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2023年度第5回GNL科研研究会

科学研究費基盤研究A「グローバル法・国家法・ローカル法秩序の多層的構造とその調整法理の分析」(GNL)の2023年度第5回研究会[総括シンポジウム](研究代表者主催)を,2024年3月2日(土)に京都大学大学院法学研究科・オンラインで開催し,分担研究者等27名が参加しました。

○「Digitale Verwaltung in Deutschland(ドイツにおけるデジタル行政)」 (Timo Rademacher, Universität Hannover)

デジタル化の推進とドイツ基本法の「混合行政の禁止」との関係や,行政の統一性とデジタル化との関係,さらにデジタル化と現場(ローカル)との関係などのさまざまな観点から,ドイツのデジタル化及びその進行状況と,これに対応する法理論の現状が紹介されました。質疑では,デジタル化と費用負担の問題や,連邦制・地方自治と行政のデジタル化との緊張関係,デジタルディバイドへの対応策,行政サービスと地方自治との関係などが扱われました。

○「The Guarantee of Local Self-government in Globalization(グローバル化の中の地方自治の保障)」(Hans Christian Röhl, Universität Konstanz)

グローバル化と国家との関係や,ドイツにおける地方自治保障の日本と比較した特色を紹介した後に,グローバル化が地方自治に与える影響と地方自治を保障する州の立法者の役割や地方自治による民主的な地域統合の可能性,あるいは地方自治とEU,標準化,行政ネットワーク,ガバナンスとの関係が幅広く論じられました。質疑では,地方自治と民主政の関係,連邦制との関係,地方自治体の環境政策と国家・グローバルな政策の関係などが扱われました。

公共部門法の組織と手続

公共部門法の組織と手続』と題する論文集を,東京大学出版会より出版させていただきました。

本書は,国家がこれまで担ってきた作用が私人に委ねられたり(複線化),国際機構や自治組織に拡散したり(多層化)する現状を『多元的システム』の概念で把握した上で,行政法学の変容可能性を主として制度設計論の観点から模索した『公共制度設計の基礎理論』,訴訟の局面に着目した『公共紛争解決の基礎理論』の続編として,行政組織法・行政手続法の分野でこのような見方を採用した場合にどのような理論的変革が要請されるかを検討したものです。また,『自主規制の公法学的研究』(有斐閣・2007年)及び『行政法学と主要参照領域』(東京大学出版会・2015年)と併せ,時代の要請に対応して変容する行政法学の理論状況をさまざまな切り口から描くことを目指しています。

本書『公共部門法の組織と手続』は,第1部「公共部門の多層性」と第2部「公共部門の複線性」の2つの軸から成り立っており,合計20章で構成されています。第1部では,グローバルレベル・国家レベル・ローカルレベルに分けて,多層性がもたらす組織法・手続法的な変容可能性を,総論的考察から各論的分析の順に展開しています。第2部では,グローバル化と同時に進行し,今後の行政法学に極めて大きな波及効果をもたらすことが予想される情報通信技術の発展を主題として取り上げ,その中でも特に法的な議論が多い個人情報保護の問題を接続させています。

本書は,日本証券奨学財団の出版助成を得て刊行されました。また,本書の企画・編集にあたっては,東京大学出版会の山田秀樹さんと晴山秀逸さんに大変お世話になりました。ありがとうございました。


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2023年度第4回GNL科研研究会

科学研究費基盤研究A「グローバル法・国家法・ローカル法秩序の多層的構造とその調整法理の分析」(GNL)の2023年度第4回研究会(グローバル実証チーム主催)を,2024年2月10日(土)に東京大学社会科学研究所・オンラインで開催し,分担研究者等11名が参加しました。

○「Deference as appeasement or: an avoidance technique in international adjudication」(中島啓・東京大学社会科学研究所准教授)

国際裁判所が国内の機関の政策判断に対して敬譲(Deference)することの意味について,特に判断の立論上の意味を持たない言及が有する機能を分析する報告でした。その後の質疑応答では,敬譲の理論的位置付け(記述的な議論なのか規範的な議論なのか),コミティとの相違,敬譲否定論との帰結の違いなど,さまざまな観点から活発な議論が行われました。

2023年度第3回GNL科研研究会

科学研究費基盤研究A「グローバル法・国家法・ローカル法秩序の多層的構造とその調整法理の分析」(GNL)の2023年度第3回研究会(ローカル実証チーム主催)を,2024年1月27日(土)にオンラインで開催し,分担研究者等14名が参加しました。

○「環境法における正統化の問題」(谷遼大・獨協大学法学部地域総合研究所特任助手)

ドイツにおける民主政的正統化論の議論をベースに,参加による正統化と行政裁判権の正統化という2つの柱から,環境団体訴訟の許容性に関する法的議論を展開する内容でした。その後の質疑応答では,「参加」と「利益」の関係,ヨーロッパ化のドイツ国内公法学への影響,ドイツの正統化の議論の日本法への応用可能性,環境団体訴訟の制度設計論・規範的な根拠付けの可能性,デジタル化・グローバル化と「参加」の概念等,さまざまな観点から活発な議論が行われました。

2023年度第2回GNL科研研究会

科学研究費基盤研究A「グローバル法・国家法・ローカル法秩序の多層的構造とその調整法理の分析」(GNL)の2023年度第2回研究会(研究代表者主催)を,2023年12月9日(土)・10日(日)にオンラインで開催し,分担研究者等19名が参加しました。

今回の研究会では,本科研のまとめとして出版する予定の研究書に掲載する論文の構想を報告して頂き,意見交換しました。1人30分程度であったものの,多様なテーマや新たな議論が多く提示され,非常に刺激的でした。

