ミヒャエルくんはドイツから日本へやってきたばかりの留学生でした。宏和くんと智紀くんはミヒャエルくんの家を訪れます。
Michael: Hallo, Hirokazu und Tomonori! Herzlich willkommen zu meinem Haus! Hirokazu: Danke! Wie geht es Ihnen? Michael: Prima! Komm doch herein! Hirokazu&Tomonori: Danke! |
ミヒャエル:やあ,宏和くん,智紀くん。私の家にようこそ。 宏和:ありがとう。ご機嫌いかがですか。 ミヒャエル:すばらしいです。部屋に入って。 宏和・智紀:ありがとう |
単語・表現 | 品詞 | 意味 |
---|---|---|
herzlich | 形 | 心からの(heartly) |
willkommen | 動 | 歓迎する(welcome) |
zu | 前 | 〜へ(to)[さまざまな語と結びつき多義的に使われる] |
das Haus | 名 | 家(house) |
prima | 形 | すてきな(イタリア語から[無変化]) |
doch | 副 | まったく〜だ(強調) |
herein | 副 | 中へ |
「前置詞を制するものは英語を制する」という受験諺(?)がありましたが,英語の仲間のドイツ語でもこれは言えるのです。ただ,ドイツ語の方が英語より面倒です。その原因は「前置詞の格支配」です。
英語では前置詞の次には「名詞の目的格」がくるという約束しかなかった(of heはだめ。of himが正解)のですが,ドイツ語では英語の「目的格」にあたるものが2つあり,さらに英語の所有格にあたるものも前置詞の後に来る場合があります。そこで前置詞の話の前に「名詞の格」についてかんたんに確認します。
日本語の場合,「私」という名詞の文での意味は,そのあとにくる「が」「の」などの助詞で決まります。「私」といっただけでは意味は決まらず,次の助詞を聞く必要があるのです。ドイツ語はこれと逆に,名詞の前につく「冠詞」の変化形で名詞の文の上での意味を決めることは前にふれました。この変化の形を「格」と呼びます。ドイツ語には4つの格があります。
「支配」というとなんだか勇ましいですが,結局のところ「前置詞の後にどの格がくるか」ということを意味しているだけです。さきほどふれたように,ドイツ語では「目的格」だけが前置詞の目的語になるわけではないのです。前置詞はその後に来る格,つまり格支配によって分類されます。
上のテキストでは
Herzlich willkommen zu meinem Haus!
となっていて3格支配のzuのあとに中性名詞3格のHausがきています。
大変そうに見えるかもしれませんが,意外に楽に覚えられます。なぜなら
つまり4格支配の前置詞を覚えて,2格支配の前置詞をなんとなく覚えていれば,あとは3格支配だということになるのです。ここで注意すべきなのは3・4格を両方とる前置詞があることです
「3・4格支配の前置詞」は後ろに3格がくるか,4格がくるかで意味が変わってしまいます。3格は場所(〜に/wo)・4格は方向(〜へ/wohin)を表します。
たとえば女性名詞のdie Stadt(町/1格 die Stadt 2格 der Stadt 3格 der Stadt 4格 die Stadt)では
Ich wohne in der Stadt. (私はその町に住んでいます。)
Ich gehe in die Stadt. (私はその町へ行きます。)
のようになります。いまここですべての前置詞を覚える必要はありません。いろいろなドイツ語にふれながらゆっくり覚える,いや慣れることが大切です。そのとき「文脈」のなかで覚えることを忘れないで下さい。もっと詳しいことを知りたい場合は,文法解説「前置詞」を参照して下さい。
duに対して | Komm! |
ihrに対して | Kommt! |
Sieに対して | Kommen Sie! |
英語の命令文は原形を文頭におくだけでしたが,ドイツ語では3種類あります。というのは,英語の命令文の相手はyouただひとつなのに対し,ドイツ語では2人称が3通りあり,そのそれぞれに対して命令の形が成立するので,命令文が3種類できるのです。
さらに勉強したい人は次の項目をチェックしてください。
Michael: Das ist mein Vetter Petra. Er ist 4 Jahre alt. Und jetzt erkläre ich Namen des Essens. Michael: Was ist das? Petra: Das ist ein Apfel. Es gibt drei Äpfel. Michael: Wie heißt das? Petra: Das heißt die Milch. Michael: Was ist das? Petra: Das ist ein Bier. Aber wir müssen ein Bier nicht trinken. |
