[11前] 行政法Ⅱ(行政救済論)

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お知らせ

シラバス

基本情報

履修条件

行政法I(行政過程論)を受講したこと(単位取得の有無は問いません)。 この授業の理解を深める上では,憲法I(憲法総論・統治機構論),憲法II(人権論),民法II(債権各論とくに不法行為法),民事訴訟法I・IIを受講したか,並行して受講することが望ましいです。

授業の目的

私たちの日常生活を取り巻く無数とも思える行政法規の共通要素を取り出して体系化したものが行政法学(一般行政法)の対象です。本学では行政作用法総論・行政組織法を行政法Iで取り扱うのに続き,行政法IIで行政救済法を学習します。

ある社会問題が発生したときにそれに対応するための法制度を設計する技術を学ぶのが行政法Iの目的であるのに対し,行政法IIでは,違法・不当な行政活動により被害を受けた(受けそうな)私人(市民・企業)がいかなる救済手段を使ってその被害を除去(予防)するかを学びます。具体的には行政不服審査・行政事件訴訟(以上をまとめて「行政争訟」と呼びます)・国家賠償・損失補償(以上をまとめて「国家補償」と呼びます)の4つの分野を主として扱います。

この授業の目的は次の3点あります。

第1は,行政が関与する紛争における争い方のルールを知ることです。違法・不当な行政活動によって被害を受けた私人の立場,自ら適法と信じる行政上の任務遂行をした公務員の立場,法的紛争を予防するための制度設計を考える立場のいずれに立つとしても,行政が関与する紛争の現状と,その解決のための法的ルールを知ることは不可欠の前提です。また,それらを単に羅列的に理解・暗記していくのではなく,それらを通底する基本的な考え方についても紹介・検討していきたいと思います。

第2は,公共紛争解決をめぐる最新の動向を知ることです。わが国においては長く,行政救済の機能不全が続いてきました。これに対して2004年の行政事件訴訟法改正では,行政訴訟を使いやすくするためのさまざまな改革がなされました。また現在,行政不服審査法改正の検討作業が行われています。このような立法による改革と並び,判例法の展開による行政救済法の見直しも進みつつあります。公共紛争はさらに,行政訴訟以外の手段(民事訴訟・刑事訴訟・国際法的な手段など)でも争われることがあります。この授業では公共紛争処理を広く捉えてその現状を分析・検討することにしたいと思います。

第3は,公法学(憲法学・行政法学)で学んだ知識を定着させ,より実践的に利用できる形に変換することです。何か紛争が起きたときに,当事者の利害を裁判所において法的に主張可能な形に構成する能力(=事例問題を解く力)は,法律学を学ぶ者が是非とも身につけなければならないものです。国・自治体に代表される公的セクターを紛争関係者に巻き込んだ場合にはどのような訴訟の形式を選択しなければならないのか,当事者の利害を法的に主張するにはどのような知識をどう使わなければならないのか,紛争はどのような形で最終的に解決されるのか,といったことをさまざまな事例(判例・裁判例)を通して考える中で,憲法学や行政過程論で学んだ知識をより深く理解する契機とし,また事例問題を解く力を高めてほしいと思います。

授業の概要

授業では以下のような内容をとりあげます。より詳細な計画は,第1回授業でお示しします。

ガイダンス─行政救済論の概要(1回)

行政救済論の大まかな構造を説明し,また行政過程論で学んだ知識のうち行政救済論でとくに必要となる部分について簡単に復習をします。行政過程論の知識の定着が不十分な方は,初回授業時には行政過程論の教科書(大橋洋一・行政法Iなど)を持ってきてください。

I. 行政上の不服申立(4回)

違法・不当な行政活動によって被害を受けた私人が行政に対してその是正を求める制度を行政上の不服申立と呼び,一般法として行政不服審査法があります。行政不服審査制度の基本的なしくみと,法改正が検討されている内容を中心に説明します。

II. 行政訴訟(15回)

私人が裁判所に対して違法な行政活動の是正を求めるのが行政訴訟であり,民事訴訟法の特別法としての行政事件訴訟法が定めている内容を理解するのがその中心となります。条文ごとに法的ルールの意味を押さえていくことも重要ですが,この授業ではなぜそのような法的ルールが要請されているのかという点についても,憲法や民事訴訟法で説かれる内容を踏まえて検討したいと思います。

III. 国家賠償(5回)

違法な行政活動によって生じた損害を金銭填補してもらうのが国家賠償です。民法の不法行為法の特別法として国家賠償法が制定されていますが,不法行為法と同じく判例法の役割が極めて大きい部分です。授業では,国家賠償法の個別の要件規定をめぐって判例法がどのような立場をとってきたのかを中心に取り扱います。

IV. 損失補償(2回)

適法な行政活動によって生じた損害を金銭填補してもらうのが損失補償です。伝統的には土地収用をめぐる問題が主要な議論対象となってきましたが,この授業ではそれに加え,政策目的を達成するために一旦は与えられていた財産権類似の行政上の権利を失わせる際の損失補償の問題についても説明します。また,国家賠償と損失補償の中間領域における救済制度についても検討します。

