paco Home>授業関連>演習科目一覧(九州大学)>角松ゼミ第2期(01年度)
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基本情報
- 授業科目名: 法律演習
- 講義題目: 行政法演習
- 開講学期・単位数・時間帯: 通年・4単位・火曜日4限
- 対象学年: 3・4年生
- 担当教員: 角松生史
履修条件
意欲的に参加すること。行政救済論・行政過程論のいずれかを履修(単位取得は問わない)していることが望ましい。
授業の目的
①行政法関係の論文・判例の講読②ゼミでの報告・議論③ゼミ論文の執筆により
(a)社会認識の目を養うこと(b)法的思考様式と法的論理構成に習熟すること(c)調査能力・言語表現能力・論理的思考力を総合的に向上させることを目標とする。
授業の概要
前期は,行政事件訴訟・国家賠償訴訟に関する重要判例で,同時に戦後日本社会の在り方を考える上で重要なもの(未定だが,薬害スモン判決・大阪空港判決・成田新法判決・MKタクシー判決・ニ風谷ダム判決・ハンセン病国家賠償訴訟訴訟・戦後補償関係訴訟などを考えている)をとりあげ,検討する。判例評釈の基本的な作法(綿密な文献調査,判決の論理・思考の分析の上での私見の提示)を身につけつつ,事件史的背景についても同時に知り,議論することを重視する。
後期は,学生が自由に選択したテーマについてのゼミ論文執筆を目標として,数回の報告と議論を通じて練り上げていく。論文テーマは「行政法」にとらわれる必要はない。いわゆる「時事問題」など自分が関心のある問題について調査し,見解をまとめることによって,調査能力・言語表現能力・議論能力を高めることが主たる目標となる。
前期・後期を通じて重視するのは,さまざまな言語のコンテクストを見抜くこと,その上で自分の議論を展開することである。他者の言説のcut&pasteから脱却すること,それが第一の目標となる。
授業の進め方
前期,後期とも参加者の報告・討論を中心としてすすめる。「一日一発言」を基本ポリシーとする。
教科書及び参考図書
別途指定する。
試験・成績評価等
平常点及び報告・ゼミ論を総合的に評価する。
その他
参加人数が適正規模を越えない限り,いわゆるサブゼミ参加も可。但し,報告・ゼミ論等で正規ゼミ生と全く同様の負担を引き受けることが条件である。
ゼミガイダンスパンフレット
活動内容
<平成12年度の活動内容>
平成12年度は参加者が少なかったため、大橋ゼミと合同で活動しました。前期は大橋『行政法(現代行政過程論)』を分担して詳細に検討し、後期はゼミ論集掲載の論文執筆に向け、数回の報告と討論を重ねて練り上げていきました(詳しくは大橋ゼミ案内に譲ります)。 平成13年度は、独立して活動予定です。
<平成13年度の方針・方向性>
前期は、行政事件訴訟・国家賠償訴訟事件の判例を読みます。戦後日本社会のあり方を考えさせる上で重要な判例(たとえばスモン訴訟、大阪空港訴訟、成田新法訴訟、MKタクシー訴訟、戦後補償関係訴訟など)を読み、法的論理構成に習熟すると同時に、社会認識の目を養うことを目指します。 後期は、昨年同様、参加者が自由に選んだテーマでのゼミ論執筆とゼミ論集作成へ向け、数回の報告・討論で練り上げていこうと思っています。
その他
<ゼミ外活動>
コンパ、旅行等、ゼミ生と話し合いの上、適宜行いたいと思っています。
<ゼミ生から一言>
(ゼミ生からではなく教員からですが)
「楽」(=ラク)なゼミにはならないと思いますが、「楽」(=たの)しく活動していきたいです。本に書いてある知識の切り貼りではなく、自分の頭で分析・再構成ができる、自分の言葉で発信していける力を身につけられるように、少しでも手助けができれば、と思っています。「実力」よりもむしろ「意欲」を備えた方々の参加を待っています。
ゼミ活動の概要
前期
- 第1回(4/17)(文責:井上)
○ゼミ活動の進め方についての確認
1回に1判例を取上げ,報告30分・コメント10分・議論50分とする。
原則として報告1週間前にレジュメ提出をする。報告時に追加レジュメも可。
1日1発言!!。レジュメ提出後,角松先生とプレゼミを実施する。
○報告のポイント
事実と意見の区別,後者については,他人の意見と自分の意見を明確に区別することが最重要。
判例については,事実関係・判旨・評釈の3区分を行う。原告・被告・判決・様々な論文・報告者自身の立場を区別。
今回のゼミでは、事件の背景(水俣病であれば,水俣病の全体像をも考察してみる)も視野に入れてみる。資料があれば配布する。
○次回のゼミで扱う「三菱タクシー事件」に関する背景説明 - 第2回(4/24)(文責:角松先生)
○判例評釈の探し方
page505(齊藤正彰先生(北星学園大学)のHPを資料に(Webの丸ごと利用、ゼミ生は真似しないこと!)角松が解説。
○法学部図書館探検
