接続法

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接続法は動詞の「法」のひとつで,事実を表現するのではなく,可能性・願望・仮定・伝聞などを表現する方法です。接続法には,英語の仮定法現在にあたる接続法I式(Konjunktiv I)と,英語の仮定法過去にあたる接続法II式(Konjunktiv II)があります。接続法I式は不定詞からつくり,接続法II式は過去基本形をもとにしてつくります。接続法I式は間接話法・要求話法に,接続法II式は仮定話法に用いられます(補助的に接続法II式も間接話法で用いられることがあります)。

接続法I式の人称変化

接続法I式は,動詞の語幹+e+過去人称変化語尾でつくります。現在人称変化で幹母音が変化するタイプの動詞でも変化させずに作ります。seinだけは不規則変化です。

不定形 lernen fahren können werden haben sein
ich lerne fahre könne werde habe sei
du lernest fahrest könnest werdest habest sei[e]st
er/sie/es lerne fahre könne werde habe sei
wir lernen fahren können werden haben seien
ihr lernet fahret könnet werdet habet seiet
sie/Sie lernen fahren können werden haben seien

接続法II式の人称変化

wohnenなどの規則動詞の場合,接続法II式は直説法の過去形と全く同じになります。これに対して不規則動詞の場合には,過去基本形+e+過去人称変化語尾となりますが,幹母音がウムラオトできる音(a,o,u)のときはウムラオトになります(ä,ö,ü)。

[上級] ただし,helfen,stehenなどは過去基本形と幹母音が変わります(helfen: half→ich hülfe)。またkennen,nennenなどは幹母音が不定詞と同じになります(kennen: kannte→ich kennte)。さらに話法の助動詞のsollenとwollenは幹母音の変化がないので直説法の過去形と全く同じになります。

不定形
過去基本形
gehen
ging
stehen
stand
können
konnte
werden
wurde
haben
hatte
sein
war
ich ginge stünde könnte würde hätte wäre
du gingest stündest könntest würdest hättest wärest
er/sie/es ginge stünde könnte würde hätte wäre
wir gingen stünden könnten würden hätten wären
ihr ginget stündet könntet würdet hättet wäret
sie/Sie gingen stünden könnten würden hätten wären

接続法の時制

接続法I式もII式も,そのままの形では現在の時制になります。過去や未来といった時制を示すには,助動詞を用います。

直説法の場合に過去を表す方法として,現在完了・過去・過去完了の3つの時制がありますが,接続法には完了(ないし過去)の形は1つしかなく,現在完了をベースにした表現になります。理論的には接続法の未来完了もありますが,ほとんど使われないのでここでは紹介していません。

接続法I式の用法

[上級] 要求話法

願望や要求といったニュアンスを表す話法を「要求話法」といい,接続法I式が用いられます。但し最近では命令法や話法の助動詞sollen,möchteなどが用いられることが多く,以下の例を除くと初級・中級文法で出てくることはほとんどありません。

Gott sei Dank! (ありがたい![慣用表現])
Nehmen Sie Platz! (お座り下さい。[Sieに対する命令法])
Gehen wir ins Kino! (映画館に行きましょう。[wirを主語とする勧誘])

要求話法の場合の動詞は第2位または第1位におきます。直説法と判別するために第1位に動詞が置かれることがあります。上の文の下の2つの例がこれにあたります。これらは命令法・勧誘形として学ぶことが多いですが,もともとは接続法I式の要求話法です。

要求話法が熟語表現になっているものもあります。例えばes sei dennは「...であれば別だが」,sei es A oder Bは「AであれBであれ」という意味です。これらは論文などでよく使われます。

[中級] 間接話法(indirekte Rede)

他の人の言ったことを表現するときに,そのまま「 」の形で伝える方法を直接話法と呼び,これに対し自分の言葉で言い直す方法を間接話法と言います。間接話法の場合には接続詞+副文の形か,接続法I式で表すことができます。接続法が使われると,その内容が事実であることを引用者は保証しないというニュアンスが伝わります。

