話法の助動詞

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本動詞の原形と結びついて,それ自体も本動詞に意味を加えるものを話法の助動詞(Modalverben)といいます。この中には,können,mögen,wollen,dürfen,sollen,müssenの6つが含まれます。ドイツ語では英語と違って,1つの文章の中に複数の話法の助動詞を使うことができます。

これに対して,haben,sein,werdenは過去分詞(Partizip II)と結びついて完了形や受動態を作ったり,werdenと不定詞で未来形を作ります。しかしこれらは本動詞に何らかの意味を付け加えないので,話法の助動詞には含まれず,単に助動詞(Hilfsverben)と呼ばれます。

話法の助動詞の人称変化

話法の助動詞の人称変化は現在形でも動詞の過去人称変化と同じです。通常の動詞の中ではwissen(知っている)がこれと同じ変化をします。これは,歴史的に見ると,話法の助動詞とwissenは過去の形から発展したためです。

不定形könnenmögenwollendürfensollenmüssen
ich kann mag will darf soll muss
du kannst magst willst darfst sollst musst
er/sie/es kann mag will darf soll muss
wir können mögen wollen dürfen sollen müssen
ihr könnt mögt wollt dürft sollt müsst
sie/Sie können mögen wollen dürfen sollen müssen

話法の助動詞の三基本形

話法の助動詞にも三基本形があります。

不定詞過去基本形過去分詞
können konnte [hat] gekonnt
mögen mochte [hat] gemocht
wollen wollte [hat] gewollt
dürfen durfte [hat] gedurft
sollen sollte [hat] gesollt
müssen musste [hat] gemusst

[上級] 話法の助動詞が他の動詞の不定詞と併せて用いられる場合,過去分詞はgeがつくタイプではなく,不定詞になります。これを代替不定詞といいます。

In Konstanz habe ich Deutsch sprechen können.(私はコンスタンツではドイツ語を話す機会がありました。)

上記のような場合にはgekonntではなく不定詞のkönnenが使われます(能力として「ドイツ語を話すことができた(のに今はできない)」という意味を表すには,過去形konnteが用いられます)。gekonntが使われるのは,話法の助動詞が単独で用いられ,他の動詞の不定詞が文に含まれない場合です(例えば間接話法)。話法の助動詞が単独で用いられる場合としては,他動詞として目的語をとる(本動詞は省略されていると見ることができる場合もあります)ときと,方向などの副詞句をとるときとがあります。

話法の助動詞の具体的用例

können

(1)主語の能力を表す(...できる)

Ich kann Deutsch sprechen. (私はドイツ語を話せます。)

(2)可能性・許可を表す(...できる・してよい)

Kann ich hier meinen Computer benutzen? (ここでコンピュータを使えますか。)

sein + zu不定詞で同じ意味を表すことができます(例:Das ist schwer zu sagen.)。

(3)推測を表す(...かもしれない)

Das kann sein. (そうかもしれませんね。)

副詞vielleicht,möglichなどを使うと同意文になります。接続法II式のkönnteを使うとより確度が低い推測を表すことができます。

mögen

(1)好みを表す(...が好きである・好みである)

Ich mag nicht mit dem Zug fahren. (私は電車での旅が嫌いです。)

この意味で使われるのは疑問文・否定文だけで,肯定文では用いられません(どちらかというと南ドイツで使われる表現です)。個人的な好みを表す表現で,子どもが使うことが多いです。

本動詞として(4格目的語だけとともに)使われると肯定文でもこの意味が表現できます。また動詞を用いて「...するのが好き」という意味を表す場合には副詞gernを用います(例:Ich höre gernMusik.)。

(2)容認・仮定を表す(...すればよい・...であっても)

Er mag nur reden. (彼に言わせておけばいいのだよ。)

(3)推量を表す(おそらく...だろう:könnenよりも確度が高い)

Sie mögen Recht haben. (おそらくあなたの言う通りでしょう。)

接続法II式 möchte

mögenの接続法II式の形であるmöchteは,主語の控えめな希望・要求を表す表現としてよく使われます(話者の願望を表す場合もあります)。現在では接続法であることが意識されず,独立した話法の助動詞としてのニュアンスが強まっているので,より丁寧に表現したい場合にはIch würde gerne ... のような別の表現が適切です。過去形は存在しないので,過去のことを表すにはwollenの過去形wollteを使います。

