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前置詞

前置詞の格支配

英語の前置詞はその目的語として目的格をとる。これに対してドイツ語の場合は2格をとる場合,3格をとる場合,4格をとる場合がある。前置詞が目的語としてある格を要求することを前置詞の格支配という。また,3格をとるときと4格をとるときで意味がかわる前置詞もある。前置詞の格支配とならんで覚えなければならないのは動詞と前置詞のつながりである。これは英語を勉強するときと同じである。

2格支配の前置詞

2格支配の前置詞は,数が少なく頻度も低い。もともと名詞であったものが前置詞になった場合には2格支配になることが多い(本来は名詞+2格のつながりであった関係が維持されるため)。

trotz(〜にもかかわらず)

Trotz des Regens mache ich einen Spaziergang.(雨にもかかわらず私は散歩をしています。)

während(〜の間)

Während der Vorlesung schläft er nicht.(講義中,彼は一睡もしません。)

wegen(〜のために)

Wegen der Erkältung kommt Michel heute nicht.(風邪のため,ミヒェルは今日は来ません。)

(an)statt(〜の代わりに)

Wir verwenden ein Trinkglas an(statt) der Blumenvase.(私たちは花瓶の代わりにコップを使います。)

außerhalb(〜の外側で)

Ich wohne außerhalb der Stadt.(私は町の郊外に住んでいます。)

3・4格支配の前置詞

場所を表す前置詞の中には,3格・4格のどちらもとれる前置詞がある。どちらの格をとるかによって意味が変化する。3格は場所・4格は方向というのが区別の基本になる。このグループに属するのは

vor(〜の前),hinter(〜のうしろ),über(〜の上),unter(〜の下),neben(〜の横),zwischen(〜の間)

などである。

Er geht in die Stadt.(4格)彼は町へ行った。(動作の行われる場所・位置「〜で」を表すとき→3格支配
Er isst in der Mensa.(3格)彼は学食で食べた。(人や物が移動していく方向「〜へ」を表すとき→4格支配

in

+3格(〜の中で) Ich arbeite in dem Büro.(私は事務所(の中)で働いている。)
+4格(〜の中へ) Ich gehe in das Büro. (私は事務所(の中)へ入っていく。)

an

+3格(〜の面・きわに) Der Kalender hängt an der Wand. (カレンダーが壁に掛かっている。)
+4格(〜の面・きわへ) Die Mutter hängt den Kalender an die Wand. (母がカレンダーを壁に掛ける。)

auf

+3格(〜の上で) Der Mann sitzt auf dem Fels. (男が岩の上に座っている。)
+4格(〜の上へ) Der Mann steigt auf den Fels. (男が岩の上へ登る。)

über

+3格(〜の上方で) Er wohnt über uns. (彼は私たちの上の階に住んでいる。)
+4格(〜の上方へ) Der Vogel flog über das Tal. (鳥が谷の上の方へ飛んでいった。)(flog:fliegen「飛ぶ」の過去形)

hinter

+3格(〜の後ろに) Das Kind ist hinter dem Schrank. (子どもは洋服たんすの後ろにいます。)
+4格(〜の後ろへ) Das Kind flieht hinter den Schrank. (子どもは洋服たんすの後ろへ逃げる。)

neben

+3格(〜の横に) Neben dem Bett ist einer Tisch. (ベットの横に机がある。)
+4格(〜の横へ) Neben das Bett stellt er einen Tisch. (彼はベットの横へ机を置く。)

vor

+3格(〜の前で) Der Vertreter fotografiert vor dem Denkmal. (代表者が記念碑の前で写真を撮る。)
+4格(〜の前へ) Der Vertreter begiebt sich vor das Denkmal. (代表者が記念碑の前に進む。)(<vorankommen:進む)

zwischen

+3格(の間に) Das Kind sitzt zwischen dem Vater und der Mutter. (子供が父親と母親の間に座っている。)
+4格(の間へ) Das Kind geht zwischen dem Vater und der Mutter. (子どもが父親と母親の間へ歩いていく。)

3格支配の前置詞

3格支配の前置詞が最もポピュラーである。困ったときは「3格」にしておくと正解の確率が高い。

aus(〜の中から)

Er kommt aus dem Hörsaal. (彼は講義室(の中)から出てくる。)
Ich komme aus Osaka. (私は大阪出身です。)

bei(〜のもとで,〜の際に)