○学生パソコン室でネット検索の実践(...のはずが、この部屋のパソコンが使いにくいことがよくわかりました) - 第3回(5/8)(文責:浜)
今日は三菱タクシー事件についての報告でした。運賃について行政側と会社側の言い分や事件の背景について議論しました。書類不備の申請行政側の態度も問題になりました。 - 第4回(5/15)(文責:平田)
二風谷ダム事件について樋爪さんが報告しましたそれについてのコメントを浜さんがしました。アイヌ民族の方に対する差別の実態から少数民族保護の方法について主に議論しました。 - 第5回(5/22)(文責:野上)
尼崎公害訴訟について大木君の報告でした。民法分野の共同不法行為と因果関係について、疑問が多々飛び出しました。また、コメントの平田さんは抽象的な差止め命令についての疑問点を挙げました。 - 第6回(5/29)(文責:大木)
薬害エイズ訴訟についての野上君の報告でした。コメントの松浦さんとの間で,和解の意義についての議論がなされました。また,樋爪さんによる,二風谷ダムの再報告で,福祉制度についての詳しい報告がありました。 - 第7回(6/5)(担当:井上)
報告未着 - 第8回(6/12)(文責:樋爪)
成田新法訴訟について2つの争点が挙げられ,報告担当の松浦さんは,主に憲法21条1項違反について論じ,コメントの藤井さんは,行政処分の手続的適性と憲法31条との関係について言及していました。また,野上君が薬害エイズ訴訟の再報告の中で,規制権限不行使に関する論理,裁判の比較,審理期間についての説明と私見を述べていました。 - 第9回(6/19)(担当:松浦)
報告未着 - 第10回(6/26)(文責:藤井)
ハンセン病熊本地裁―本件の主要な争点は①厚生大臣のハンセン病政策遂行上の違法及び故意・過失の有無,②国会議員の立法行為の国家賠償法上の違法及び故意・過失の有無についてであった。そして除斥期間の起算日が法廃止時(1996年)になったことについて,実際の加害行為が明確な場合は国は素直に責任を認めるべきだとコメントされた。 - 第11回(7/3)(文責:藤井)
8月に行なうゼミ合宿でディベートをすることになったので,見本としてテレビでJDA春期大会のB部門決勝の模様を見た。(テーマは道州制)とにかく時間が勝負だということがわかった。勝敗結果は見ず,どちらが勝ったかを決め,その理由を考えることが宿題になった。 - ゼミ合宿(8/28-30)福岡県八女郡星野村池の山荘(文責:角松先生)
●ディベート:論題「日本は道州制を導入すべきである」
1日目 野上・松浦(肯定)v井上・大木(否定) 4-1 肯定側
藤井・浜(肯定)v樋爪・平田(否定)2-3 否定側
2日目 井上・大木(肯定)v浜・藤井(否定) 2-3 否定側
樋爪・平田(肯定)v野上・松浦(否定) 2-3 否定側
●ゼミ論テーマブレーンストーミング
井上:市町村合併、公安調査庁外登票問題、安全な学校、災害対応、FMラジオ
樋爪:世界にみる女性の人権、外国人登録証常時携帯、日米地位協定と日米メディア比較
藤井:触法精神障害者の法的処遇、花火警備、道路公団
松浦:カジノ合法化、新古書店等と著作権、リゾートマンション
平田:児童虐待、戦後補償
浜:浮島丸、教科書問題
大木:IT関係(講習推進特例交付金、自治体の情報化、電子政府の是非、ウイルス等からの防衛)
野上:通信傍受法、産廃施設訴訟、諫早湾干拓
後期
- 第12回(10/16) (文責:角松先生)
後期から高田英一先生(マネジメント担当教官)がオブザーバー参加することとなりました。文部科学省等での職務経験を活かし,行政マンの立場からアドバイス,公務員界の実情に照らした進路相談などでのご活躍が期待されます。また,学生の実態を知りたいというのが参加目的の一つですので,コンパなどでは大いに語り明かしましょう。
角松が,「後期ゼミオリエンテーション:ゼミ論執筆に向けて」というタイトルで,論文を書くことの意味,論文としての最低条件,引用と註の使い方,報告ごとに求められる達成水準等について解説しました。 - 第13回(10/23) (文責:角松先生)
報告者1名急病のため,「電子政府の是非を問う」という大木君の報告と樋爪さんのコメントがありました。諸般の事情で,大変早くゼミが終了しました。 - 第14回(10/30) (文責:角松先生)
前回欠席の井上君が「狂牛病」について報告しました。また,パソコンが壊れるというアクシデントにもめげず(^^),浜さん「都市計画と住民参加」,平田さん「児童虐待」の報告がありました。 - 第15回(11/6) (担当:松浦)
報告未着 - 第16回(11/13) (文責:角松先生)
欠席が6人,うち5名は病気という悲惨な事態で,報告者(藤井さん「市町村合併」,松浦さん「エネルギー政策」)と角松の3人のゼミとなりました。みなさん,体調にはくれぐれも気をつけましょう。行政法を学習するよりも,健康「法」を学習する方が優先だったりして。来週から第二回報告です。いろいろとこれまでの宿題がたまっていますので,何時に家に帰れるのか,少々心配です。 - 第17回(11/20) (文責:大木)
