文肢の配列ルール

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ドイツ語の文肢の配列は英語と異なりかなり緩やかです(そのために冠詞・冠詞類による格表示が発達しているとさえ言えます)。最も重要な原則は「定動詞第二位」と「枠構造」の考え方です。それ以外の配列ルールはほぼ日本語と同じです。すなわち日本語と同様に,重要な情報・新しい情報ほど文の最後に置かれる傾向があります。ここではドイツ語の文肢の代表的な配列ルールを確認します。

[中級] 定動詞の前にくる要素

文の冒頭部分である定動詞の前の文肢は英語では基本的に主語です。ドイツ語でも主語が来ることが比較的多いですが,必ずしも主語でなければならないことはありません。ここに配置してはいけないのはnicht,4格のes,再帰代名詞などであり,それ以外の要素は配置することができます。

意味の上から見ると,ここに来る文肢はすでに聞き手が知っている情報(既知の情報)です。これも比較的日本語とよく似ています。もし既知の情報がない場合には,副詞(Heute,Jetztなどで始まるドイツ語の文が頻繁に見られます)や主語ではないesを仮に置くこともあります。逆に,強調の意味でここに未知の単語を置くこともありますが,これは一般的な配列のルールに逆らうためにかえって強調の意味が出るのです。

[中級] 枠構造の枠内の要素

枠内の文肢は概ね次のように配置されることが多いです。すなわち,主語→3格目的語→4格目的語→前置詞格目的語・2格目的語→補語・状況語の順番です。この並び方は英語の配列に似ているようにも見えます。つまりSVOOの場合にドイツ語では3格にあたる間接目的語が英語でも直接目的語より先に来ますし,SVOCの場合には目的語よりも補語が後に来ています。こうした文法的な配列ルールと並び,意味の上では,既知の情報ほど文の最後に来るという原則もまた見られます。状況語については,時間(Tempus)→因果関係(Kausalität)→態様(Modus)→場所(Lokal)の順番に配列される傾向があります。これらの頭の部分をとってtekamoloと覚える方法もあるようです。

上記の原則の例外として,3格と4格の人称代名詞が並んだときのルールがあります。一般原則では3格→4格の順番ですが,どちらかが代名詞になると代名詞が名詞より前に置かれます。またどちらも代名詞になると4格→3格の順番になります(一般的に言って,3格と4格を両方とる動詞の場合,4格が代名詞であれば「~を」にあたる要素よりも3格代名詞(ほとんどの場合人称代名詞)の「誰に」にあたる情報の方が重要なためです)。より敷衍すれば,一般的ルールとして代名詞は1格→4格→3格の順番で並び,これ以外の順番で出てくることはありません(1格の代名詞があるにもかかわらず,文の第1要素にそれ以外の格の代名詞が置かれることはありません)。

Ich schenke Ken eine CD. (私は健にCDをあげます。)
→Ich schenke sie Ken. (私は健にそれをあげます。)
→Ich schenke sie ihm. (私は彼にそれをあげます。)

nichtの位置

ドイツ語の否定文はnichtかkeinかを使います。原則として,特定された名詞を否定するときはnicht,不特定の名詞を否定するときはkeinです。主格補語や4格目的語を否定する場合ではどちらも使えます。文否定の場合や名詞以外の要素を否定する場合はnichtしか使えません。

nichtはどこに置かれるかによって意味が変わってきます。部分否定の場合には,否定したい文肢の直前にnichtを置きます。文否定の場合には原則としては文末にnichtを置きますが,文末にすでに枠構造などで動詞と関係が深い文肢が来ている場合にはその前に置きます。

Er kommt nicht heute nach Konstanz. (彼はコンスタンツに今日は来ません。)
Er kommt heute nicht in Konstanz. (彼は今日コンスタンツに来ません。)

最初の文は部分否定の例です。ここではheuteを否定するためにその直前にnichtが来ています。次の文は文否定の例です。kommenは補足成分として場所を示す副詞を要求するので,in Konstanzが文末に来ます。文全体を否定するにはその手前にnichtを置くことになります。

話法の不変化詞(Partikel)とその位置

話者の気持ちを短い言葉で表現するのが話法の不変化詞です。意味が分からなくても大勢に影響はありませんが,意味が分かり自分でも使えるようになると表現の幅が広がります。

Wir gehen ja heute zur Uni. 
(今日はやはり大学に行きましょう。)
Voraussetzungen ist halt, dass man einigermaßen kontinuierlich mitarbeitet.
(条件というのはやはり,相当程度継続的に参加するということも含まれています。)

ここで出てきているjaやhaltは,相手もそう思っているだろうという気持ちを表す話法の不変化詞で,日本語に訳すと「やはり」に近い意味になります(これ以上に明確な根拠付けができないというニュアンスを表すこともあります)。話法の不変化詞は原則として動詞の直後,動詞の直後に主語が置かれる場合にはその主語の直後におかれます。

[中級] 動詞の配置ルール

動詞と助動詞が使われた場合には,助動詞が定形となって第二位に置かれ,動詞は不定詞の形で文末に置かれます。動詞群に属する語が3つ以上になると,その配列について次のようなルールがあります。すなわち,未来の助動詞werden→完了の助動詞haben/sein,話法の助動詞→受動の助動詞werden,使役の助動詞lassen,知覚動詞→本動詞という順番です。これは基本的には日本語の語順と同じです。

Diese Aufgaben sollen gelöst werden. (これらの課題は解決されるべきです。)
[未来形] Diese Aufgaben werden in der Zukunft gelöst werden sollen.

上記の例のように,受動態と話法の助動詞の双方を使わなければならない場合には,まず話法の助動詞を定形にして第二位に置き,受動態の助動詞werdenと枠構造を作ります。その上でwerdenの手前に本動詞の過去分詞を置くことになります。これを未来形にすると,未来形の助動詞werdenは語順の優先順位が一番高いので,これを定形にして第二位に置き,それ以外は文末に回ります。

[上級] 副文になった場合のルールについては副文と接続詞を参照してください。

    

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