Er sagte: „Ich komme aus Japan." (直接話法)
→ Er sagte, dass er aus Japan kommt. (直説法を使う間接話法)
→ Er sagte, er komme aus Japan. (接続法I式を使う間接話法)

直接話法の場合には,伝達部と引用部の区切りはコロン,間接話法の場合はコンマになります。接続詞を使う間接話法では定形は後置されます。これに対して接続法I式が使われる場合には定形が第二位になります。

接続法I式を使った場合に伝達部と引用部との間での時制の一致はありません。接続法I式が直説法と同じ形の動詞になる場合,代用で接続法II式が使われます(会話表現では同じ形にならなくても接続法II式が使われることがあります)。

Sie sagten: „Wir haben keine Zeit".(直接話法)
→Sie sagten, dass sie keine Zeit haben. (直説法を使う間接話法)
→Sie sagten, sie haben keine Zeit. (接続法I式を使う間接話法)
→Sie sagten, sie hätten keine Zeit. (接続法II式を使う間接話法)

疑問文や命令文を接続法I式を使った間接話法にする場合には次のようになります。

Ich fragte ihn: „Kommst du aus Japan?" (直接話法)
→ Ich fragte ihn, ob er aus Japan komme. (接続法I式を使う間接話法)
Ich sagte zu ihm, „Kommen Sie zur Uni!" (直接話法)
→ Ich bat ihn, er möge zur Uni kommen. (接続法I式を使う間接話法)

決定疑問文の場合には接続詞obが用いられ(英語のifにあたります),補足疑問文の場合には疑問詞がそのまま接続詞の役割に切り替わります。命令文の場合には依頼文ではmögen,強い命令調のときにはsollen/müssenが用いられます。直接話法から間接話法への転換に関する詳細は,[上級]直接話法から間接話法への転換を参照して下さい。

[中級] 動詞sagenの場合には,接続詞dassを用いず,Sie sagen, er kommt heute.のようにsagenのあとに主文をつなげる表現方法があります。詳しいことは副文と接続詞を参照して下さい。

[上級] 話者が間接話法における副文の内容を事実と認めている場合には直説法が,また話者が副文の内容に否定的な場合には接続法II式が用いられます。そこで,間接話法の副文で接続法II式が出てきたときは,以下のような話者の懐疑を表すものでないかどうかも確認する必要があります。

Er hat mir gesagt, er wäre der Bundespräsident. 
(彼は自分が連邦大統領だと私に言っていました[が私はそうは思いません]。)

接続法II式の用法

仮定話法

事実に反する内容を仮定する表現を仮定話法といい,接続法II式が用いられます。

Wenn ich Zeit hätteginge ich ins Kino.
Wenn ich Zeit hättewürde ich ins Kino gehen.

どちらも「もし時間があれば映画館に行くのに(=実際には時間がないので映画館に行けない)」という意味ですが,書き言葉では上の表現が,口語など一般的な表現としては下の表現が使われます。話法の助動詞や助動詞など,接続法II式の形が直説法と区別しやすい動詞の場合には,接続法II式の形が使われますが,そうでない動詞の場合にはwürde+不定詞の形で代用されます。

上の例は現在の事実に反する仮定の場合でしたが,過去の事実に反する仮定の場合には接続法II式完了の形が用いられます。

Wenn ich Zeit gehabt hättewäre ich ins Kino gegangen.