先週あった松浦さんの報告に,野上君がコメントしました。「エネルギー政策」における疑問点などが出ました。また「新エネルギー財団」とは何者か,についても話が弾みました。井上先輩が休みだったため,報告は大木君だけでした。報告も第2回目に入り,1回目よりも電子データに重きを置いた報告でした。 - 第18回(11/27) (文責:野上)
今週は浜さん,平田さん,井上さんの報告でしたが,みなさんそれぞれの事情でパソコンの使用が困難な状態であったようです。井上さんの眼病がとても痛々しい今週の角松ゼミでした。 - 第19回(12/4) (文責:樋爪)
今週の報告担当は,野上君,樋爪さんでした。野上君のテーマである「学校選択自由化」について,藤井さんがコメントを行い,皆の「学校選択自由化」に対する理解が深まりました。また,樋爪さんは,テーマである「公益法人」について,主に「検査・認定業務」に関する報告を行いました。さらに,この日は,ゼミガイダンスについての話し合いも行いました。 - 第20回(12/11)(担当:浜)
報告未着 - 第21回(12/18) (文責:藤井)
大木君の報告がありました。電子政府についての第3回目の報告だったので,「はじめに」と各章の任意の節について『書く練習』を発表しました。特に第2章の第2節の「非対面性と匿名性」について,気楽にアクセスできるという匿名性のメリットがある反面,行政手続や電子商取引では相手が見えない分,正当な取引ができないなどの弊害が出てくるため,これを防ぐ方法として,「秘密鍵方式」と「公開鍵方式」があります。この2つの鍵で暗号化するので,自分のデータは取引をする相手にしかわからなくなり,そのため,匿名性が確保されます。しかし,個人的な感想では,このシステムはかなり複雑なので普及するまでには時間がかかりそうです。 - 第22回(12/25) (文責:角松先生)
最悪の天候にもめげず見学者が来たのですが,ゼミ生の方が4人欠席という悲しい状況でした。「第二次学級崩壊」という角松のコメントに対して、「学級崩壊というのは,人はいるんじゃないですか」というのがN君の突っ込みでした。「学校選択制」について野上君の第三次(中間)報告,「国立大学法人化」「児童虐待」についてそれぞれ浜さん,平田さんの第三次報告が行われました。かなり問題意識が明らかになってきたところで,絞込みが課題になりそうです。 - 第23回(1/8) (担当:浜)
報告未着 - 第24回(1/15) (文責:角松先生)
いよいよ最後の報告ですが,予定報告者4人のうち2人が欠席してしまいました。いろいろと不運が続くゼミのようで,今度は(政教分離に反しないような)厄払いを考えなければなりませんね。論文で何より大事なことは自分の「言いたいこと」を明らかにすること!皆さん最後の追い込み頑張りましょう。報告した浜さん(国立大学法人化),平田さん(児童虐待),お疲れさまでした。 - 第25回(1/22) (文責:角松先生)
実質上最後となる22日のゼミは,南野先生をゲストとして迎えましたが,残念なことに病気欠席2名,その他の理由による欠席が3名となりました。この1年,特に後半は,いろいろ不運に見舞われた人が多かったようですが,来年度はすっきりと迎えたいですね。報告した野上君,藤井さん,松浦さん,お疲れさまでした。いよいよあと1週間。「あれもやってない,これも調べてない」といくらでも気になる点がでてくるものです。でも,落ち込むことはありません。ぎりぎりまで「あがく」ことで,思いもよらない自分の力がひきだされたりしますから,むしろ貴重な経験と考えてください。あとひとふんばり。がんばって。 - 第26回(1/29) (文責:角松先生)
最終的に提出されたゼミ論のタイトルは以下のとおりでした。(ゼミ論集段階では変更の可能性もあります)
大木「電子政府の到来--電子署名法の意義」
野上「義務教育に競争は必要か--学校選択制を考える」
浜「国立大学法人」
樋爪「基準認証及び検査検定制度による『安全性』の確保について--規制緩和の流れの中での公平かつ中立な検査の実現にむけて」
平田「児童虐待対応の現在の問題点--2001年9月17日事件から見えてくること」
藤井「市町村合併の役割と必要性の検討--分権時代の基礎自治体はどうあるべきか」
松浦「日本のエネルギー政策とは--『3つのE』はいかにあるべきか」
みなさん,お疲れさまでした。これを仕事にしている研究者の苦労がわかっていただけたようで良かったです。去年のゼミガイダンスで私,「このゼミに入ると一度は後悔します」と言いました。おそらく皆さん,それを実感されたのではないかと想像しています。願わくば,そのとき続けて言った「(執筆の過程で力をつけたことで)最終的には後悔しない」というのも真実であってくれれば,と思います。