コンスタンツ(Konstanz)

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コンスタンツの位置

コンスタンツ大学から見たボーデン湖

コンスタンツはドイツの西南端に位置する国境の都市です。人口は約8万人で,ボーデン湖沿岸では最大の人口規模の都市です。ただしこの人数は市街地以外のかなり広範な地域を含んだものなので,市街地そのものの人口はそれほど多くありません。

ボーデン湖は面積540平方キロメートルで中部ヨーロッパでは3番目に大きな湖です。ドイツ・スイス・オーストリアの3ヶ国にまたがり,この地域の水源となっています。またボーデン湖はライン川が流れ出す湖としても知られます。地図上で見るライン川はさらにスイスまで遡りますが,ライン川が完全に1本になって流れ出すのはボーデン湖であるため,地元の観光ガイドなどではここがライン川の起点であると紹介されていることがあります。

このライン川はこの地域ではドイツとスイスの国境になっている部分が多くなっています。一般にはライン川の北岸がドイツ,南岸がスイスですが,コンスタンツの旧市街はラインの南岸にあります。地図で見るとコンスタンツの旧市街地だけがスイス領の中にはみ出しているように見えます。コンスタンツとその隣町のクロイツリンゲン(Kreuzlingen)とは歩いて行ける距離にあります。

コンスタンツの歴史

和議の館の近くに立つインペリア(Imperia)はコンスタンツ公会議を皮肉る意味が込められている

ボーデン湖沿岸には有史以前から人が住んでおり,いくつか遺跡もあります(再建した遺跡がコンスタンツの近くのウンターウルディゲン(Unteruhldigen)にあります。コンスタンツが歴史に登場するのは4世紀前後のことであり,その名前はこの都市を築いたローマ皇帝コンスタンスから来ています。コンスタンツが高校の世界史の教科書にも登場するのは,1414年のコンスタンツ公会議の記述です。当時分裂していた教会を再統一するための会議がここで開催されました。現在でもこの会議で使われた建物が残されていて,中に入ることができます(現在はレストランやホールとして使われています)。

コンスタンツには大司教が置かれており,この地域における宗教的な中心都市でもありました。しかし宗教改革の際,コンスタンツは一旦はプロテスタント側に立ち,大司教はボーデン湖の対岸のメアスブルク(Meersburg)に一旦避難します。その後コンスタンツは再びカトリックの都市となり,大司教も戻ってきました。しかしその後大司教はフライブルク(Freiburg)に移ってしまったため,宗教都市としてのコンスタンツの重要性は低下してしまいました。

コンスタンツは第二次大戦の前,ナチスドイツが政権を握るころまでは,この地域のドイツ領内の中心地としてだけではなく,スイス側の地域の中心地としても栄えていました。しかしナチスドイツのユダヤ人に対する弾圧政策が進行し,ユダヤ人難民がスイスに流れ込むようになる頃から,ドイツ・スイス間の自由な往来は制限されるようになりました。第二次大戦後半にはドイツ各地が連合国の空爆によって大きな被害を受けますが,コンスタンツはスイス領と見分けが付きにくく,また灯火管制などを行った結果,空爆による被害を逃れました。そのためコンスタンツでは現在でも(再建ではない)古い建物がたくさん旧市街地に見られます。

コンスタンツの現在

コンスタンツにいて一番驚かされるのは,治安の良さです。海外にいるという感覚がなくなってしまうほどに安全な印象があります。またドイツの他の都市ではあらゆるところに見られる落書きが,コンスタンツについてはほとんど見られない(全く見られないわけではありません)ことも特色です。この治安の良さの背景には,物価の高さがあります。コンスタンツの物価はドイツではトップクラスだと言われています。それでも隣町のクロイツリンゲン(スイス)よりは安いので,週末になるとスイスの人々が国境を超えてコンスタンツに買い物に来ています。またコンスタンツには(高級なものも含めて)老人ホームが多く,年金生活者の比率が高いとも言われます。

現在のコンスタンツを支えるもう一つの要素が大学です。コンスタンツ大学は1960年代に創設された比較的新しい大学であり,ドイツでは珍しいキャンパス大学(キャンパスの中にほぼ全ての建物が集約されている大学)です。コンスタンツ大学の学生の多くはコンスタンツ市内に居住しています。コンスタンツはそもそも都市規模があまり大きくなく,市電も地下鉄もありません。そのため全ての交通アクセスがバスになります。大学へのアクセスも例外ではないのですが,そのため特に学期が始まってからの時期はバスはひどい混雑になります。

コンスタンツはファンタスティック街道の終点とされますが,日本からの観光客はほとんどハイデルベルク(Heidelberg)とロマンチック街道に集中するため,日本人観光客の姿を見ることはほとんどありません。しかしコンスタンツはドイツ及びヨーロッパ内では有名な主要観光地の一つであり,夏の時期になると観光客で旧市街地やボーデン湖沿岸は溢れます。冬はボーデン湖のおかげで比較的寒くないと言われますが,それでも観光客はほとんどいなくなってしまいます。

かつて交易都市・宗教都市として栄えたコンスタンツは,今日ではそうした役割をほとんど失ってしまっているように見えます。しかし逆にそれが街に静けさとゆったりとした雰囲気をもたらし,訪れる人や住む人に大きな魅力を与えているように思われます。

    

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