Ich wohne bei meinen Eltern. (私は親元で(両親のもとで)暮らしている。)

mit(〜と共に)

Gestern habe ich Tennis mit der Mutter gespielt. (私は昨日母とテニスをしました。)
Ich gehe mit ihr. (私は彼女と一緒に行く。)

nach(〜へ,〜のあとで,〜によると)

Nach dem Essen singe ich. (食後私は歌を歌う。)
nachには典拠(〜によると)の意味もあり,法学ドイツ語ではよく登場する。この用法ではnachが後置されることがある。

zu(〜へ,〜の所へ)

Kommen Sie doch zu uns! (ぜひ私たちの所へいらして下さいね!)

nachとzuはどちらも「〜へ」という「方向」を表す。通常nachの後には地名,zuの後には建物あるいは人が入る。ただし次に挙げる場合は決まり文句なので,熟語としてそのまま覚えよう。

Ich gehe nach Hause.(私は帰宅します。)
Ich bin zu Hause.(私は在宅します。)

seit(〜以来)

Seit dem Krieg habe ich ihn nicht mehr gesehen. (戦争以来,私は彼に会っていません。)
Seit 1996 wohnt er in Fukuoka. (1996年から彼は福岡に住んでいる。)

von(〜から)

Wir haben gerade von Ihnen gesprochen. (あなたのことを話していた。)
vonは多義的な前置詞であり,その意味を特定するためにvonと副詞で名詞を挟む場合がある。(例:von jetzt an (今から))

4格支配の前置詞

4格支配はそれほど多くない。4格支配だけ覚えて,あとは3格と考えると気が楽かもしれない。

durch(〜を通って)

Er ist durch den Wald gekommen. (彼は森を通ってやって来た。)
durchはこのほかに「〜によって」(原因)を表すことがあり,法学ドイツ語ではこちらの方をよく目にする。

für(〜のために)

Ich arbeite für das Leben. (私は生活のために働く。)

ohne(〜なしで)

Kann ich die Dokumente ohne eine Unterschrift abgeben? (この書類を署名なしで提出してもよろしいですか?)

gegen(〜に反対して)

Mika ist gegen den Sozialismus. (美香は社会主義に反対している。)

um(〜のまわりに)

Die Blumen blühen um den Teich. (池のまわりに花が咲いている。)

bis(〜まで)

Bitte korrigieren Sie die Dokumente bis zum Nachmittag. (この書類を午後までに訂正してください。)

前置詞の融合形

前置詞には、定冠詞と結合して1語になるものがある。これを前置詞と定冠詞の融合形といいう。

融合形は定冠詞が「その〜」という限定・指示的な意味を持たないときに使う。

Ich gehe zu dem Lehrer. (私はその先生のところへ行く。)
Ich gehe zum Lehler. (私は先生のところへ行きます。)

ここでzum Lehlerは,zu einem Lehler(不特定の先生のところへ)という意味を持つ。

動詞と形容詞の前置詞支配

動詞・形容詞がある特定の前置詞と結びつき,ひとまとまりの意味をなすことを動詞・形容詞の前置詞支配という。動詞や形容詞によって後にくる前置詞が決まってくる(これは英語と同じである。)前置詞で意味が分からなくなったらそのもの単独で辞書を引くのではなく,近くにある動詞あるいは形容詞を辞書で調べ,用例の中に前置詞とセットになっているものがないか探す方がよい。

@動詞の前置詞支配

fragen+人(4格)nach+物(3格) 人に物を尋ねる

Die Frau fragt mich nach dem Weg zum Bahnhof. (その女性は私に駅への道を尋ねる。)

warten auf+人・物(4格) 人(物)を待つ

Er wartet auf den Mann. (彼はその男を待っている。)

danken+人(3格)für+事(4格) 事について人に感謝する

Ich danke der Freundin für das Geschenk. (私は友人に贈り物について感謝する。)

A形容詞の前置詞支配

sein mit+物(3格)zufrieden 物に満足している

Ich bin mit dem Haus zufrieden. (私はその家に満足している。)

sein auf+物・人(4格)stolz 物(人)を自慢する,誇りにする

Masao ist auf den Bruder stolz. (将男は兄を誇りにしている。)

sein zu+人(3格)freundlich 人に対して親切である

Yuki ist zu den Kindern freundlich. (由紀は子供たちに対して親切だ。)

この他3格+gerechtで「〜に適合した,ふさわしい」という用法もよく用いられる。


最終更新日: 2005年4月1日
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