一回目のゼミの時に指示します。
試験・成績評価等
ゼミにおける研究報告と,年度末に作成するゼミ論集の論文により評価します。
その他
ゼミガイダンスパンフレット
2001年度の活動内容
- 4月~7月 “まちづくり”をテーマに都市計画法,土地法,各自治体の条例などの具体的事例について報告・検討
- 9月~1月 書評(読書案内),ゼミ論文作成(ゼミ論文構想発表),ゼミ論文提出
2002年度の方針
- 前期:環境行政法をテーマに各自報告・検討
- 後期:各自テーマを決めてゼミ論文作成(構想報告)
ゼミ外活動
学期の初めと終わりに数回コンパを行いました。
ひとこと
行政法を通し「社会認識の目を養う」を目標に,明るく楽しく学び,ためになるゼミを目指します!
ゼミ活動の概要
前期
- 第1回(4/18) 自己紹介・イントロダクション
自己紹介のあと,大学での法学の勉強の仕方やこのゼミのコンセプトについて大橋先生からのお話がありました。 - 第2回(4/25) ゼミ報告テーマ決定・「よりよいゼミ報告のために」(原田)
行政法・環境法の概観を紹介したあとゼミ報告のテーマと報告者を決定しました。その後ゼミ報告の方法やヒントについて説明し,最後に法学部図書館を見学しました。 - 第3回(5/9) 福岡市情報公開条例の改正(大橋先生)
情報公開条例・情報公開法を素材に,行政法総論や救済法の骨格や行政改革での問題点の指摘など多岐に渡るお話がありました。一つの素材を取り上げて勉強してみることの重要性を認識するよい機会となりました。 - 第4回(5/16) 大気汚染の防止(環境メディア法①)(報告者→前田・コメント→大瀬)
大気汚染防止法の法的な仕組みと上乗せ・横だし条例の許容性をめぐる報告でした。3年生の報告レジュメのレベルの高さと,4年生の成長が感じられました。ゼミコンパは12名が参加しました。単独コンパとしてはかなりの人数になりました。 - 第5回(5/23) 騒音・振動の防止(環境メディア法②)(中泉・大瀬)
騒音規制法の法的しくみを読み解く報告でした。条文が若干やっかいなのでこの段階としては素材としては難しかったかもしれません。それにしても今年は3年生も4年生もハイレベルですね。 - 第6回(5/30) 福岡市情報公開条例の改正②(大橋先生・大瀬)
大橋先生の近刊予定の論文を素材に,福岡市情報公開条例の改正の背景にある考え方を検討しました。それにしても情報公開の問題は奥が深いですね。 - 第7回(6/6) 廃棄物処理行政(資源循環法①)(河内・古賀)
廃棄物処理法のしくみと近年の改正をめぐる議論でした。今回,司会が原田に交代し,先生は最後にコメントを述べるという形式に変更されました。司会が今回は全員に発言を求めたので,今期初の一日一発言(強制的?)達成となりました。 - 第8回(6/13) 循環型社会の形成(資源循環法②)(竹原・古賀)
容器包装リサイクル法のしくみやレジ袋税に関する議論が中心でした。容器包装リサイクル法の構造はかなり難しいので,これがすらすら理解できるようになれば,このゼミに入った目的は達成?されたといえるでしょう。 - 第9回(6/20) 自然生態系の保護(自然保護法①)(坂本・古賀)
他の授業を犠牲にして(?!)報告を準備したという坂本君の熱意の伝わる報告でした。環境行政訴訟の諸問題を考える上では行政救済論で習う事項が前提として必要になりますので,行政訴訟の授業も受けましょう。 - 第10回(6/27) 自然景観・緑地の保護(自然保護法②)(中尾・副田)
自然公園法・都市公園法・都市緑地保全法を素材に,緑地保護や公園に関する制度を概観する報告でした。レジュメは充実してきましたので,これからは報告の仕方や報告の構成のスキルアップを目指さなくてはいけませんね。 - 第11回(7/4) 開発と環境保護(自然保護法③)(高口・副田)
環境アセスメントに関する報告でした。環境アセスメントについては論ずべき内容が多いですが,今日の報告にあったような内容が基礎的事項になりますので,勉強しているとあとで役立つと思います。 - 第12回(7/11) 地球環境問題と国際環境法(環境法総論①)(住久・副田)
