格変化の仕方によって名詞を分類したのが「名詞の性」である。ラテン語ではもっと多くの変化パターンがあったが,ドイツ語では3つにまとめられた。それが「男性」「女性」「中性」である。従って自然界の性との関連はあまりないと思った方が安全だ。(どうして都市(Stadt)が女なのか…と真剣に考えても答えはでないだろうから)
男性名詞の例…der Mann(男),der Hund(犬),der Mond(月)など
女性名詞の例…die Frau(女),die Katze(猫),die Sonne(太陽)など
中性名詞の例…das Kind(子供),das Zimmer(部屋),das Auto(車)など
これらの格変化については「冠詞と冠詞類(名詞の格変化T)」を参照してほしい。
格変化の仕方が3つにまとめられたと述べたが,それ以外の変化の仕方をしている名詞がある。「男性弱変化名詞」とよばれるグループである。(左2つ)もうひとつは不規則変化と言ってしまってもいいグループである。(右2つ)
|
格 |
人間 |
紳士 |
名前 |
心 |
---|---|---|---|---|---|
単 数 |
1格 |
der Mensch |
der Herr |
der Name |
das Herz |
2格 |
des Menschen |
des Herrn |
des Namens |
des Herzens | |
3格 |
dem Menschen |
dem Herrn |
dem Namen |
dem Herzen | |
4格 |
den Menschen |
den Herrn |
den Namen |
das Herz | |
複 数 |
1格 |
die Menschen |
die Herren |
die Namen |
die Herzen |
2格 |
der Menschen |
der Herren |
der Namen |
der Herzen | |
3格 |
den Menschen |
den Herren |
den Namen |
den Herzen | |
4格 |
die Menschen |
die Herren |
die Namen |
die Herzen |
日本語の文法では「活用するもの=用言」「活用しないもの=体言」となり,体言といえば名詞であるから,「名詞は無変化」が常識である。しかしドイツ語では名詞も変化する。その変化とは「格変化」である。そして格を示すのが冠詞である。
●主語として(〜が)
Ich bin 20 Jahre alt.
●seinなどの補語として
Er ist ein Sohn.
ちなみにドイツ語には「補語」という言葉はない。
●所有(〜の)
英語で言うof〜にあたる表現であり,myやyour(所有格)にあたる表現は所有冠詞を用いる。2格は基本的に名詞の後ろにおく。
der Freund meiner Schwester (私の姉の友達)
●目的(〜を)
これは堅い表現であるが,次のようにして用いられる。
beim Anbieten eines Kaffees
これはeinen Kaffee anbietenにbei(〜の際に)をつけくわえ,「コーヒーをすすめる際には」という意味になる。訳に苦労がいるという点では英語の「無生物主語」みたいな存在?
●副詞的2格
時や場所の副詞句として使われる名詞の2格を「副詞的2格」という。これは古い時代のドイツ語でよく使われていたため,現在では数が少なく,「熟語」として覚えたほうがいいかもしれない。(cf.副詞的4格)
Eines Tages werde ich nach Canada gehen. (いつか私はカナダに行きたい。)
●前置詞の目的語
くわしくは文法解説「前置詞」を参照。
●動詞の目的語
3格は「〜に」,つまり間接目的であるが,日本語の感覚で判断するとミスすることがある。
Sie helfen mir.(君は私を助ける。)
という文では英語のhelpにあたる動詞helfenが3格の目的語をとっている。動詞によって3格の目的語をとったり4格の目的語をとったり(ときには2格の目的語もある)するので辞書でチェックした方が安全といえる。
●前置詞の目的語
くわしくは文法解説「前置詞」を参照。
●動詞の目的語
4格は「〜を」で,直接目的を表す。動詞の目的語としてよく使われる。
Ich suche eine Bank.(私は銀行を探しています。)
●前置詞の目的語
くわしくは文法解説「前置詞」を参照。
時や場所の副詞句として使われる名詞の4格を「副詞的4格」という。
Jeden Tag spiele ich eine Stunde Tennis.(毎日私は1時間テニスをする。)
●「〜がいる・ある」
英語のThere is/There areにあたる表現である。ドイツ語では「Es gibt+4格」で表す。gibtはgebenの3人称単数の形である。
Es gibt ein gutes Restaurant. (よいレストランがある。)
英語の複数形は基本的に-sまたは-esをつければよく,不規則なものは少数だった。(person-peopleなど)これはフランス語でも同じである。しかしドイツ語ではsをつけてすませるのは一部の外国語由来の名詞だけで,不規則の方が「規則的」といえる。複数の変化パターンは5つある。
同尾型ともよばれる。単数のときと同じ形をしている。ではどうやって区別するかというと冠詞で区別するのである。
der Lehrer(男性の先生) die Lehrer
das Zimmer(部屋) die Zimmer
der Apfel(りんご) die pfel
途中の母音が変音するものもあるので注意。
語尾にeがつくもの。途中の母音が変音することもある。
der Freund(男の友達) die Freunde
die Stadt(都市・町) die Stdte
語尾にerがつくもの。途中の母音が変音可能であれば必ず変音する。
das Kind(子供) die Kinder
das Buch(本) die Bcher
語尾に(e)nがつくもの。途中の母音は変音しないことに注意。
der Student (男の学生) die Studenten
英語と同じ変化の仕方だが,ドイツ語では外国語由来の名詞に限られる。
das Auto (自動車) die Autos
作成者:原田大樹
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最終更新日:1998年5月5日
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