不定詞

paco Home>HDG>ドイツ語文法>不定詞

ドイツ語の動詞の形は大きく「不定形」と「定形」に分かれます。「定形」は主語に応じて語尾変化しますが,「不定形」はそうした変化がありません。この広義の不定形には不定詞・zu不定詞・分詞が含まれています。

不定詞

不定詞は助動詞や一般動詞とともに用いられたり,名詞として用いられたりします。

助動詞とともに用いる

助動詞werdenと用いて未来形を作ったり,話法の助動詞と結びついてさまざまな意味を表したりします。また,使役の助動詞lassenと結びついて,「...させる」の意味を表します。本動詞も含め,lassenには次の3つの意味があります。

(1)禁止(unterlassen)
後ろに名詞しか来ない場合にはこの意味になります。

Lass das! (やめなさい。)

この意味から派生して,放任や放置を表すこともあります。

Ich lasse das Paket dort. (私は荷物をそこに置いておきます。)

(2)許可(erlauben)
後ろに不定詞を伴います。動作をするのは話者ではない場合にはこの意味になります。

Sie lässt ihre Kinder ins Kino gehen
(彼女は子どもに映画に行くことを許します。)
Lassen Sie Ihr Gepäck an meine Adresse zustellen.
(荷物を私の住所に配達してもらって下さい。)

使役の意味はこのニュアンスの延長上にあります。

Der Lehrer lässt die Schüler singen. (先生は生徒に歌を歌わせます。)
Ich lasse meine Haare schneiden. (私は髪を切ってもらいます。)
Ich möchte den Brief frankieren lassen. (この手紙を郵送したいのですが。)

(3)可能性
後ろに不定詞を伴います。事物が主語となっており,再帰代名詞sichを伴います。

Diese Frage lässt sich leicht beantworten. (この問題は簡単に答えられます。)
Das lässt sich schon machen. (そのことはきっとなんとかなります。)

この他,命令文(正確には接続法I式の要求話法)の形で提案の意味を表現できます。英語のLet's...(Let us)にあたります。

例: Lass uns beginnen! (さあ始めましょう。)

[中級] sein+不定詞
口語では,sein+動作を表す動詞の不定詞で「~しに出掛けている・行っている」という意味を表すことがあります。

Er ist vielleicht schwimmen.(彼はたぶん泳ぎに行っています。)

一般動詞とともに用いる

英語と同じく知覚動詞(sehen,hörenなど)と不定詞とが結合します。また英語とは異なり移動動詞(gehen,kommenなど)と不定詞が結びついて,「...しに行く」といった意味を表します。

Ich sehe ihn tanzen. (私は彼が踊っているのを見ます。)
Wir gehen schwimmen. (私たちは泳ぎに行きます。)

話法の助動詞,使役の助動詞,知覚動詞の場合には,完了形の際に過去分詞を用いず,不定詞が使われます(代替不定詞)。

名詞として用いる

英語では原形不定詞が名詞になることはありませんが,ドイツ語ではzuなしの不定詞が名詞的に使われるケースがあります(不定詞句に目的語・動詞以外の他の要素が付加されると原形不定詞では不可能で,zu不定詞が用いられることになります)。

Mein Hobby ist Gitarre spielen. (私の趣味はギターを弾くことです。)

動詞を名詞化(Nominalisierung)する方法は他にもあります。代表的なものを挙げてみます。

[中級] 動詞の語幹・不規則名詞の過去形をもとにする名詞の性

上記のとおり,動詞の語幹・不規則名詞の過去形をもとにする名詞は原則として男性名詞になります。しかしその語尾が-e,-l,-tになる名詞は女性名詞になることが多いです。

例: -e Hilfe, -e Frage, -e Zahl, -e Wahl, -e Tat, -e Antwort, -e Fahrt, -e Sicht

zu不定詞

zu不定詞は英語のto不定詞にあたり,用法も非常によく似ています。英語との違いは,zu不定詞の部分が不定詞句の一番最後に置かれることと,多くのzu不定詞句はその前の部分とコンマで区切られることです(新正書法に従うと,コンマによる区切りは書き手の任意にかなり委ねられます)。

名詞的用法

zu不定詞句が「...すること」の意味を表します。zu不定詞句が長い場合には(英語と同じく)形式主語・形式目的語としてesを置いた上でzu不定詞句を後ろに回すこともあります。

Viele Fremdsprachen gleichzeitig zu lernen ist schwierig für mich. 
Es ist schwierig für mich, viele Fremdsprachen gleichzeitig zu lernen.
(たくさんの外国語を同時に学ぶことは私にとっては難しいです。)

[中級] 動詞と特定の前置詞とが結びつく場合,前置詞の部分をda[r]+前置詞の形にした上で,zu不定詞句を後ろに回す表現方法があります。

Er hat damals nicht daran gedacht, ins Kino zu gehen.
(彼はその時は映画館に行くことを考えていませんでした。)

形容詞的用法

zu不定詞が名詞を詳細に説明する役割を果たします。英語と同じく「...すべき」の意味を表すこともあります。

Haben Sie Lust, nach Japan zu fahren? (日本に行きたいと思いますか。)
Ich habe Angst, auf Deutsch etwas laut zu sagen.
(私はドイツ語で何かをはっきりしゃべることに不安があります。)

副詞的用法

zu不定詞が動詞を説明します。英語と違って必ず前置詞とともに用いられます。

Ich gehe zur Universität, um die Vorlesungen zu besuchen.
(私は講義に出席するために大学に行きます。)
Er spielt Gitarre, statt seine Hausaufgaben zu machen
(彼は宿題をしないでギターを弾いています。)

副詞的用法の代表的表現として次のようなものがあります。

その他の用法

英語のhave toなどと同じく,助動詞と同じ働きをするzu不定詞があります。

Ich habe Deutsch zu lernen
(私はドイツ語を勉強しなければなりません。)
Die kommunale Selbstverwaltung ist mehr zu respektieren
(地方自治はもっと尊敬されなければなりません。)

haben+zu不定詞は英語のhave toと同じく「~しなければならない」という意味を表します。これに対してsein+zu不定詞は「~されなければならない」(受動の義務)「~されうる」(受動の可能)といった意味を表します。受動の可能の意味は,前に出てきたlassen+sich+不定詞でも表すことができます。

ドイツ語には英語と違って,助動詞を文中で複数使ってはいけないというルールがありません。そのため助動詞と同じ意味を表すzu不定詞表現は,英語ほどは使われません。

英語と同じく,独立的用法もあります。この場合には文成分としてカウントされず,動詞の位置には影響を与えません。

Um die Wahrheit zu sagen, ich höre gern Mozart. 
(本当を言うと私はモーツアルトを聞くのが好きです。)
    

研究関連

授業関連

HDG

Links

Weblog

follow us in feedly follow us in feedly