大脇成昭 九州大学教授

paco Home>授業関連>演習科目一覧(九州大学)>大脇成昭 九州大学教授

ゼミ生から見た大脇先生

(27期ゼミ生)

大脇先生の研究業績

大脇成昭先生は,1996年に九州大学法学部をご卒業後,同大学大学院法学研究科修士課程に進みました(指導教官は大橋洋一教授)。その後,1998年に修士課程を修了して博士後期課程に進学され,同時に日本学術振興会特別研究員(DC1)に採用されました。単位取得退学後の2001年4月に熊本大学法学部講師に採用され,2003年度に助教授に昇進され(2007年度からは職名変更で准教授),2018年4月に九州大学大学院法学研究院准教授に着任,2019年4月に教授に昇任されました。

大脇先生のご研究は民営化論からスタートし,財政法全般へと拡張し,さらに災害法制にも及んでいます。修士論文の「民営化法理の類型論的考察」は,ドイツ法の知見を用いて民営化をいくつかの類型に分け,それぞれに対する規範的な要請を検討・整理した業績で,我が国の民営化・公私協働に関する議論で必ず参照される論文となっています。民営化論は公法・私法の相互関係という行政法の古典的な論点と密接に関係すると同時に,国家の財政問題という現実的な課題ともアクチュアルな関係を持ちます。博士論文ではその財政法に関する分析が行われ,その一部である「財政法制の政策誘導機能(序説)」や「財政法の外部効果論」では,ドイツ法との比較法研究を背景に,つかみどころのない財政法学の分析の切り口として,外部効果や政策誘導の問題を取り上げています。さらに,「財政情報の公開」では,これまで十分な検討がなされてこなかった財政情報の公開の公法学的な意義が,ドイツ法・EU法との比較法研究を通じて検討されています。

こうした研究を背景に,近時では災害法制に関するご業績を積極的に発表しています。災害法制は,一方では財政難という考慮を超えて公金が投入されなければならない局面であり,他方では行政のリソースだけでは対処が困難で,民間の団体等との協力関係を発展させる必要がある分野です。その意味では,民営化論と財政法の両者の延長線上に存在する法領域でもあります。日本公法学会の部会報告である「民間組織等による公共サービスの提供」では,こうした問題関心が明確に示され,大規模災害時における民間組織の役割とその法的な規律の必要性が議論されています。また,「ボランティアによる災害時の緊急対応活動と法的規律」では,これと対になる問題としてボランティア活動の役割を取り上げ,どのような規律が考えられるかが検討されています。ご自身も被災された熊本地震の経験から,「復興期における住宅再建支援策――公費投入の是非を中心に」,「災害に対峙する法律学の貢献可能性」をはじめとするいくつかのご論攷を執筆されており,これらの中で,災害法制全般に射程を広げた議論が展開されています。さらに,「復興期における住宅再建支援策」では住宅再建と公費投入との緊張関係が検討され,従来法的な根拠が明確とは言えなかった公費投入禁止原則について,その問題点や今後の方向性が展望されています。

(村上裕章=原田大樹)

著作物の紹介

大脇先生がこれまでお書きになった著作を以下に掲載します。先生の研究に興味をお持ちの方は,是非一度手にとってみてください。

著書

  • 大脇成昭「財政情報の公開」碓井光明他編・西埜章先生=中川義朗先生=海老澤俊郎先生喜寿記念『行政手続・行政救済法の展開』(信山社・2019年)133-152頁 
  • 大脇成昭「自治体財政論」駒林良則=佐伯彰洋編著『地方自治法入門』(成文堂・2016年)189-217頁
  • 大脇成昭「ボランティアによる災害時の緊急対応活動と法的規律」鈴木庸夫編『大規模震災と行政活動』(日本評論社・2015年)141-179頁
  • 大脇成昭「政策実施手続」大橋洋一編著『政策実施』(ミネルヴァ書房・2010年)99-120頁
  • 大脇成昭「政策と予算」大橋洋一編著『政策実施』(ミネルヴァ書房・2010年)121-142頁