まとめ(2回)

これまでの学習を踏まえ,事例問題を解く力を確認します。この授業では期末試験を授業期間中に実施します。その上で最終回に,期末試験の解説と類題の演習を行う機会を設けたいと思います。

授業計画

[ ]は該当する教科書の頁(目安)です。なお,4/20・2限(3年生健康診断)及び4/22・5/27・6/24・7/22は休講とします。

ガイダンス

I. 行政上の不服申立

II. 行政訴訟

III. 国家賠償

IV. 損失補償

まとめ

授業の進め方

講義形式をとりますが,参加者との対話を重視し,双方向の授業となるようにしたいと思います。人数による制約があるとはいえ,なるべく参加者に発言を求めることにします。授業は主としてレジュメに従って進行し,また板書も用います。

この授業は,原則として2回を1つのユニットとして進行します(構成上の理由から1回で1つの内容を説明する回もあります)。各項目は(A)と(B)に分かれており,(A)の回では基本的で絶対に理解しておかなければならない内容を説明します。(B)の回では(A)の内容を復習した上でより発展的・応用的で高度な内容を取り扱います。この進行に合わせて,次のような予習・復習を行うと,授業の内容を理解しやすくなると思います。予習の段階では,教科書の該当部分をまず読んで下さい。そして,予習課題に対して,教科書などを読んで自分なりの解答を考えて書いてきてください(この部分につき,授業中に指名して読み上げてもらうこともあります)。(A)の回の予習課題はその回の理解のための前提知識として必要な内容の確認,(B)の回の予習課題はその回で取り扱われる重要な判例の内容の確認が中心です。復習の段階では,教科書・判例集の該当部分をもう一度読み直し,各回のレジュメ末尾にある復習課題を解いてください(指名してこの部分の答え合わせをすることから次回は始まります)。(A)の回の復習課題はその回の重要用語を穴埋め方式・正誤問題で確認すること,(B)の回の復習課題は事例問題・説明問題が中心となります。内容の大きな区切り(原則として各部の終わり)では演習課題を配布しますので,それまでの内容の理解の確認に利用してください。

教科書及び参考図書

教科書として 塩野宏『行政法II(行政救済法)[第5版]』(有斐閣・2010年)
判例集として 小早川光郎他編『行政判例百選II [第5版]』(有斐閣・2006年)
を用います。いずれも授業の際に使用しますので必ず購入してください。(なお,2010年度の行政法Iで使用した 大橋洋一他・行政法判例集 を利用する必要がある場合があります)。加えて,六法は毎回使いますので必ず持ってきてください(科目の性格上,中型六法をお勧めします)。

参考図書として例えば以下のものがあります(詳しくは第1回授業で説明します)。
芝池義一『行政救済法講義[第3版]』(有斐閣・2006年)
宇賀克也『行政法概説II 行政救済法[第3版]』(有斐閣・2011年)
橋本博之『行政判例ノート』(弘文堂・2011年)

試験・成績評価等

授業期間中に行う期末試験(100点満点)で評価します。この科目は事後的救済を一切行いません。

※期末試験(7/20・2限・大講義室)の受験の際には学生証が必要です。学部統一の定期試験に対する追試験ルールは適用がありません(シラバスの以下の記述を確認して下さい)。期末試験の遅刻が10分を超えても受験は可能です。

なお,期末試験に加えて,小テスト(10点満点)を授業中に3回程度実施します。小テストの合計点と期末試験の成績とを単純に合算して成績評価します(100点を超える場合は100点として扱います)。小テストは加点にしか用いませんので,公欠が認められる場合を除き,何らかの理由により受験できなかったとしても,これらに対する救済措置はありません。

※学生係を通じて公欠届が提出され,それが所定の手続を経て認められた場合には,当該公欠の回に実施された小テストの成績を,公欠者の公欠日を除く回の小テストの平均点を四捨五入した点数(小数第一位を四捨五入)とみなします(全ての回で公欠であった場合は0点となります)。

※この科目は定期試験期間中の期末試験を行いません。そのため定期試験の際に行われる方式での追試験を実施しません。その代替として,定期試験の追試験が認められるのと同等の事情がある場合,試験実施後3日以内に担当教員にその旨をメールで連絡し,実施後1週間以内にその事情を証明する書類を提出し,担当教員が定期試験における追試験実施に相当する事情があると認めれば,当該受験者の小テストの平均点×7(小数第一位を四捨五入)を期末試験の点数とみなします。この点数と小テストの合計点を合算して成績評価します。

その他

質問等は授業終了後のほか,メールでも受け付けます。オフィスアワーは設定していませんが,研究室在室中はいつでも質問等を受け付けます(お互いの時間を有効活用するためにも,予めメール等でアポイントメントをとることをお勧めします)。 

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