英語では
I can speak English well.
のように助動詞の直後に原形不定詞がくるのが原則である。ドイツ語の場合も原形不定詞がくるのは共通だが,場所は文末である。
Ich kann gut Deutsch sprechen.
その他の例を見てみよう。
Er wird es wohl wissen. (おそらく彼はそのことを知っているだろう。)知覚動詞 hören, sehenなどは不定詞を従えて知覚動詞構文をつくる。 不定詞の意味上の主語は4格になる。英語でも
I saw him walk in the ground.(私は彼が庭で歩いているのをみた。)
という表現をする。ドイツ語では
Sie sieht ihn kommen. (彼女は彼がやって来るのを見る。)
などと表現する。このような表現はラテン語を起源としている。なお完了形を使うときは,知覚動詞は過去分詞にせず不定詞で代用することが多い。これを代用不定詞という。
Sie hat ihn kommen sehen (gesehen). (彼女は彼がやって来るのを見た。)essen gehen(外食する)など,熟語として使うことがある。英語でもmake believe(=pretend,〜のふりをする)のような類似例は存在するものの,この使い方はドイツ語ほどポピュラーなものではない。
この使い方は英語にはおそらくない。
Mein Hobby ist Auto fahren.(私の趣味はドライブすることです。)
英語であればto不定詞が名詞的用法として使われるところ,ドイツ語では単なる不定詞句が使えるのである。同様の例として
Irren ist menschlich.(過ちは人の常)がある。
主語の状態をあらわす。
Er hat ein Wein im Keller liegen. (彼はワインを地下に貯蔵している。)zuは動詞の不定形の前につける。しかし分離動詞の場合は
aufstehen(起きる)→aufzustehen
のように前綴りと動詞の間にzuをはさむ。ちょうど過去分詞のgeと同じである。
英語と異なり助動詞にもzu不定詞がつけられる。またzu不定詞を含む部分ではzu+動詞の不定形はその最後にくる。またzu不定詞を含む部分はコンマで区切る場合がある(旧正書法では必ずコンマで区切っていた)。
ドイツ語のzu不定詞の基本的役割は「名詞句」としての役割である。先ほど紹介した名詞句として原形不定詞をつかう方法はこれを簡略化したものといえる。
Ich versuche Deutsch zu studieren.(私はドイツ語を学ぼうとしている。)名詞(Lust:意欲・Zeit:時間など)を修飾する用法がある。
Haben Sie Zeit nach Nakasu zu gehen? (中洲に行く気はありますか?)※次の例は形容詞的用法というよりは同格(...という)というべき用法である。
Wie sind Sie auf die Idee gekommen nach Deutsch zu fahren? (どうしてドイツに行こうと思いついたのですか。)英語のin order toにあたる。「〜するために」とか「その結果〜した」という意味を表す。
Viele Leute kommen nach Kyoto um dort zu studieren.(多くの人が研究するために京都へ行きます)
Ich bin hier um dir zu helfen.(私は君を助けるためにここに来た。)
Er zog ins Feld um nach 3 Monaten zu fallen. (彼は戦場に行き,3ヶ月後に死んだ。)
「あまりに…なので…できない」(=too...to〜)という意味になる。
Das ist zu schön um wahr zu sein. (それはあまりにすばらしいので、本当とは思えない。)「…することなしに」(=without〜)という意味になる。英語では動名詞だがドイツ語ではzu不定詞である。
Er ging davon ohne zu grüssen. (彼はあいさつをせずに立ち去った。)「…する代わりに」(=instead of〜)という意味になる。
Sie rief mich an statt mir zu schreiben. (彼女は手紙を書く代わりに電話をかけてきた。)英語ではhave to=mustのように助動詞と似た使い方をする「動詞+to不定詞」がある。ドイツ語でもこのようなグループがあり,準助動詞と呼ばれている。
「…されうる(可能),…されねばならない(義務)」という意味になる。英語にも<be+to不定詞>が日本語古語の「べし」のようにたくさんの意味を表す使用例がある。
Diese Aufgabe ist nicht zu lösen. (この問題は解くことができない。)※sein + zu不定詞は法律ドイツ語ではほとんどの場合,義務(müssen)を表す。非常によく出る表現である。
Die Entschädigung ist unter gerechter Abwägung der Interessen der Allgemenheit und der Beteiligten zu bestimmen.(補償は,公共の利益と関係者の利益を適切に衡量して定めなければならない[ドイツ基本法14条3項])「…しなければならない」(=have to)の意味を表す。
Ich habe zu fahren.(私は行かなければならない。)
Er pflegt abends ein Glas Wein zu trinken. (彼は晩に一杯のワインをたしなむ習慣である。)
「〜するのが常である」「いつも〜する」という意味を持つ準助動詞である。
英語の
It is very difficult to read this book.(仮主語)
にあたるものである。
Es ist seine Gewohnheit früh aufzustehen.(早起きすることが彼の習慣です。)
もちろん冒頭の位置に置いてもよい。
Viel zu rauchen ist ungesund. (Es ist ungesund viel zu rauchen.)(たくさんたばこを吸うのは健康によくない。)※esが前置詞と結合したda+前置詞が後続の不定詞を受ける用法もあり,法学ドイツ語ではよく見かける。
Ich freue mich darauf Tennis zu spielen.最終更新日: 2005年4月1日
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