paco Home>HDG>ドイツ語文法>再帰動詞・再帰代名詞
「...自身」という意味をもともと持っている再帰代名詞(Reflexivpronomen)とともに用いられる動詞を再帰動詞(Reflexive Verben)と言います。英語にもこうした使い方をする動詞が一部ありますが(例:I pride myself on my son. / Help yourself to the cake.)数が少ないです。これに対してドイツ語は再帰動詞をかなり頻繁に使います。
再帰代名詞
再帰代名詞は2・3・4格がありますが,再帰代名詞として独特の形を持っているのは,3人称と敬称2人称の3・4格を示すsichだけです。
もとの形 | 2格(Genitiv) | 3格(Dativ) | 4格(Akkusativ) |
---|---|---|---|
ich | meiner | mir | mich |
du | deiner | dir | dich |
er/sie/es | seiner [selbst]/ihrer [selbst]/seiner [selbst] | sich | sich |
wir | unser | uns | uns |
ihr | euer | euch | euch |
sie/Sie | Ihre [selbst] | sich | sich |
再帰代名詞は基本的には代名詞の人称変化と同じものを使います。再帰代名詞は1格が存在せず,また2格もめったに使いません。再帰代名詞は3人称と敬称2人称だけが通常の人称代名詞とは異なります。これは「私-私自身」「あなた-あなた自身」が1対1に対応しているのに対して「彼-彼自身」は1対1とはいえない(別の「彼」を目的語とした可能性もある)からです。なお敬称のSieはもともと3人称複数のsieを転用したものなので,再帰代名詞はsich(小文字)を用います。
Er lobt sich. (彼は自分自身をほめます。)(←erとsichは同じ人)
Er lobt ihn. (彼は彼をほめます。)(←erとihmは別人)
再帰動詞
再帰代名詞とともに用いられる動詞を再帰動詞と呼びます。再帰動詞には,動詞の一部として再帰代名詞が組み込まれ(疑似再帰代名詞)その部分に他の名詞が来ることがあり得ない真正再帰動詞(echtes reflexives Verb)と,再帰代名詞も通常の名詞もともにその動詞の目的語とできる不真正再帰動詞(unechtes reflexives Verb)とがあります。
再帰動詞の人称変化
再帰動詞は3格の再帰代名詞をとるタイプと,4格の再帰代名詞をとるタイプとがあります。この両者について,動詞の人称変化と合わせて再帰代名詞の変化も覚えてしまうことが重要です。
[中級] 3格の再帰代名詞をとる再帰動詞が初級ではあまり多くないため,日本の学習者は3格の再帰代名詞をとる再帰動詞があることを忘れがちです。3格の再帰代名詞が来るタイプは,身体の部位を表す所有の3格のタイプを別にすれば,「~のために」「~に対して」というニュアンスを表す場合が多いです。
不定形 | sich3格+ wünschen | sich4格+freuen |
---|---|---|
ich | wünsche mir | freue mich |
du | wünschst dir | freust dich |
er/sie/es | wünscht sich | freut sich |
wir | wünschen uns | freuen uns |
ihr | wünscht euch | freut euch |
sie/Sie | wünschen sich | freuen sich |
再帰動詞の使われ方
再帰代名詞は必ず再帰動詞のすぐ近くに置きます。動詞が後置されるときは(本来ならば定形が置かれるはずの)第二位の直後に置かれます。
Ich freue mich auf die Sommerferien.
Ich habe gehört, dass Sie sich für Musik interessieren.
[中級] 再帰動詞は前置詞と結合してさまざまな表現に用いられます。こうした例について詳しくは前置詞を参照して下さい。前置詞が変わると意味が変わる動詞としてsich freuenがあります。sich freuen überは「過去の出来事」に対するうれしさを表し,sich freuen aufは「将来の出来事」への期待・楽しみを表現します。
Ich freue mich über den Brief. (私は手紙をもらったことを嬉しく思います。)
Ich freue mich auf die Sommerferien. (私は夏休みを楽しみにしています。)
[中級] 再帰動詞の意義・機能
再帰動詞はもともと他動詞であった動詞の目的語の部分に再帰代名詞を置くことになり,意味的には状態の変化を表す自動詞や受け身に似たニュアンスを表現できます(目的語に再帰代名詞が置かれることでその行為の意志のニュアンスが小さくなるためです)。
Die Tür schließt sich. ≒ Die Tür wird geschlossen. (ドアが閉まります。)
[上級] 再帰表現は受動態よりも行為者の存在を意識させないニュアンスを持ちます。
例1: Der Finanzdienstmarkt wird mit der Globalisierung der Wirtschaft entwickelt.
例2: Der Markt für Finanzdienstleistungen entwickelt sich mit der Globalisierung der Wirtschaft.
どちらも日本語にすると「金融市場は経済のグローバル化とともに発達している」となりますが,例1では「誰が」発達させたのかを読者に探らせるニュアンスであるのに対し,例2では単に「発達している」という状態の変化だけを表現しています。
[中級] 中間態
上記のような再帰動詞の機能の延長として,再帰動詞+形容詞・副詞の形をとる構文があり,これを中間態と呼ぶことがあります。
Der Aufsatz liest sich schwierig. (この論文は読みにくいです。)
相互代名詞
「お互いに」の意味を表す代名詞を相互代名詞といい,再帰代名詞がこの役割を果たします。相互代名詞であることをよりはっきりさせるためにgegenseitigやeinanderが併せて用いられることもあります。
Wir haben uns sehr lange nicht gesehen.(本当にお久しぶりです。)