気候変動枠組条約と京都議定書をめぐる問題を扱いました。この分野は環境法の知識だけではなく国際法に関する知識も必要ですので,報告するのは大変だったと思います。 - サブゼミ(8/1) 判例評釈の方法(原田)
後期の判例評釈に向けて,判決文の読み方や判例評釈の方法などを説明しました。具体的素材として最判平成14年7月2日(下水道談合に関する住民訴訟)を利用しました。4年生3人と3年生3人が参加しました。
後期
- 第13回(10月17日) 判例評釈①情報公開と本人情報開示(古賀・坂本・前田)
個人情報保護条例がない状態で情報公開制度によって本人情報を開示することができるかどうかが争われた最高裁判決(最判平成13年12月18日民集55巻7号1603頁)を使っての報告でした。いろいろと議論すべき点は多いですが,報告初回としては十分な出来だったのではないでしょうか。後続報告のみなさんも頑張って下さいね。 - 第14回(10月24日) 判例評釈② 議会情報の公開(副田・中尾・竹原・高口)
議会が実施機関でない条例に基づいて,長の予算執行権限や文書管理権限をてこに議会情報の公開を図ることができるかが争われた事件でした。今回は細かい解釈に立ち入った議論が中心でした。 - 第15回(10月31日) 判例評釈③ 怠る事実の違法確認に関する住民訴訟(大瀬・河内・中泉・住久)
判例評釈最後なだけに細かい部分にも配慮した報告だったと思います。逆に概要説明がなかったので理解が難しかったかも知れませんが…。今回の判例評釈で判決文の読み方に習熟することができたでしょうか。 - 第16回(11月7日) ゼミ論文構想① 税収確保と新税(古賀),地方税(高口),道州制(中尾)
○地方財政と法定外税について(古賀)
プレゼンテーションの技術やレジュメの書き方についていろいろなアドバイスがありましたが,トップバッターとしての責任は十分に果たしたのではないかと思います。今後どのような方向に進むのか興味深いですね。
○改正地方税法―法定外税の可能性(高口)
発表の構成の仕方はかなり考えられていたと思います。細かい法解釈の部分については今後の検討課題ですね。地方税法そのものもいろいろ論ずべき問題がありそうです。
○地方制度改革―自立システムの創造への布石(中尾)
大橋ゼミでは近年とりあげられていない「道州制」をめぐる議論を扱います。道州制のとらえかたやそれに対するスタンスを形成するまでには時間が足りなかったのかなと思います。今後の展開が読めない分,先が楽しみでもありますね。 - 第17回(11月14日)ゼミ論文構想② 市町村合併(坂本),財政投融資(住久)
○ゼミ論文の書き方のポイント(原田)
スケジュール管理と論文の構成を考えることが大切です。野口悠紀雄『「超」文章法―伝えたいことをどう書くか―』(中央公論新社・2002年)も読んでみて下さい。
○市町村合併論に対する考察(坂本)
市町村合併の背景や賛成論に立つ場合に考えなければならない論点が多く出されました。次回の発表では賛成論からの議論展開がなされることになるのでしょうか。
○財政投融資制度の検討(住久)
郵貯のしくみのみならず昨今の改革議論の背景も理解できたでしょうか。問題の広がりが大きいという点ではこのテーマは扱うのが難しいですが,やってみるといろいろおもしろい発見ができるでしょう。 - 第18回(11月28日) ゼミ論文構想③ 家電リサイクル法(竹原),都市計画(前田)
○特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)の沿革(竹原)
法律のしくみの中でどこに注目してそれを掘り下げていけるかが今後の課題となりそうです。リサイクル法同士の比較の視点も大切でしょう。
○都市計画制度の課題とまちづくり(前田)
市町村が果たす都市計画の役割に注目するスタンスを大事にする場合には,具体的な市町村条例をとりあげて検討することや近時の改正で登場した準都市計画区域のしくみなどもフォローする必要がありそうです。 - 第19回(12月5日) ゼミ論文構想④ 規制緩和(中泉),行政訴訟(河内)
○規制改革時代の到来(中泉)
