paco Home>授業関連>開講科目一覧(九州大学等)>九州大学法学部生のための情報収集ガイド
九州大学法学部は伝統的にゼミでの少人数教育を重視しています。学部1年生を対象とするコアセミナー(法政基礎演習Ⅰ),学部2年生を対象とする法政基礎演習Ⅱ,そして学部3・4年生を対象とする法律演習・政治演習が開講されています。これらを通じて自ら問題を発見し,それに関する情報を収集し,加工して,自らの見解を組み立てる能力を養成することが目標とされているのです。ここではその中でも,情報収集の方法について紹介します。
情報収集の手順
例えば「年金のシステムは税方式がよいのか,保険料方式がよいのか」をテーマにゼミ報告をすることになったとします。高校までの調べ物であれば,図書館にいきなり行って,年金関係の本が並んでいる場所をさがし,そこで本を立ち読みして面白そうなものだけ借りていくことでおそらくなんとかなったでしょう。しかし,大学のゼミにおいては,情報を網羅的に探す技術がまず第一に必要となります(さらにレベルが上がれば,網羅的にさがした情報の中で何に重点をおいて読むべきかを判断する能力が求められることになりますが,ここではそのことには触れません)。情報を網羅的に探すことになると,(残念ながら)九州大学には入っていない資料や,入っていたとしても中央図書館・文系合同図書室にない資料が出てきます。そこで,情報を収集する手順は次のようになります。
①テーマに関係する資料のリストを作る
②資料が所蔵されている場所を特定する
③資料を入手する
それぞれの段階で利用できるツールは異なります。また以上の手順は主として論文・著書を集める場合であり,法令・判例を集める場合にはまた少し違った手法がとられます。これらについては最後に触れることにします。
テーマに関係する資料のリストを作る
①入門書・基本書を読む
報告テーマについてある程度の土地勘がある場合にはこのステップは必要ありません。しかし,はじめてそのテーマについて調べる場合には,いきなり②の検索ツールを使うことは不可能です。なぜなら資料の検索の際には検索語が必要で,検索語を豊富に知っていなければ網羅的なリストはできないからです。
情報収集のスタートは,当該テーマに関する入門書・基本書を読むことです。多くのゼミでは入門書・基本書はあらかじめ教科書という形で与えられているでしょう。もしそうでない場合には,先生や先輩に聞いてみるとよいでしょう。独力で調べる場合には,直接本屋さんや公立図書館(大学図書館は入門書が少ないことが多いので,この段階では公立図書館の利用を勧めます)に行ってもよいですし,次に紹介するweb上の検索を利用してもよいでしょう。
- Books.or.jp … 国内で刊行されている本のうち現在入手可能なものはすべて検索できます。
- Amazon.co.jp … 代表的なweb上の本屋さんです。比較的早く入手できます。
- 福岡県内公立図書館横断検索 … 県内の公立図書館に入っている蔵書の検索が可能です。福岡県立図書館・福岡市総合図書館・北九州市立図書館のそれぞれの検索サービスもあります。
②検索ツールを利用する
①のステップである程度検索語がわかってきたら,次に検索ツールを利用して文献を探しましょう。その際に重要なことは(1)「著書」を探すときと「雑誌掲載論文」を探すときでは利用するツールがちがうことと(2)検索ツールにはコンピュータベースのものと,ペーパーベース(紙媒体)のものとがあることの2つです。
著書を探す
著書を探すには,後述のOPACを利用することも可能です。ただOPACの場合には(最近はさほどでもなくなったとはいえ)かなり正確に書名を入力しないとヒットしないことがしばしばあります。ある程度ラフな検索語でもヒットするものとして次のようなものがあります。
- Webcat Plus … 連想検索機能があるので,ひとつの検索語で関連書籍をリストアップすることができます。
雑誌掲載論文を探す
OPACなどの図書館蔵書検索では雑誌名を入力して検索することはできる一方,その雑誌に掲載されている個別の論文をヒットさせることは通常できません。そのため,雑誌掲載論文は以下のような検索ツールを利用することになります。
- CiNii … 分野を問わず雑誌掲載論文を検索できる強力なデータベースです。基本機能以外は学内LANからのみ利用可能です(ただし,どこでもきゅうとによる外部アクセス可)。(Geniiで串刺し検索も可能)