ミヒャエル:この子は僕のいとこのペトラです。彼は4才です。今私は食べ物の名前を教えていたところです。 ミヒャエル:これはなに。 ペトラ:これはりんご。3つのりんごがある。 ミヒャエル:これはなんというの。 ペトラ:これはミルク。 ミヒャエル:これはなに。 ペトラ:これはビール。でも僕たちはビールを飲んではいけない。 |
単語・表現 | 品詞 | 意味 |
---|---|---|
der Vetter | 名 | いとこ(男性形)(cousin) |
jetzt | 副 | 今(now) |
erklären | 動 | 説明する(explain) |
das Essen | 名 | 食べること・食べ物(food) |
der Apfel | 名 | りんご(apple) |
gibt | 名 | gebenの3人称単数現在形(give) |
drei | 形 | 3・3つの(three) |
die Milch | 名 | ミルク(milk) |
das Bier | 名 | ビール(beer) |
müssen | 助動 | 〜しなければならない(must) |
nicht | 副 | 〜ではない(not) |
trinken | 動 | 読むこと・読書[動詞の名詞化](reading) |
ドイツ語の名詞には3つの大きな格変化パターンがあって,その系統の名前を「男性名詞」「女性名詞」「中性名詞」というということは以前紹介しました。しかしこの3つの大きなパターンに収斂されず,のこってしまった変化パターンがあります。これを男性弱変化名詞といいます。上記のテキストで出てきているder Nameがその一例です。そのために「Namen」というこれまでの変化形にはなかった形が出てきています。現時点ではそういう名詞もあるということだけ知っていればいいのですが,几帳面なので気になるという人は文法解説「男性弱変化名詞」を参照して下さい。
名詞の変化は格変化に加えて「複数形」があります。英語では複数形は基本的に−sをつけるだけで,ときどき不規則変化(child−childrenなど)がありましたが,ドイツ語では全く逆の状況です。つまりドイツ語では不規則変化が普通で,−sをつけるだけなのは少数です。とはいえ変化のパターンは5つに限定されています。これについては現段階で知っておく必要はないと思うので(とりあえず-en,-nがついたら複数形かなと考える程度でいいと思います),ここでは細かいことは説明しません。詳しくは文法解説「名詞の複数形」を参照して下さい。
西欧の言語は基本的に主語を要求します。これが日本語との大きな違いで,英作文をするときに悩まされるのは「主語の補充」であることは周知の通りです。しかし英語では「〜に…がある」という主語のない文をどう処理するかという問題がでてきました。これがThereをつかう文なのですが(もっともこの説明は言語学的にはかなり不正確です),ドイツ語でも同じ問題があります。英語ではbe動詞を使いますが,ドイツ語ではgeben,英語でいうとgiveを使って「Es gibt+4格」という形をとります。4格がくることに注意して下さい。
Es gibt ein Buch. (1冊の本がある。)
Wo gibt es hier eine Toilette? (トイレはどこにありますか。)
ここで勘の良い方は気づいたと思いますが,gebenの3人称単数がgibtとなっていました。本来ならばgebtとなるはずです。これは動詞の強変化というもので,現在人称変化のパターンのひとつです。これまで学んできたのは「弱変化」とよばれ,語尾のみが変化していましたが,「強変化」は語尾に加えて語幹の母音(幹母音)まで変化します。
ここでは一番上の<e−i−i−e−e−e型>を覚えましょう。
代名詞 | 代名詞の意味 | geben | helfen |
---|---|---|---|
ich | 私 | gebe | helfe |
du | 君 | gibst | hilfst |
er/sie/es | 彼・彼女・それ | gibt | hilft |
wir | 私たち | geben | helfen |
ihr | 君たち | gebt | helft |
sie/Sie | 彼ら・彼女ら・それら/あなた・あなた方 | geben | helfen |
一番最後の文章ではこれまで見たことのない形が使われています。動詞が文末にきていますよね。まさか日本語でもあるまいしと思ったかもしれませんが,ドイツ語では「枠構造」とよばれる,動詞が最後にくる形があるのです。
[ドイツ語]Wir müssen ein Bier nicht trinken.
[英語]We must not drink beer.
