ドイツ語の発音は簡単である。なぜかんたんかというと,次の3つの理由があるからである。
オの口をもうすこしとがらせて,エと言ってみよう。オとエの中間のような音が出る。これがオーウムラオトの音である。
例 schön (美しい) hören (聞く) können (できる)
ウの口をもう少しとがらせて,イと言ってみよう。類似の母音は中国語にもある。
例 Übung (練習) küssen (キスする) fünf (5)
ドイツ語の発音を特徴づけている音がchである。英語ではschool「ク」やchannel「チ」などの音だが,ドイツ語は少し違う。のどの奥から息を吐き出して「ハ」「ヒ」という音になる。
<「ハ」の場合>a,o,u,auの直後にchがあるときはハの音[x]になる。
例 acht (8) nacht (夜) Buch (本)
<「ヒ」の場合>前記以外の母音の直後にあるchはヒの音[ç]になる。また−igもこの発音になる。
例 ich (私は) mich (私を) dich(あなたを) König(王様)
英語だったらどちらかを黙字にして発音しないで済ませそうだが,ドイツ語では両方とも発音する。「プフ」と同時に発音する。
例 Pfund (ポンド)
rの発音は実際のところそう気にしなくてもいい。日本語的なラリルレロでも通じるし,巻き舌音でも大丈夫である。しかし標準発音はのどひごをふるわせるものなので,このやり方を覚えておいて損はない。ポイントは
の3つである。chの発音[x]によくにた状態で出すことができる。
例 rot(赤) Frage(質問) studieren(勉強する)
ここでドイツ語特有の文字について説明する。
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名前 アーウムラオト
発音 「エー」(日本語のエとほとんど同じ) 例 erkämpfen(戦いとる) |
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名前 オーウムラオト
発音 「オ」の口で「エ」 例 öffnen(開ける) König(王) |
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名前 ウーウムラオト
発音 「ウ」の口で「イ」 例 müde(疲れて) München(ミュンヘン) |
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名前 エスツェット(SとZの融合形)
発音 「ス」(英語のsと同じ) 例 heißen(〜と申します) weiß(白い) ※ ß はssで置き換えられる。(スイスではssで表記する場合がある) |
ここではドイツ語の綴り字と発音の関係について整理してみよう。
<母音の長さの法則>
母音が長くなる場合 |
母音が短くなる場合 |
同じ母音を重ねている場合 例 Tee(お茶) 「母音字+h」の場合 例 Uhr(時間) |
その母音の直後の子音が重なっている場合 例 wissen(知っている) |
<ペアになると読み方が変わる3つのパターン>
ieは「イー」 例 viel(多くの)
eiは「アイ」 例 mein(私の)
eu,äuは「オイ」 例 neun(9) träumen(夢見る)
<rの発音>
のどひごrについてはすでに紹介したが,綴り字rがすべてのどひご音になる訳ではない。語末・音節末で長母音の後ろにあるrは「ア」という発音になる(よかった...)。これをrの母音化という(英語でもイギリス英語では同じ現象が起きる)。たとえば
Guten Morgen!(おはよう!)
のMorgenの発音は,一般に「モルゲン」と考えられているものの,実際に聞き取ってみると「モアゲン」となっている。
<b,d,gの無声音化>
語末・音節末で後ろに母音のないb,d,gは無声音[p][t][k]と発音される。
例 gelb(黄色の) Deutschland(ドイツ) Tag(日)
<s,ss,ßの発音>
sは無声音の場合と有声音[z]の場合とがある。母音の前のsは濁る。これは英語のsと大きく違う。一方ssとßはどんなときでも濁らず[s]の発音である。ドイツ語正書法が改正されるのにともなって,これまでßとつづられてきた部分がssにかわるため,ßの活躍の場は狭まりつつある。
例 Sohn(息子) Klasse(クラス) Fuß(足)
<シュッ!シュッ!シュツ!はschと語頭のsp,st>
英語でshの綴りは,ドイツ語ではschである。ただし語頭のspとstはシュプ,シュトゥ,と発音する。
例 schön(美しい) Straße(通り) spielen(遊ぶ)
ドイツ語の綴り方の規則である正書法の改革が1996年7月1日にドイツ語を公用語とするドイツ,オーストリア,スイス,リヒテンシュタインと,ドイツ系の人々の住むベルギー,イタリア,ルーマニア,ハンガリーの8ヶ国で合意され,1998年から移行期間が始まっている。その主要な内容は次の通りである。
1. 短い母音のあとのßはすべてssで綴る。
例 Ausschuß(委員会) − Ausschuss
ただし長い母音の後のßは今まで通り用いられる。(例 Fuß)
2. 外来語で,これまでphで綴っていたものをfで綴るようにすることができる(ドイツ語的表記への移行)。
例 Delphin(いるか) − Delfin
3. 動詞+動詞の分離動詞は分けて綴る。
例 kennenlernen(知り合う) − kennen lernen
4. コンマを入れるかどうかは書き手の判断に大幅に委ねられる。
例 Heute gehe ich in die Uni, um Deutsch zu studieren.→コンマは不要に
全体として,より規則性のある綴り方に変更されている。2005年8月には新正書法が完全実施される予定になっている。HDGは基本的に新正書法に準拠している。
最終更新日: 2005年4月1日
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