ドイツ語の語順は第1節で述べたように,定形が2番目(決定疑問文では1番目)が原則である。他の部分の語順については英語ほどの規制はないが,次のような原則に注意しなければならない。それは,「ドイツ語では重要なものほど定形動詞の遠くにおかれる傾向がある」ということである。特に文末におかれる成分のことを「定形要素」と呼ぶ。英語では文型を維持しながらも言いたいことを先に言うという傾向があるが,ドイツ語はちょっとちがうみたいである。しかし最近では枠構造をやぶる話し方もあるそうだ。ここでは定形要素が文尾に来ている文を簡単に確認してみよう。
Er fhrt gut Ski.(彼はスキーが上手である。)
Bitte nehmen Sie Platz. (お座りください。)
この動詞にはこの言葉が最後にくる,という種類の例である。一種の熟語と考えて覚えるのがよい。
Ich fahre nach Kitakyushu. (私は北九州に行く。)
英語でも方向を示す副詞句はたいてい最後にくる。
Herr Michel stehet um 6 Uhr auf. (ミヒェルさんは6時に起きる。)
このような構造を枠構造とよぶ。
Ich kann gut Japanisch sprechen. (私は日本語をうまく話せる。)
助動詞がある場合,定形要素は動詞の不定形である。
分離動詞はドイツ語やオランダ語などにみられるものであるが,似たような使い方をする動詞は英語にもある。(この3つは同じ言語グループだから。)たとえば
Check it out!(確認して!)
I will see him off. (私は彼を見送るつもりだ。)
など,他動詞の群動詞(句動詞)の場合,目的語が枠の中に入るという現象がある。
ではドイツ語の分離動詞について例文をみてみよう。
Die Schule fngt um 8 Uhr an. (学校は8時にはじまる。)
動詞は不定形で書くとanfangen(はじまる)である。この動詞は英語的に言うと「群動詞」である。つまり最初のanは,もともと接触状態を表す前置詞で,これが接頭語になっている。fangenは,捕まえる・姿勢を立て直す,という意味の動詞である。前置詞と動詞のくっついた熟語だと考えるとわかりやすい。不定形のときはくっついているが,使われるときは接頭語(前綴り)が分離して,最後におかれる。
助動詞の場合,英語では次のようになる。
I must go to school. (私は学校へ行かねばならない。)
助動詞は動詞の前に置かれ,動詞は原形不定詞となるというのが英語のルールだった。ドイツ語では動詞が不定形になるのは同じだが,おかれる場所が文末になる。つけくわえると,やっかいにも助動詞にも人称変化がある。
Ich mu Deutsch studieren.(私はドイツ語を勉強しなければならない。)
Ich mchte einen Kuchen backen. (私はケーキを焼かせてもらいたい。)
枠構造はドイツ語の特色のひとつであるから,ぜひマスターしたいものである。
作成者:原田大樹
このページの文書は阪井夏樹さんよりご指摘を受け,一部修正しています(99/7/15)。ご指摘ありがとうございます。
最終更新日:1999年7月15日
Copyright(C)原田大樹1996-1999 All rights reserved.