名詞の性・数・格

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ドイツ語の名詞(Nomen,Substantiv)には性(Genus),数(Numerus),格(Kasus/Fall)の3つの区分があります。いずれも日本語の名詞にはないものばかりです。なおドイツ語の名詞は全て大文字で書き始めます。

名詞の性(Genus des Substantivs)

ドイツ語の名詞には男性名詞(Maskulinum),女性名詞(Femininum),中性名詞(Neutrum)の区別があります。自然の性がある場合の多くはその性と一致しますが,必ずしも全てではありません。そこで名詞を覚える際には性も一緒に覚えておく必要があります。名詞の性は冠詞・冠詞類で表されます。

[男性名詞] der Mann (その男の人) ein Mann (ある男の人)
[女性名詞] die Frau (その女の人) eine Frau(ある女の人)
[中性名詞] das Kind (その子ども) ein Kind (ある子ども)

名詞の性を決めるルール

人を表す名詞の場合には基本的に自然の性に合致しますが,そうでない名詞の場合には性を決める確たるルールはありません。ただし,いくつか手がかりになるルールはあります。

男性名詞になる場合

女性名詞になる場合

[中級]女性名詞特有の語尾を覚える言葉として"Heitungkeit"(-heit,-ung,-keit)や,"Tätionie"(-tät,-tion,-ie)などがありますが,このような暗記言葉に頼らなくてもある程度ドイツ語を読むと自然と語尾規則を覚えることができます。

川の名前は男性名詞の場合と女性名詞の場合とがありますが,ドイツを流れている長距離の川に関しては,8つの川(der Rhein, der Main, der Inn, der Nechker, der Lech, der Kocher, der Regen, der Rhin)以外は女性名詞です(例:die Donau,die Mosel,die Lahn,die Ruhr)。

中性名詞になる場合

[中級] 定冠詞が必要な国名

次の国名には原則として定冠詞が必要です。

[中級] 意味によって性が違う名詞

同じ名詞でも性が違うと意味が違うことがあります。例えばSeeは,男性名詞der Seeとなると「湖」(例:der Bodensee),女性名詞die Seeとなると「海」(例:die Nordsee)となります。またder Leiterは「リーダー」,die Leiterは「はしご」の意味です。同様にGehaltも,男性名詞der Gehaltでは「含有量」,中性名詞das Gehaltでは「給料」の意味になります。

合成名詞の性

ドイツ語では日本語と似て,複数の名詞が繋がって一つの名詞を形成することがしばしばあります。この場合の名詞の性は最後の名詞(基底語)に一致します。

例: der Student(学生)+das Wohnheim(寮)→das Studentenwohnheim(学生寮)

名詞をつなげる際には-[e]sをはさむタイプ,-[e]nをはさむタイプ,単に結合させるだけのタイプなどいくつかのタイプがあります。基本的には性・数と音声的な便宜で決まっています。

[上級] 合成名詞の-s-のルール
合成名詞を作る際に-s-をはさむかどうかのルールは以下の通りです。

名詞の数(Numerus des Substantivs)

多くの名詞には英語と同じく単数・複数の区別があります(可算名詞)。これに対して,集合名詞(例: Gepäck),物質名詞(例:Luft),抽象名詞(Abstrakta)(例:Geduld)は不可算名詞となり,単数では無冠詞で複数形がありません。

複数形の作り方

英語の複数形は一部の例外(例:child→children)を除くと語尾に-sを付けるだけですが,ドイツ語の場合には-sを付けるのが例外的で(基本的に外国語由来の名詞だけ),それを含めて5つの複数形の作り方があります。

E型

語尾に-eを付け加えます。しばしば幹母音がウムラオトに変わります。このタイプに属するものとして次のような名詞があります。

[E]N型

語尾に-[e]nを付け加えます。幹母音のウムラオトはありません。このタイプに属するものとして次のような名詞があります。

無変化型

語尾は変化しません。幹母音のウムラオトをするものもあります。しかしそうでない場合には定冠詞の変化で複数かどうかを判断することになります。このタイプに属するものとして次のような名詞があります。

ER型

語尾に-erを付け加えます。幹母音がウムラオトできる場合には必ずウムラオトになります。このタイプに属するものとして次のような名詞があります。

S型

語尾に-sを付け加えます。幹母音のウムラオトはありません。このタイプに属するものとして次のような名詞があります。

[中級] 英語由来の名詞に-sを付ける場合に,英語の文法では存在するyをieに変えるルール(例:hobby→hobbies)はドイツ語にはありません(例:Hobby→Hobbys)。

[中級] ギリシャ語・ラテン語由来の名詞の中には,不規則な変化をするものがあります。

名詞の格(Kasus des Substantivs)

ドイツ語の名詞には4つの格(Kasus/Fall)があります。日本語では格は助詞(格助詞)によって表されます。また英語では基本文型に示されているように,文中の位置が大きな役割を果たします。これに対しドイツ語では格を冠詞類の語尾変化を中心に表します(一部,名詞にも語尾が付きます)。そこで,格変化の仕方は冠詞と冠詞類でまとめて扱います。ここではそれぞれの格の代表的な使い方を概観します。ただし,主語になる1格を除くと,格を規定するのはむしろ動詞や形容詞になるので,格の判断にあたってはその名詞の近くにある動詞や形容詞を辞書で調べ,それらが何格をとるのかを確認する習慣をつけることが重要です。

