格変化の仕方によって名詞を分類したのが「名詞の性」である。ラテン語ではもっと多くの変化パターンがあったが,ドイツ語では3つにまとめられた。それが「男性」「女性」「中性」である。従って自然界の性との関連はあまりないと思った方が安全である。
これらの格変化については「冠詞と冠詞類[名詞の格変化T]」を参照してほしい。
格変化の仕方の例外として「男性弱変化名詞」がある(左2つ)。もうひとつは不規則変化と言ってしまってもいいグループである。(右2つ)
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格 | 人間 | 紳士 | 名前 | 心 |
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単
数 |
1格 | der Mensch | der Herr | der Name | das Herz |
2格 | des Menschen | des Herrn | des Namens | des Herzens | |
3格 | dem Menschen | dem Herrn | dem Namen | dem Herzen | |
4格 | den Menschen | den Herrn | den Namen | das Herz | |
複
数 |
1格 | die Menschen | die Herren | die Namen | die Herzen |
2格 | der Menschen | der Herren | der Namen | der Herzen | |
3格 | den Menschen | den Herren | den Namen | den Herzen | |
4格 | die Menschen | die Herren | die Namen | die Herzen |
日本語の文法では「活用するもの=用言」「活用しないもの=体言」となり,体言といえば名詞であるから,「名詞は無変化」が常識である。しかしドイツ語では名詞も変化する。その変化とは「格変化」である。そして格を示すのが冠詞である。
英語で言うof〜にあたる表現であり,myやyour(所有格)にあたる表現は所有冠詞を用いる。2格は基本的に名詞の後ろにおく(例外的に英語のKen's bookのように名詞の前に置く用法がある。これをザクセン2格という。このHDGのHaradasもザクセン2格である)。
der Freund meiner Schwester(私の姉の友達)比較的かたい表現として用いられる。
beim Anbieten eines Kaffeesこれはeinen Kaffee anbietenにbei(〜の際に)をつけくわえ,「コーヒーをすすめる際には」という意味になる。
時や場所の副詞句として使われる名詞の2格を副詞的2格という。これは古い時代のドイツ語でよく使われていたため,現在では数が少なく,「熟語」として覚えたほうがいいかもしれない。
Eines Tages werde ich nach Canada gehen. (いつか私はカナダに行きたい。)くわしくは文法解説「前置詞」を参照。
3格は「〜に」,つまり間接目的である。ただし日本語の感覚で判断してはならない場合がある。
Sie helfen mir.(君は私を助ける。)上の文では英語のhelpにあたる動詞helfenが3格の目的語をとっている。動詞によって3格の目的語をとったり4格の目的語をとったり(ときには2格の目的語もある)するので辞書でチェックした方が安全である。入門用辞書では「3格」「4格」と書いてくれているものの,上級者向けになると「jm/et3」「jn/et4」と書かれている。
くわしくは文法解説「前置詞」を参照。
4格は「〜を」で,直接目的を表す。動詞の目的語としてよく使われる。
Ich suche eine Bank.(私は銀行を探しています。)くわしくは文法解説「前置詞」を参照。
時や場所の副詞句として使われる名詞の4格を副詞的4格という。
Jeden Tag spiele ich eine Stunde Tennis.(毎日私は1時間テニスをする。)英語のThere is/are ...にあたる表現である。ドイツ語ではEs gibt+4格」で表す。gibtはgebenの3人称単数の形である。
Es gibt ein gutes Restaurant. (よいレストランがある。)英語の複数形は基本的に-sまたは-esをつければよく,不規則なものは少数だった。(person-peopleなど)これはフランス語でも同じである。しかしドイツ語ではsをつけてすませるのは一部の外国語由来の名詞だけで,不規則の方が「規則的」といえる。複数の変化パターンは5つある。
同尾型ともよばれる。単数のときと同じ形をしている。そのため,単数か複数かは冠詞を見ないと分からない。
途中の母音が変音するものもあるので注意が必要である。
語尾にeがつくグループである。途中の母音が変音することもある。
語尾にerがつくものである。途中の母音が変音可能であれば必ず変音する。
語尾に(e)nがつくグループである。抽象的な女性名詞(あるいは動作名詞)にこのタイプが多い。論文などを読む場合,まだドイツ語になれていない段階ではドイツ語の複数形の語尾=enと考えていてもあながち間違いではないかもしれない。途中の母音は変音しない。
英語と同じ変化の仕方であり,ドイツ語では外国語由来の名詞に限られる。
最終更新日: 2005年4月1日
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