論文

  • 大脇成昭「東日本大震災(1)」法学教室463号(2019年)別冊50-51頁
  • 大脇成昭「復興期における住宅再建支援策」法学セミナー62巻7号(2017年)47-53頁
  • 大脇成昭「災害に対峙する法律学の貢献可能性」法学セミナー62巻6号(2017年)30-31頁
  • 大脇成昭「大規模災害時に生じる行政活動の『空白』」法学教室433号(2016年)59-67頁
  • 大脇成昭「民間組織等による公共サービスの提供」公法研究76号(2014年)101-111頁
  • 大脇成昭「自治体の連携」法学教室372号(2011年)16-17頁
  • 大脇成昭「自治体委託業務における事故発生時の賠償責任への対応」自治体法務研究19号(2009年)12-17頁
  • 大脇成昭「『財政』と『予算』の概念に関する一考察」熊本法学(熊本大学)113号(2008年)69-96頁
  • 大脇成昭「政策実現の財政法的手法に関する一考察」熊本法学(熊本大学)111号(2007年)1-42頁
  • 大脇成昭「財政法の外部効果論」熊本法学(熊本大学)103号(2003年)1-61頁
  • 大脇成昭「財政法制の政策誘導機能(序説)」九大法学(九州大学大学院)79号(1999年)85-133頁
  • 大脇成昭「民営化法理の類型論的考察」法政研究(九州大学)66巻1号(1999年)285-335頁

判例評釈

  • 大脇成昭「織田が浜事件差戻後高裁判決」環境法判例百選(第3版)(2018年)154−155頁
  • 大脇成昭「指名競争入札」行政判例百選Ⅰ(第7版)(2017年) 190-191頁
  • 大脇成昭「土地開発公社の取得した土地を簿価に基づいて買い取る内容の売買契約の可否」平成28年度重要判例解説(2017年)38-40頁
  • 大脇成昭「契約に関する議会の議決(2)」地方自治判例百選(第4版)(2013年)95頁
  • 大脇成昭「指名競争入札」行政判例百選(第6版)(2012年)200−201頁
  • 大脇成昭「公共施設の民間移管先公募における選考結果の通知と処分性」法学教室378号別冊判例セレクト2011Ⅱ(2012年)6頁
  • 大脇成昭「織田が浜事件差戻後高裁判決」環境法判例百選(第2版)(2011年)190−191頁
  • 大脇成昭「財政法判例研究 要綱に基づく公共施設整備負担金の徴収を怠ることの違法性[東京地裁平成19.3.28判決]」会計と監査59巻7号(2008年)28-33頁
  • 大脇成昭「指名競争入札による村外業者排除の適否」平成18年度重要判例解説(2007年)53-54頁
  • 大脇成昭「随意契約制限違反と契約の効力」行政判例百選Ⅰ(第5版)(2006年) 196-197頁

翻訳

  • Thomas Groß(大脇成昭訳)「ドイツの大学における自治行政権」法政研究(九州大学)73巻1号(2006年)85-105頁
  • カール=ハインツ=ラデーア(ドイツ行政法理論研究会訳)「行政行為の将来」法政研究(九州大学)66巻3号(1999年)287-313頁

その他

  • 法学教室編集室編『問題演習基本七法』(有斐閣・2018年)27-52頁
  • 大脇成昭「演習 行政法」法学教室439号(2017年)~450号(2018年)
  • 熊本大学法学部・武夫原会共催シンポジウム「熊本地震が提起する法的・政策的課題」熊本法学140号(2017年)131-161頁
  • 大脇成昭他「座談会 生活再建に直面した被災者にどのような手を差し伸べるのか(上)(下)」法学セミナー62巻11号(2017年)64-75頁,12号58-65頁
  • 大脇成昭「要綱に基づく公共施設整備負担金(協力金)の徴収を怠ることの違法性」日本財政法学会編『地方財務判例質疑応答集』(ぎょうせい・2017年)2099-2113頁
  • 大脇成昭「条文を学ぶ」法学教室367号(2011年)21-26頁

(原田大樹)

研究関連

授業関連

HDG

Links

Weblog

follow us in feedly follow us in feedly