時制

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ドイツ語の時制(Tempus)は「現在」「過去」「未来」「現在完了」「過去完了」「未来完了」の6種類で,それだけ見ると英語とほとんど同じように思われます。しかし英語と比べると「現在」「現在完了」がカバーする範囲が広く,それ以外の時制はあまり発達していません。ここに注目すると,意味的には「現在」と「完了」しかないと言われる日本語と似ているようにも見えます。

現在形(Präsens)

ドイツ語の現在形はかなり広い範囲をカバーできる便利な時制です。現在のみならず未来を表すことができます。この他,英語と同じく現在形によって過去の内容を表す歴史的現在の用法がドイツ語にもあります。

現在を表す

現在起こっていることだけではなく,反復的な行為や過去からの継続,さらには英語と同じく普遍的な真理も現在形が用いられます。

Ich gehe oft um 8 Uhr zur Universität. (私はしばしば8時に大学に行きます。)
Er ist seit 2004 Professor. (彼は2004年から教授です。)

ドイツ語には英語のような進行形がありません。ドイツ語で現在進行の意味を表すには,現在形に副詞jetztなど進行中であることが分かる意味の言葉を付け加えます。

未来を表す

英語と同じく現在形で確定未来を表すことができます。さらに英語とは違い,単純な未来についても,未来であることが分かる副詞を伴わせることで,現在形で表現することもできます。

Wir gehen morgen ins Kino. (私たちは明日映画館に行きます。)

過去形(Präteritum/Imperfekt)

その時点でまだ完了していない過去の出来事を表現するのに,過去形が用いられます。ドイツ語の過去形は特に日常会話ではあまり使われません。過去形が用いられるのは具体的には次の場合です。

そこで,過去形については,(sein,habenなどを除き)読解さえできれば,日常のドイツ語で困ることはないと思います。

Der zweite Weltkrieg endete 1945. (1945年に第2次世界大戦が終わりました。)

現在完了(Perfekt)

ドイツ語で過去の内容を表現するには現在完了が多用されます。現在完了は,現時点である動作が完了しているというニュアンスを表すものです(そのため,英語では現在完了形を用いる「継続」はドイツ語では現在形になります)。完了を表現するには次の2つの形態があります。

[haben支配の動詞の場合] haben + 過去分詞(Partizip II)
[sein支配の動詞の場合] sein + 過去分詞(Paritizip II)

英語の場合にはほぼ全ての完了形でhave動詞が用いられます。ただし英語でも一部の動詞がbe動詞と結合して完了形をつくることがあります(例:Spring is come. / He is gone.)。ドイツ語の場合には現在でも動詞によってhaben/seinが使い分けられるという特色が残っています。動詞がhaben支配かsein支配かは辞書で調べることができます(haben支配は h ,sein支配は s と表示されています)。区別の方法は概ね次の通りです。

[haben支配] 他動詞,話法の助動詞,再帰動詞,大半の自動詞
[sein支配] 移動・変化を表す自動詞(gehen, werdenなど),sein,bleibenなど

現在完了は英語と同じく「完了」「経験」「結果」を表す他,英語とは違って過去を表すことができます。英語の完了形と違い,完了形の中で過去の一点を表す副詞(gesternなど)を用いることができます。

Gestern bin ich ins Krankenhaus gegangen. (私は昨日病院に行きました。)

[上級] 同じ動詞が意味の違いに応じてsein支配・haben支配になることがあります。

Ich habe meinen alten Freund getroffen. (私は旧友に出会いました。)
Ich bin auf Schwierigkeiten getroffen.(私は困難に直面しました。*)

treffenは人に偶然会うという意味ではhaben支配,抽象的なもの(問題など)に直面するという意味ではsein支配になります。一般に,haben支配の動詞はその主語の意思・意向と結びついた動作であることが多く,sein支配の動詞はその主語の意思・意向とは関係ない変化を意味するものが多いとされます。

*「困難に直面する」という表現としては,auf Schwierigkeiten stoßenの方が一般的です。

過去完了(Plusquamperfekt)

過去のある時点を基準に,それより前に起きたことを表すのが過去完了です。

[haben支配の動詞の場合] hatte + 過去分詞(Partizip II)
[sein支配の動詞の場合] war + 過去分詞(Paritizip II)

過去完了が使われる典型は,接続詞nachdem(~した後で)やsobald(~したらすぐに)が用いられるときです。過去の出来事を表す接続詞にはalsとnachdemがありますが,alsが同時性を示しているために時制の差がないのに対し,nachdemは副文が主文より一つ前の時制(典型的には副文が過去完了,主文が過去)となります。

Nachdem er gegangen warging ich in die Bibliothek. 
(彼が[私のところから]行ってしまった後で私は図書館に行きました。)

[上級] 二重完了形(Ultra-Perfekt)
口語では,haben+過去分詞+gehabtのように,過去分詞が二回繰り返される形の完了形が使われることがあります。特に南ドイツでよく見られる表現であり,意味としては過去完了と同じであることが多いです。

未来形(Futur I)

ドイツ語では未来の内容も現在形が表すため,未来形がしばしば用いられるのは予想・予告・推量といった,話し手の意見が含まれる文脈です。

未来形: werden + 不定詞

英語で未来を表す方法としては,will,shall,be going to の3つが代表的です。ドイツ語では英語のwill,shallにあたるwollenとsollenがありますが,いずれも話者の意志を表す話法の助動詞として用いられます。そこには未来のニュアンスも含まれていますが,単に未来を表す場合にはwollenやsollenは用いられません。

werdenが表す意味内容は大きく「未来」と「推量」に分かれます。werdenが「未来」を表す場合には,話し手がその内容を確実だと思っているニュアンスが含まれることがあります。こうした未来形を予言的未来(prophetisches Futur)と呼ぶことがあります。これに対して未来形の形に副詞のvielleicht,wahrscheinlichなどが入っていると,現在や将来の動作・状態に対する推量(Vermutung)の意味になります。この場合のwerdenは時制を表すというよりは,むしろ話法の助動詞に近い役割を果たしています。

[未来] Der Zug wird planmäßig in Konstanz ankommen. 
(列車はダイヤ通りコンスタンツに到着するはずです。)
[推量] Sie wird jetzt am Bahnhof sein. 
(彼女は今頃駅にいるでしょう。)

未来完了(Futur II)

未来完了は未来のある時点で動作が完了していることを示す場合や,過去に関する推量を表す場合に用いられます。ただし実際に使われることはまれなので,読んで理解できればあまり問題がありません。未来完了の意味を現在完了で代用することもしばしばあります。この場合には副詞を使って未来完了の意味を表します。

未来完了: werden + 過去分詞(Partizip II) + haben / sein

[中級] 未来完了の形を用いると,vielleichtなどの副詞なしに過去の出来事や状態に対する不確実な推量の意味を表すことができます(現在・将来に対する推量は未来形を用います)。

[未来完了] Bis zur nächsten Woche werde ich Ihren Aufsatz gelesen haben
(来週までにあなたの論文を読んでいるでしょう。)
[過去の推量] Dieses Gesetz wird mittlerweile geändert worden sein.
(この法律は最近改正されたでしょう。)
    

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