文の構造

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ドイツ語の文の構造にはいくつかの原則があります。まずは基本的なルールを確認し,その後,やや細かい内容を見ていきます。

文の基本的な構造

ドイツ語の語の並べ方のルールは比較的緩やかです。最も重要なルールは動詞の位置です。平叙文(Aussagesatz)(肯定文・否定文)では定動詞が2番目の要素に置かれます(定動詞第二位の原則)。これに対して命令文(Aufforderungssatz)・[決定]疑問文(Ja/Nein-Frage)では動詞がはじめに置かれます。

[平叙文] Ich gehe zur Universität. (私は大学に行きます。)
[命令文] Gehen Sie zur Universität! (大学に行ってください。)
[命令文] Gehen Sie zur Universität? (あなたは大学に行きますか。)

疑問文とその答え方

疑問文のうち,はい・いいえで答えられるものを決定疑問文,疑問詞で始まり答えを回答者が補充しなければならないものを補足疑問文(W-Frage)といいます。決定疑問文は動詞が第一位,補足疑問文は疑問詞が第一位で動詞は第二位になります。

[決定疑問文] Gehen Sie zur Universität? -Ja, ich gehe. / Nein, ich gehe nicht.
(大学に行きますか? はい,行きます。/いいえ,行きません。)
[補足疑問文] Welche Universität haben Sie gewählt? - Ich habe die Universität Kyoto gewählt.
(どの大学を選びましたか? 私は京都大学を選びました。)

決定疑問文には肯定疑問文と否定疑問文があります。肯定疑問文の答えはja/neinですが,否定疑問文の答えはnein/dochとなります。

Gehen Sie nicht zur Universität? (あなたは大学に行かないのですか。)
[肯定の答え] Nein, ich gehe nicht. (いいえ,行きません。)
[否定の答え] Doch, ich gehe. (いや,行きます。)

英語と共通で,否定疑問文の命題が肯定か否定かを基準にして答えます(日本語では相手が言ったことを基準に評価するので結果として英語・ドイツ語と肯定・否定が逆になります)。英語との違いはこの場合の否定でYesではなくDochという単語を使うことです。

否定文の作り方

否定文を作るにはnichtを使う方法とkein(e)を使う方法があります。原則として不定冠詞・複数名詞・不可算名詞を含む文を否定するときはkein(e),定冠詞を含む文を否定するときはnichtですが,両方使えることもあります。

nichtを使う場合には文のどこに置くかも問題になります。基本的には否定したい要素の前に置き,文全体を否定するときには文末に置きます。文末に動詞と密接に結びつく要素(方向を表す前置詞句・機能動詞構造・態様を表す副詞・補語など)がある場合にはその前に置きます。

Er ist immer nicht pünktlich. (彼はいつも時間を守りません。)
Er ist nicht immer pünktlich. (彼は必ずしも時間通りというわけではありません。)
Ich gehe nicht zur Universität. (私は大学に[は]行きません。)

最初の文は文全体を否定する用法です。次の文のnichtはimmerだけを否定しているので「いつも~というわけでは必ずしもない」という意味になります。場合によってはこの全部否定と部分否定とが一義的に決まらないことがあります。最後の文では場所を表す副詞句があるため,nichtの位置は全部否定の場合にはその前になります。そこでこの文章は,全部否定「大学に行きません」とも,部分否定「大学には行きません(他の場所に行きます)」とも解釈でき,どちらの意味かは文脈で決まることになります。

枠構造(Satzklammer)

定動詞第二位の原則と並んで重要なルールは,ドイツ語では定動詞と最も関係が深い要素が文の最後に置かれ,あたかも枠のような形を作ることです。これを枠構造と呼びます。

[完了の助動詞+動詞の不定詞] Ich bin zur Universität gekommen.
[話法の助動詞+動詞の不定詞] Ich muss nach Japan zurückgehen.
[分離動詞+分離前綴り] Ich stehe heute morgen um 6 Uhr auf.
[機能動詞] Jetzt ist die Maschine nicht in Betrieb.
[方向を表す語句] Ich fahre heute nach Kitakyushu.

方向を表す語句が代表的ですが,副詞の中でも下で説明している補足語の性格を持つ要素(それを取り去ると文として成立しない要素)がある場合には,動詞との結びつきが強いために文末に置かれ,定動詞と一種の枠構造を形成します。

ドイツ語ではもともと不定詞句において,動詞を一番最後に置く順番がとられます。これに主語を付けて文にした場合に人称変化した定動詞が文の2番目に移動するのです。動詞と最も関連が深い要素が文末に置かれているのは,動詞の本来の位置が文末であるからだと説明できるでしょう。

[中級] ドイツ語の文アクセント(Satzakzent)は,末尾の内容語(Inhaltswort)に置かれることが原則です。内容語とは名詞・動詞・形容詞などの意味内容を持つ単語のことです。この原則も上記のドイツ語の文章構造と深く関係しています。

[上級] 補足語と添加語

文を構成する最小単位を文肢(文成分)といいます。文肢には英語と同じように「主語」「目的語」「補語」といったものがあります。この中で,動詞が必ず必要とする文肢を「補足語」,そうではなく自由に加えたり取り除いたりできる文肢を「添加語」といいます。

補足語はさらに,状況から見て省略可能な「非義務的補足語」と,省略不可能な「義務的補足語」とに分けられます。他動詞の目的語は非義務的補足語になっている場合があり,このときは目的語を省略して主語・動詞だけで文を作っても意味は通じます。

Ich gehe heute früh zur Universität. (私は今日早く大学に行きます。)

上記のheute frühは仮になくても文として成り立つので添加語になります。これに対してgehenは必ず主語と動作の方向を表す語が必要なので,ichとzur Universitätは補足語になります。ドイツ語の複雑な文を読み解く際には,まず動詞を調べ,その動詞がどのような補足語を必要とするのかを辞書で確認し,文の中でどの文肢がそれにあたるのかを突き止める作業が最初に必要になります。意味の大枠を特定してから添加語の部分を追加して理解すると,理解が容易になります。

    

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