- 国立国会図書館雑誌記事検索 … こちらはインターネット接続されている全てのPCから検索可能です。上記CiNiiはこのデータベースも含んでいます。
- 雑誌記事索引集成データベース ... 明治初期から現在まで,地方誌も含めた雑誌記事索引のデータベースで,CiNiiとの連携機能もあります。同時アクセス数は1です。
紙媒体の検索ツールを使う
より網羅性を高めるために,現在でも紙媒体の検索ツールは重要な役割を果たします。代表的なものとして次の3つがあります。
- 法律時報文献月報 … 月刊の雑誌『法律時報』の後ろの方に,分野別に法律学の文献リストが掲載されています。毎年12月の法律時報は学界回顧と題して,その年に出た研究業績を紹介する特集になっています。
- 法律判例文献情報 … こちらは,その名の通り法律学関連の文献や判例を集めた雑誌です。現在はロースクールの図書館にしか冊子体は入っていません。D1-Law.com法律情報総合データベースでも検索できます(同時アクセス数は1です)。
- 公法研究学界展望 … 年に1回発行される雑誌『公法研究』は日本公法学会における学会報告原稿(前年分)が中心ですが,巻末に「憲法」「行政法」の2つの分野に分けて,その年に出された研究業績を紹介する部分があります。近年は網羅主義をやめ,文献の数を絞って詳細に紹介するスタイルに変わっています。この分野での文献を探すには最も強力な検索ツールと言えるでしょう。
資料が所蔵されている場所を特定する
集めるべき文献を決めたら,次にそれがどこに所蔵されているのか確認しましょう。実際の作業の上では,先ほど紹介した検索とほぼ同時にすることになりますが,ここでは説明の便宜上,先ほどのステップとは分けて説明します。
九州大学内部の所蔵状況を調べる
九州大学の図書館は現在のところかなり分散的です。箱崎地区にある中央図書館が最大規模ですが,各地区ごとに図書館があり,さらに学部は別の図書館を持っています。そこで九州大学のどこの図書館に所蔵されているかを調査することがまず必要になります。その際には
を利用します。各図書館の利用方法は次のステップで簡単に説明します。
九州大学に所蔵がないとき
さきほどのOPAC検索でヒットしなくても,あきらめるのはまだ早いです。九州大学に所蔵がなくても公立図書館や他の大学図書館に所蔵がある場合が多いからです(最悪の場合には海外の図書館という選択肢もありますが,学部ゼミではそのような事態はおそらく発生しないでしょうから,ここでの説明は割愛します)。その際には次のようなツールを利用します。
- CiNii Books … 全国の大学図書館等の所蔵状況を調べることができます。ここでヒットすれば,次に説明する相互利用を使って文献を入手できます。ほぼ全ての国公私立大学をカバーしています。CiNii Booksのスタートにより,従来のWebcatはサービスを終了しています。
資料を入手する
九州大学中央図書館を利用する
九州大学中央図書館は箱崎地区の農学部エリアにあります。入館時には図書館カード(学生証)が必要です。入口は2階になっていて,この階にはカウンター・相互利用窓口・参考図書・新着雑誌などがあります。図書は基本的には開架式で,新しめの本は3階,古い本は地階書庫にあります。雑誌のバックナンバーは中2階書庫にあり,和文雑誌・欧文雑誌ともにアルファベット順に並んでいます。学部図書のうち「理学部」「農学部」は中央図書館が管理しており,書庫の各コーナーにいけばおいてあることが多いです(研究室所蔵のものは別)。「法学部」「経済学部」の図書でも中央図書館移設図書は3階開架におかれています。
学部図書室を利用する
法律学関係の図書や雑誌は,中央図書館にではなく文系合同図書室(旧:法学部図書室)に所蔵されていることが多いです。法学部関連図書は文系合同図書室第1窓口のカウンターの奥にある書庫と他の部屋に分散している書庫(プレハブ書庫・北門書庫・107書庫・追録資料室)とに分かれており,他の部屋の書庫に入るには窓口で鍵を借りる必要があります。カウンター奥にある書庫は5層になっており,学部生がよく使うのは1・2層の書籍と1層奥の雑誌バックナンバーです。この他,よく利用される雑誌(判例関係など)はカウンター前の学生閲覧室におかれていることがあります。法学部関連の新刊雑誌は他の文系学部と同じく文系合同図書室2階にまとめて配架されています。