2023年度第1回GNL科研研究会

科学研究費基盤研究A「グローバル法・国家法・ローカル法秩序の多層的構造とその調整法理の分析」(GNL)の2023年度第1回研究会(グローバル基礎理論チーム主催)を,2023年8月5日(土)に同志社大学(オンライン(ZOOM併用))で開催し,分担研究者等11名が参加しました。

○グローバル化された民主的社会における権力分立(高田陽奈子・大阪大学大学院公共政策研究科准教授)
人権条約の構造に着目し,国際法と国内法の関係や,グローバル化された民主的社会における権力分立の議論を展開する極めて興味深い内容の報告でした。質疑では,議論の射程(人権条約に限定的なものか,普遍性がある議論なのか)や権力分立の意味等さまざまな論点が取り扱われました。

2022年度第6回GNL科研研究会

科学研究費基盤研究A「グローバル法・国家法・ローカル法秩序の多層的構造とその調整法理の分析」(GNL)の2022年度第6回研究会(グローバル実証チーム主催)を,2022年10月22日(土)にオンライン(ZOOM)で開催し,分担研究者等11名が参加しました。

○「ビジネスと人権に関する指導原則」の利害関係者への影響(山田美和・日本貿易振興機構アジア経済研究所新領域研究センター長)
ビジネスと人権に関するグローバルトレンドの展開や,それを踏まえた日本国内の動きが詳細に紹介されました。企業の役割や国家の義務の内容や,それがもたらす企業・社会への意味が議論されました。

○ベトナムからの移民労働者に関する法的考察(加藤紫帆・東京都立大学法学部准教授ほか)
ベトナムからの技能実習生問題の現状や,その背景にある国際的・国内的な法制度の問題が包括的に取り上げられました。二国間のMOUの発展を経由せずに日本が移民労働者を受け入れてきた事情や,送出国における経済構造が紹介され,ビジネスと人権をめぐる日本社会でもっとも知られた問題の構造的課題が明確化されました。

2022年度第5回GNL科研研究会

科学研究費基盤研究A「グローバル法・国家法・ローカル法秩序の多層的構造とその調整法理の分析」(GNL)の2022年度第5回研究会(グローバル実証チーム主催)を,2022年9月17日(土)にオンライン(ZOOM)で開催し,分担研究者等15名が参加しました。

○「グローバル・バリューチェーン」概念とグローバル・ガバナンス(内記香子・名古屋大学大学院環境学研究科教授)
グローバル・バリューチェーンの概念やその研究史を踏まえ,グローバル・ガバナンスの観点からの現状と課題が示されました。私法・国際的ソフトロー・国家の規制法の3つの層から構成されるグローバル・バリューチェーン法の状況や,それぞれの利点・問題点が提示され,複数の動因から法生成が進む状況が明確化されました。

○国境を超える企業活動と規範のネットワーク(清水真希子・大阪大学大学院法学研究科教授)
グローバル・バリューチェーンに対する法的アプローチとして,会社法の問題関心からの分析が示されました。デューディリジェンスやESG投資(開示)の現状やその背景が示されました。投資家からみた企業という見方と,人権等の普遍的価値の論理から見た企業という見方は,この分野の議論を整序するのに有益な切り口のように思われました。

2022年度第4回GNL科研研究会

科学研究費基盤研究A「グローバル法・国家法・ローカル法秩序の多層的構造とその調整法理の分析」(GNL)の2022年度第4回研究会(研究代表者主催)を,2022年9月10日(土)にオンライン(ZOOM)で開催し,分担研究者等16名が参加しました。

○海洋ガバナンスの法的課題と展望(西本健太郎・東北大学大学院法学研究科教授)
国際海洋法に関する法的規律の現状が取り上げられ,海洋全体が管理の対象として位置づけられつつあること,事項別規制から生態系アプローチへの転換がなされようとしていることが示されました。質疑では,国家管轄権が及ぶ海域と及ばない海域とで峻別する法制度からの脱却の可能性や,陸域における環境保護の統合的アプローチと海洋法における生態系アプローチの類似点・相違点等が取り上げられました。

2022年度第3回GNL科研研究会

科学研究費基盤研究A「グローバル法・国家法・ローカル法秩序の多層的構造とその調整法理の分析」(GNL)の2022年度第3回研究会(グローバル実証チーム主催)を,2022年8月6日(土)にオンライン(ZOOM)で開催し,分担研究者等15名が参加しました。

○米国仲裁機関によるクラス仲裁手続について(会沢恒・北海道大学大学院法学研究科教授)
クラスアクションに相当する集合的な仲裁手続であるクラス仲裁について,米国における発展と現状が紹介されました。クラス仲裁は現時点では,裁判所の消極姿勢にも影響されて,それほど使われているとは言えないようですが,個別仲裁を束ねるやり方が広がっているため,復権するかのうせいがあるとのことでした。質疑では,クラスアクションがあるのにクラス仲裁が導入された理由について,あるいはクラス仲裁が公開を求めていることの趣旨について議論が交わされました。

○グローバル企業の社会的責任と投資仲裁(伊藤一頼・東京大学大学院法学政治学研究科)
投資家保護のために発展してきた投資仲裁が,近時,企業の社会的責任に関する考え方を背景に,受入国側からの反訴や投資家の過失に着目した過失相殺によって,投資家の責任を追及するツールになりつつある状況が紹介されました。投資仲裁の水平化がよいのか,それとも国家と投資家の不対等構造を前提とした投資仲裁の機能を維持すべきかが議論されました。

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