論点が多岐に渡り,いろいろな副次的効果に目配りしつつ検討する必要があるテーマですね。次回の発表まであまり時間がないですが,今回の宿題をひとつずつ片づける感じで準備すると,論文完成までの道筋が見えてくるでしょう。
○行政事件訴訟法の改正について(河内)
関係論文が多く出ていてかなり旬な話題ですが,逆に,自分の想像力をふくらませておもしろい制度提案をしていくことが論文作成上のポイントになりそうですね。 - 第20回(12月12日) ゼミ論文構想⑤ 再販制度(副田),電子自治体(大瀬)
○行政の電子化(大瀬)
総論部分だけみるとあまり議論の余地がないように見えますが,具体的なレベルにおりるといろいろ考えなければならない問題が多いですね。どれか(あるいは複数)にしぼって深めてみるとおもしろいものになるでしょう。
○出版業界の業界研究(副田)
再販制度はなじみ深いテーマだったため議論はかなり盛り上がりましたね。独占禁止法の全体像を示すことと再販制度の正当化の可能性を多くの反論をふまえつつさぐってみることが次の作業になりそうです。 - 第21回(12月19日)ゼミ論文経過報告①
○地方財政について(古賀)
財政の問題はあちこちに波及しますので論点をおさえつつ論文をまとめるのは難しそうです。しかしあと1ヶ月ありますから大丈夫でしょう。
○改正地方税法(高口)
二回の報告で堅実に構想を発表している印象ですね。今日指摘された問題を深めればよい論文になるでしょう。
○地方制度改革(中尾)
道州制まで視野に入れるとかなり議論の自由度は高まりますが,その分考慮事項が多くなり議論が拡散する可能性も出てきます。どこが最も主張したい部分かを常に意識しつつ書くとよいでしょう。 - 第22回(1月9日)ゼミ論文経過報告②
○行政事件訴訟法改正について(河内)
具体的な提案を出してもらったのでその後の質疑や議論がかなりしやすくなりました。民事訴訟の知識も必要な分野ですので民事訴訟法を聞いていないゼミ生には若干きつかったかもしれません。
○規制緩和の検討(中泉)
構造改革特区法は行政法学の立場から見て興味深い立法技術を豊富に持っていますので一度条文を真剣に眺めてみるとよいと思います。いくつかの論点に絞って深めるとよいでしょう。 - 第23回(1月16日) ゼミ論文経過③
○家電リサイクル法の問題点(竹原)
あるべき家電リサイクルのスキームを自分で構想してみることが論文完成までの大きなポイントになりそうです。すでに立法されているリサイクル諸法をヒントにしつつ独創的なアイデアが出てくることを期待します。
○自治体の取り組みから見る都市計画(前田)
この時期としてはかなりの完成度になっていると思いますが,広がりと深さの面でまだ改善できる余地があると思います。論文提出まで努力を続けてよい論文をつくってください。 - 第24回(1月23日) ゼミ論文経過④
○市町村合併に対する考察(坂本)
合併推進論と否定論についての整理はよく書けていると思いますが,それぞれの論点がかみ合う形で整理し直すことが必要でしょう。事例紹介を素材に自分がもっとも言いたい部分に集中して書くとよいでしょう。
○財政投融資改革と政策展開(住久)
財政投融資を法学的に分析することは容易ではありませんが,今の現実のしくみがどうなっていてどこが問題なのか,どのような法的しくみを考えればよいのかを中核にすえると筆が進むと思います。 - 第25回(1月30日) ゼミ論文経過⑤
○行政の電子化(大瀬)
多くある素材をどのように料理するか,どこに新奇性を付加するかがポイントになりそうです。
○出版業界の業界研究(副田)
再販制度の議論は考えれば考えるほどわからなくなりますね。ゼミ論提出までにすっきりした論理展開ができあがっているといいですね。 - 第26回(2月5日) ゼミ論文報告会
はじめての試みとして,ゼミ論文提出後に論文のストーリーとよかった点・悪かった点を報告してもらう会を設定しました。一般公開で行いましたが,来年度新ゼミ生を中心に10名程度の参加を頂きました。ありがとうございました。
ゼミ参加者
- 幹事:古賀響子(4年生),坂本純(3年生)
- 4年生:大瀬裕子,古賀響子,副田和彦
- 3年生:河内絵里子,高口健司,坂本純,住久達夫,竹原敬磨,中泉允博,中尾健太,前田昌宏