理系の学部図書室のうち理学部・農学部はすでに紹介したように中央図書館の一部に組み込まれています。工学系図書室は,建築図書室を除き伊都地区の伊都図書館に移管されています。建築図書室は事前の所蔵確認なしでも利用できます。医学部系の図書館は医学図書館にあり,利用方法は中央図書館とほぼ同じです。芸工図書館は大橋地区にあり,利用方法は中央図書館とほぼ同じです。
他の図書館にある書籍を借りる場合には,OPACから取り寄せを申し込むことができます。しかし,雑誌と研究室所蔵の書籍は対象外のため,利用するには直接出向く必要があります。
相互利用を利用する
他大学の図書館にある本を利用する(相互利用)方法には次の3通りあります。
①直接出向いて利用する
早く文献を入手したい,安く文献コピーを手に入れたいという場合には直接出向くのが一番です。九州地区の国公私立大学図書館は学生証があれば紹介状なしで利用できます。また国公立大学図書館は大学院生以上であれば身分証明書(学生証)で利用可能です。逆に言えば,学部生の場合は九州地区の大学以外の大学図書館を利用しようとすると紹介状が必要になります。紹介状は中央図書館2階の相互利用掛で発行してもらえます。
②複写を依頼する
雑誌論文や範囲の分かっている書籍掲載論文の場合には複写を依頼することができます。複写の依頼は相互利用カウンターで用紙に記入するか,my libraryサービスによるネットからの申し込みでできます。複写を依頼する場合には次の点に注意しましょう。
- 複写を依頼してから実際に手にはいるまでは最短で1週間,長いときは1ヶ月かかります。ゼミ報告や論文の締切とのかねあいを十分考えて申し込みましょう。
- 複写の費用は大学によって違っていますが,高い場合には1枚40円程度+送料が請求されるため,高額になることはしばしばあります。またとくに私立大学の場合には銀行振り込みが指定されることがあり,この場合に別の銀行から振り込むと手数料の方が高くなることもあります。支払は通常窓口での現金払いですが,銀行振り込み・郵便局振り込みとなることもあります。どの大学でコピーしてもらえるかは利用者側から指定することはできません。
- 著作権法の範囲内での複写のみ受け容れられます(当たり前ですが…)。余り知られていませんが,雑誌の最新号に掲載されている論文はコピーできません。また書籍の場合,総量の1/2を超える量はコピーできません。
③現物貸借を依頼する
書籍の場合には,実際に現物を見てみないと必要な箇所が分からないことがあります。その場合には現物貸借を利用します。申し込み方法は複写依頼と同じです。送料はおおむね1000円前後,借りられる期間は3週間程度ですが,借りる大学によって違ってきます。借りられる期間が極端に短くなることもありますので,大学に行く時期ではないときには頼まない方が無難でしょう。
法令・判例を検索する
法令を検索する
法令を検索するツールとして次のようなものがあります。
- 法令データ提供システム … 総務省が提供する日本最大の法律データベースです。ただ通知(通達)までは(正確には法令ではないので)ヒットしません。
- 現行法令 … こちらは学内LANからのみ利用可能(ただし,どこでもきゅうとによる外部アクセス可)で,同時アクセス数は20です。
紙媒体で検索する場合には,分野別六法を利用します。例えば「環境六法」「国土交通六法」「社会福祉六法」などが出版されており,これを利用すると通知まで調べることができます。
判例を検索する
判例を検索するツールとして次のようなものがあります。
- 最高裁判例集の検索 … 最近の最高裁判例・下級審判決の検索が可能です。
- LEXDB … 判例の網羅的検索が可能です。ただしLLPパスワード保有者以外は学内LANからのみ利用可能で,同時アクセス数は5ですので,利用したらログアウトしてください。LLPのパスワードでログインした場合には,判例評釈等へのリンクへのアクセスが可能になります。
この他,文系合同図書室第一窓口の学生閲覧室のパソコンには判例体系CD-ROM,判例タイムズDVD,労働判例DVD,旬刊商事法務DVD,ジュリストDVDなどがあります。