受動態の助動詞はwerdenである。未来の助動詞もwerdenだったではないかという声が聞こえてきそうだが,werdenのあと不定形がくると未来の意味,過去分詞がくると受動態になる。
Ich werde nicht gelobt.(私は褒められない。)
受動態のメリットは動作の主語を明示する必要がなくなることである。だから書き言葉ではよく使われるが,会話ではあまり用いられない。なお動作の主語(行為者)を表したいときはvon+3格(原因や手段の場合は,durch+4格)を用いる。もちろん英語のbyと同じく省略可能である。
(現在形)Ich werde gelobt.
(過去形)Ich wurde gelobt.(werdenが過去形になる)
(現在完了)Ich bin gelobt worden.(werdenはsein支配)
完了形ではgewordenではなくwordenであることに注意する。
英語ではかならず「他動詞」だけに対して受け身が成立し,自動詞の受け身はありえなかった。しかしドイツ語では自動詞の受け身もある。受け身とは動作主を特定せず,その動作が「行われている」ことを表現する方法であるから,自動詞であっても受け身はつくれるのである。
Man tanzt. (ダンスをしている。)
Es wird getanzt. (ダンスが行われている。)
ここでEsが緊急避難的に主語になっていることに注目。ドイツ語ではこのようなEsの用法が発達しているので,難しい文章を書くのに向くといわれている。ただし上の文を
Heute wird getanzt. (今日ダンスが行われている。)
のようにEs以外のもので文頭を埋めて,主語のない文にすることもできる。主語が絶対必要な英語とは少し違う。
「状態(〜の状態にある)」を表す意味と「動作(〜する)」を表す意味の両方がある動詞の場合,受動態は「動作」の受動を表す。そこで「状態」の受動を表したいとき,「sein+過去分詞」の形を使う。
Das Fenster ist von ihm geöffnet worden. (その窓は開けられた。)[動作受動]
Das Fenster ist jetzt geöffnet. (その窓は今開いている[開けられたままだ]。)[状態受動]
作成者:原田大樹
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最終更新日:1998年4月20日
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