1格(Nominativ)の用法

1格(主格)は主語になるほか,主格補語(英語のSVCのCにあたる名詞)になります(補語となっている1格のことをPrädikatsnominativと言います)。英語ではbe動詞が代表的ですが,ドイツ語のsein,werdenなどもこの性格を持っており,ドイツ語文法ではこうした動詞をコプラ動詞と呼ぶことがあります。この他,呼び掛けの場合にも1格が使われます。

Die Stadt ist sehr schön. (その都市はとても美しいです。)

2格(Genitiv)の用法

2格(属格)は名詞を説明する付加語として「...の」という意味を表すのが基本です。他にも目的語として,あるいは副詞として(副詞的2格)使われることがあります。

付加語的用法

2格は通常,それを修飾する名詞の後ろに置かれます(後置)。ただし無冠詞の固有名詞は名詞の前に置くことができます(これをザクセン2格(sächsischer Genitiv)と呼ぶことがあります)。2格は意味的には前置詞vonと同じです。ザクセン2格は文法的には冠詞類と同じなので,ザクセン2格と冠詞類を同時に使うことはできません(×die Haradas Deutsche Grammatik)。

日本語の「の」と同様,1つの名詞に対していくつも2格を並べて修飾することができます。読解の際には,どこまでが修飾語なのかを把握することが重要です。

der Freund meiner Schwester(私の姉の友達) 
beim Anbieten eines Kaffees(コーヒーを勧める際には)
Haradas Deutsche Grammatik(←ザクセン2格の例)

[中級] その他の用法

2格は動詞や形容詞あるいは前置詞の目的語として用いられることがあります(辞書ではjs/et2などと表示されます)。また補語や副詞として用いられることもあります。ただし古風な言い方が多く,会話ではあまり出てきません。

Die Gesunden bedürfen eines Arztes nicht. (健康な人に医者は要りません。) 
Ich bin der Meinung, dass dieses Gesetz unangemessen ist. 
(私はこの法律は不適切だと思います。)
Eines Tages bin ich nach Fukuoka gefahren. (ある日私は福岡に行きました。)

一日のうちの時間帯を表す副詞であるmorgens(朝に),vormittags(午前中に),mittags(昼頃に),nachmittags(午後に),abends(夕方に),nachts(夜に)や毎週特定の曜日を表すmontags(毎週月曜日に)のような副詞はいずれも副詞的2格がもとになったものです。

[上級] 2格目的語をとる動詞
2格目的語をとる動詞は硬い表現(特に法律関係の表現)に見られます。

3格(Dativ)の用法

3格(与格)は通常,動詞・形容詞・前置詞の目的語として用いられます(辞書ではjm/et3などと表示されます)。日本語の「...に」にあたる意味を表すことが最も多いですが,そうでない場合もあるので注意が必要です。また,文の必須成分ではない(添加語)「自由3格」と呼ばれる用法(判断・利益・被害・所有などを表す)や「関心の3格」と呼ばれる用法もあります。

目的語としての用法

動詞・形容詞・前置詞の目的語としての役割を果たします。

Ich schenke Ihnen dieses Buch. (私はあなたにこの本を贈ります。)
Ich helfe dir. (私は君を助けます。)

[中級] 添加語としての用法

3格が文の必須成分ではないのに使われている場合があります。判断・利益・被害・所有などを表す「自由3格」と呼ばれる用法や,話し手の気持ちを表す心態詞の一種である「関心の3格」がこれに当たります。

Das ist mir schwer gefallen. (それは私には負担がかかります。)
Ich wasche mir die Hände. (私は自分の手を洗います。[所有の3格])
Mir tut der Kopf weh. (私は頭が痛いです。[所有の3格])
Grüßen Sie mir Ihre Eltern! (ご両親によろしくお伝えください。)

所有の3格にあたる内容を2格を使って表すこともできますが,その場合には目的語だけが注目されるニュアンスになります。2格となった「...の」の要素は目的語(例えば体の部位)の修飾要素となるに過ぎません。これに対して所有の3格を用いると,目的語に加えてその動作の影響を受ける人が誰であるかを示すことができるようになります。

4格(Akkusativ)の用法

4格(対格)は他動詞の目的語になります。形容詞や前置詞の目的語にもなります(辞書ではjn/et4などと表示されます)。また4格には副詞としての用法もあります(副詞的4格)。

目的語としての用法

4格は目的語としてのほか,英語のSVOCのCにあたる目的語補語でも使われます。英語のSVCのCである主格補語は1格なので,注意が必要です。この他,英語のThere is/are ...(...がいる・ある)にあたる表現であるドイツ語のEs gibtは後ろに4格を取ります。

Ich schreibe einen Brief. (私は手紙を書きます。)
Ich finde dieses Buch gelungen.(私はこの本は見事だと思います。)
Es gibt ein gutes Restaurant. (よいレストランがあります。)

[上級] 目的格補語をとる他動詞の受動態の場合,目的語補語は4格ではなく1格になります。

Dieses Buch wird von mir ein Meisterwerk gefunden.
(この本は私から傑作と見られています。)

副詞的用法(副詞的4格)

時や場所などの要素を4格で表す場合があります。前置詞を使っても言い換えられます。

Jeden Tag spiele ich eine Stunde Tennis.(毎日私は1時間テニスをします。)
    

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