「もし時間があったら映画館に行ったのに(=実際には時間がなくて映画館に行けなかった)」という意味になります。

婉曲話法

接続法II式は丁寧な表現としてもしばしば用いられます。これは日本語の「...したいのですが」にあたる表現で,直接的な要求ではなくよりソフトな印象を相手に与えることができます。以下の例のように,日常会話でも頻繁に用いられます。

Könnten Sie bitte langsam sprechen? (ゆっくり話してもらいたいのですが。)
Ich hätte gern eine Tasse Kaffee. (コーヒー一杯頂きたいのですが。)

丁寧さを表すのに合わせて使われるのが間接疑問文です。間接疑問文と接続法II式とを同時に使うと,かなり丁寧な表現になります。

Könnten Sie mir vielleicht sagen, wo die Uni ist?
(大学はどこか教えて頂けますか。)

[上級] 直接話法から間接話法への転換

直接話法を間接話法に書き換える際の注意点は以下の通りです。

[1] 直接話法の過去形は,間接話法では完了の形に置き換える

Sie sagten: „Wir wußten das nicht".
Sie sagten, sie hätten das nicht gewusst.

接続法I式の動詞の形が直説法と同じ場合には,接続法II式で代用します(上記の例では,接続法I式ではhabenとなって直説法と同形になるため,hättenが使われています)。接続法Ii式の形が過去形の直説法と同じ場合には,würde+不定詞の形が使われることがあります。話法の助動詞のうち直説法のmöchteは間接話法ではwollen(例えばwolle)に変わります。

[2] 動詞の不定形の後ろに過去分詞を置かなければならなくなったときは,不定形を用いる(代替不定詞

Er sagte: „Das konnte nichts ändern".
Er sagte, das habe nichts ändern können.

話法の助動詞だけが直説法で過去の形で単独で使われていれば,habe...gekonntのように,助動詞の過去分詞の形が使われることになります。しかし本動詞がある場合には,本動詞の不定形の後ろに過去分詞を置くことができないので,不定詞が置かれることになります。このルールは話法の助動詞に限らず,lassenのように動詞と共に使われるものでも当てはまります。

[3] 主節の前に従属節が置かれている場合には,従属節の内容にかかわらず,従属節を間接話法の形に変える

Sie sagte: „Dass die Zugehörigkeit in Frage gestellt wird, liegt wohl daran".
Sie sagte, dass die Zugehörigkeit in Frage gestellt werde, liege wohl daran.

[4] 主節の後ろに従属節が置かれている場合には,その節が事実を述べている(主張している)場合(weil, obwohl, 時を表す接続詞で始まる節が典型的)には従属節を間接話法の形に変え,仮定を述べている場合(例:多くのwenn節,間接疑問文の場合)には直説法のままにする

Er sagte: „Die Schweiz ist für die Japaner eines der beliebtesten Reiseziele, obwohl kaum jemand Deutsch könnte".
Er sagte, die Schweiz sei für die Japaner eines der belibtesten Reiseziele, obwohl kaum jemand Deutsch könne.
Sie fragte sich: „Was soll daran "förderlich" sein!"
Sie fragte sich, was daran "fördelich" sein soll.

[5] 関係詞節が名詞の意味を限定する場合(制限用法)には関係詞節の中で直説法が用いられ,関係詞節が名詞に関する情報を追加する場合(継続用法)には間接話法が用いられる

Er sagte: „Ich benutze nur Hotels, die einen eigenen Shuttle-Dienst anbieten".
Er sagte, er benutze nur Hotels, die einen eigenen Shuttle-Dienst anbieten.

英語と異なり,ドイツ語ではコンマの有無で関係詞節の限定・継続の区別をしていません。そのため上記のルールのどちらを使うかは,文の内容で判断する必要があります。この例文では,ホテルの中でもホテル自身がシャトルサービスを提供しているホテルを彼が使うと言っているので,ホテルの意味を限定する制限用法だと分かります。この場合には,関係詞節内の動詞の形が直説法になります。

Er sagte: „Ich benutze nur IB-Hotels, die einen eigenen Shuttle-Dienst anbieten".
Er sagte, er benutze nur IB-Hotels, die einen eigenen Shuttle-Dienst anböten.

これに対して,上記の例文では関係詞節がなくてもホテルはIB-Hotelsという形で特定されており,そのため関係詞節の部分は内容を付加する継続用法であることになります。この場合には,関係詞節内の動詞の形は接続法(接続法I式は直説法と同形になるため接続法II式)となります。

    

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