ここではmüssenという助動詞が使われています。これは英語のmustにあたります。ドイツ語と英語の構造の違いに注目して下さい。どちらも助動詞の後に動詞の原形(不定形)がきているのは同じですが,次の2点がちがいます。
ドイツ語ではこの「枠構造」というのがよく登場します。中級になると枠構造だらけなので今のうちから慣れておくことが必要です。ドイツ語の枠構造については文法解説「枠構造」を参照して下さい。
つづいて,助動詞の人称変化です。基本的には今まで勉強した動詞の人称変化と似ていますが,違う点が2つあります。
ここでは今でてきたmüssen(〜しなければならない)と次の課ででるkönnen(〜できる)の変化を覚えましょう。
代名詞 | 代名詞の意味 | müssen | können |
---|---|---|---|
ich | 私 | muss | kann |
du | 君 | musst | kannst |
er/sie/es | 彼・彼女・それ | muss | kann |
wir | 私たち | müssen | können |
ihr | 君たち | müsst | könnt |
sie/Sie | 彼ら・彼女ら・それら/あなた・あなた方 | müssen | können |
このほかの助動詞の変化についてはでてきた時点でふれますが,まとめて見たい人は,文法解説「助動詞」を参照して下さい。
さらに勉強したい人は次の項目をチェックしてください。
智紀くんはいっしょに公園にいこうと誘います。
Tomonori: Gehen wir in den Park! Michael: Gute Idee! Hirokazu: Wo wohnst du, Petra? Petra: Ich wohne in Fukuoka. Michael: Er wohnt nicht in Kurosaki. Er bleibt hier. |
智紀:公園へいこうよ。 ミヒャエル:良い考えだ。 宏和:ペトラ,君はどこに住んでいるの。 ペトラ:福岡に住んでいるの。 ミヒャエル:彼は黒崎に住んでいるのではないんだ。彼はここに泊まっているんだ。 |
単語・表現 | 品詞 | 意味 |
---|---|---|
der Park | 名 | 公園(park) |
die Idee | 名 | 考え・アイデア(idea) |
bleibt | 動 | とどまる・滞在する[bleibenの3人称単数現在形](stay) |
英語のLet'sにあたる表現がドイツ語にもあります。それが「不定形+wir〜!」です。ここでは
Gehen wir in den Park! (公園に行こう)
で使われています。in den Parkはin+4格なので方向を表すことは覚えていますか?忘れたという人はLektion3-1にもどりましょう。
これまでも幾度かでてきていますが,ここでドイツ語の否定文の作り方を確認します。ドイツ語の否定文は2つの形態があります。
この使い分けについて詳しくは,文法解説「keinとnicht」を参照して下さい。
さらに勉強したい人は次の項目をチェックしてください。
ペトラくんはVetterの意味をミヒャエルくんに聞いています。
Petra: Was bedeutet ein Vetter? Michael: Ein Kind eines Bruders einer Mutter. Hirokazu: Auf Japanisch 'Itoko'. Petra: Itoko? Hirokazu: Ja. Du bist der Itoko von Michael. Michael: Richtig. |
ペトラ:Vetterってどういう意味。 ミヒャエル:お母さんの兄弟の子供。 宏和:日本語では「いとこ」。 ペトラ:イトコ? 宏和:そう。君はミヒャエルのイトコだ。 ミヒャエル:そうだよ。 |
単語・表現 | 品詞 | 意味 |
---|---|---|
bedeuten | 動 | 意味する(mean) |
der Bruder | 名 | 兄・弟(brother) |
die Mutter | 名 | 母(mother)[さまざまな語と結びつき多義的に使われる] |
Japanisch | 名 | 日本語(Japanese) |
richtig | 形 | 正しい(right) |
2格は現在,「所有冠詞」や「前置詞von(英語のofにあたる)」に居場所を奪われて次第に力を失っていますが,ここでは2格を所有の意味で使う場合の使い方をみてみます。本文では「いとこ(ein Vetter)」のことを,
ein Kind eines Bruders einer Mutter
と説明しています。「母の兄弟の子供」という訳になります。ドイツ語では後置修飾なのですね。詳しくは文法解説「2格の用法」を参照して下さい。
さらに勉強したい人は次の項目をチェックしてください。
最終更新日: 2005年4月1日
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