Ich möchte hier etwas essen.(ここで何か食べたいのですが。)

wollen

(1)意志・意図を表す(...しようと思う・するつもりだ)

Ich will nach Deutschland reisen. (私はドイツに行くつもりです。)

wir wollenの形で提案を表すこともあります(例:Wollen wir ins Kino gehen?)。また過去形wollteを使うと,計画していたがうまくいかなかったというニュアンスを出すことができます(例:Ich wollte sie besuchen.)。

(2)傾向・気配を表す(...しそうになる)

Es wollte schneien. (今にも雪が降りそうでした。)

上記の文例は文学作品的で,日常用いられることはほとんどありません。

(3)主語の主張を表す(...と主張している)

Er will den Professor gestern hier gesehen haben. (彼はその教授を昨日ここで見たと主張しています。)

主語の主張を表すwollenでは,話者は必ずしも主語の主張を支持ないし賛成していないというニュアンスが含まれます。

dürfen

(1)許可・認容を表す(...してよい・かまわない)

Darf ich hier rauchen. (ここでタバコを吸ってもいいですか。)

(2)禁止を表す(...してはならない)

Sie dürfen hier nicht rauchen. (あなたはここでタバコを吸ってはいけません。)

nichtやkeinなどとともに用いられると,禁止の意味を表します。まれに「しなくてもかまわない」という意味を表すこともあります。

接続法II式 dürfte

英語のmayにはその形のままで「許可」の意味とともに「推量」(~だろう)の意味も表現できます。これに対してドイツ語のdürfenはそのままの形では「許可」の意味しかなく,「推量」の意味を表すには接続法II式のdürfteの形にする必要があります(この場合,mögenよりも確度が高いニュアンスになります)。副詞wahrscheinlichやvermutlichを使うと同意文になります。

Er dürfte heute hierher kommen. (彼は今日たぶんここに来るでしょう。)

[中級] 日本人はしばしば確信のあまりない推測を表すときにvielleichtを使いがちです。しかしドイツ語のvielleichtは日本語の「たぶん」よりももっと弱い確度を表しており(可能性としてはあり得る,という程度のニュアンス),日本語で「おそらく」「たぶん」という意味を表す場合にはwahrscheinlichを使った方が適当である場合も多いです。

sollen

(1)主語以外の意志・意図を表す(...してください・しましょうか)

Soll ich Ihnen ein Taxi rufen? (タクシーを呼びましょうか。)

上の例文は聞き手の意志ですが,この他に話し手の意志や第三者の意志を表す場合もあります。物を主語に立てることで自分の意志や希望を表すこともできます。

(2)運命的な必然を表す(...するに決まっている・どうしようもない)

Es hat nicht sollen sein. (そういうことにはなりませんでした。)

(3)伝聞を表す(...らしい・との噂だ)

Er soll in Tokio sein. (彼は東京にいるらしいです。)

接続法II式 sollte

(1)忠告・実現していない理想を表す(本来ならば...すべきだ・...の方がよい)

Das sollte man nicht tun. (そんなことはすべきではありません。)

sollenはそのままでは主語以外の意志を表すので,「~すべきだ」という意味を表すにはこの接続法II式の形が用いられます。

(2)万一の条件を表す(万一...という場合には)

Wenn es regnen sollte, gehe ich nicht zur Universität. (万一雨が降った場合には大学には行きません。)

この用法の場合には,wennを省略して動詞から始める方が普通です(Sollte es regnen, ...)。

müssen

(1)義務・必然を表す(...しなければならない)

Wir müssen fleißig Deutsch lernen. (私たちは一生懸命ドイツ語を勉強しなければなりません。)

この意味ではhaben + zu不定詞で言い換えができます。müssenを否定すると普通は「...する必要はない」(英語で言えばdon't have to)の意味となり,「...してはならない」となりません。この意味ではdürfen + nichtを用います。

(2)確信を表す(...に違いない)

Es muss geregnet haben. (雨が降ったに違いありません。)

この意味では副詞sicherやzweifellosを用いて同意文を作ることができます。

なお,推測を表す助動詞を確度の強い順に並べると

müssen>dürfte>mögen>können>könnte

の順になります。

    

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