形容詞(副詞)

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形容詞(Adjektiv)は名詞を修飾したり述語として機能したりします。名詞を修飾する場合には語尾変化があります。またドイツ語の形容詞はそのままの形で副詞としても使えます。そこでここでは形容詞と副詞の用法をあわせて見ていくことにします。

形容詞の用法

形容詞の用法は大きく,補語としての機能を果たす述語的用法(prädikativ)と,名詞を修飾する付加語的用法(attributiv)とに分かれます。

[述語的用法] Das Buch ist interessant.(この本はおもしろいです。)
[付加語的用法] Das interessante Buch ist auf dem Tisch. 
(そのおもしろい本は机の上にあります。)

[中級] ほとんどの形容詞は上の2つの用法をともに持っており,付加語的用法の場合にだけ語尾変化をおこします。ただし,一部の形容詞は上のどちらかの用法でしか使いません。

[上級] 3格・4格と結びつく形容詞(副詞)

形容詞(副詞)の中には,3格・4格の名詞と結びついて特定の意味を表すものがあります。

Dieses Kind ist dem Vater ähnlich. (その子は父親に似ています。)
Ken ist einen Monat alt. (健は生後1ヶ月です。)

上の文は3格と結びつく例で,他にはbekannt,bewusst,fremd,treuなどがあります。日本語にすると「~にとって」というのが共通のニュアンスのようです。下の文は4格と結びつく例で,形容詞・副詞の程度・数量などを表す際に用いられます。Ich bin 18 Jahre alt.のように年齢を言うときにはあまり意識していませんが,この18 Jahreも実は4格です。

付加語的用法における語尾変化

形容詞の語尾変化は,冠詞類がない場合の強変化(starke Deklination),定冠詞とともに用いられる場合の弱変化(schwache Deklination),不定冠詞とともに用いられる場合の混合変化(gemischte Deklination)の3種類があります。

強変化(starke Deklination)

名詞の種類 男性名詞 女性名詞 中性名詞 複数形
1格(Nominativ) junger Mann junge Frau kleines Kind junge Leute
2格(Genitiv) jungen Mannes junger Frau kleinen Kindes junger Leute
3格(Dativ) jungem Mann junger Frau kleinem Kind jungen Leuten
4格(Akkusativ) jungen Mann junge Frau kleines Kind junge Leute

強変化の特色は変化語尾がほぼdieser型冠詞類と同じであるところにあります。これはこの場合には形容詞しか名詞の格を表すものがないので,冠詞類の変化に準じる変化を形容詞にさせる必要があるためです。ただし男性・中性2格では語尾が-enになることに注意が必要です。

[中級] 強変化では冠詞・冠詞類の語尾が形容詞に付いていますが,だからといってこれが冠詞付の名詞と同じ意味になるわけではありません。強変化は無冠詞と同じなので,無冠詞が使われうる場合にしか使うことができません。そのためこの強変化が現れる頻度はあまり高くありません。

弱変化(schwache Deklination)

名詞の種類 男性名詞 女性名詞 中性名詞 複数形
1格(Nominativ) der junge Mann die junge Frau das kleine Kind die jungen Leute
2格(Genitiv) des jungen Mannes der jungen Frau des kleinen Kindes der jungen Leute
3格(Dativ) dem jungen Mann der jungen Frau dem kleinen Kind den jungen Leuten
4格(Akkusativ) den jungen Mann die junge Frau das kleine Kind die jungen Leute

弱変化の場合には定冠詞が名詞の格などを表示するため,形容詞が格を表す必要がありません。そのため弱い語尾である-enがつく場所が非常に多くなります。ただし男性・女性・中性の単数1格と女性・中性の単数4格だけは語尾が-eとなります。逆に複数形の場合には1格でも-enとなることに注意しましょう。

混合変化(gemischte Deklination)

名詞の種類 男性名詞 女性名詞 中性名詞 複数形
1格(Nominativ) ein junger Mann eine junge Frau ein kleines Kind
2格(Genitiv) eines jungen Mannes einer jungen Frau eines kleinen Kindes
3格(Dativ) einem jungen Mann einer jungen Frau einem kleinen Kind
4格(Akkusativ) einen jungen Mann eine junge Frau ein kleines Kind

混合変化も基本的には不定冠詞が格などを表示してくれるので,形容詞は弱い語尾の-enがつくことが多くなります。ただし男性・中性1格はeinで語尾がないため,格をはっきりさせるために形容詞に-erや-esが付きます。中性は1・4格が同形なので中性4格も同じです。不定冠詞は複数形には付きませんが,複数とも結合するkeinの場合には,複数形の形容詞の語尾は全て-enになります。

[中級] 例外的な語尾変化

語尾が-el,-en,-erで終わる形容詞ではそのeが落とされて語尾が付きます。

例: trocken(乾いた・辛口の)→der trock[e]ne Wein(辛口のワイン),teuer(高い)→das teure Notizbuch(高いノート)

hoch(高い)は発音の都合上,語尾が付くと間のcが落ちます。例えばder hohe Dom(高い大聖堂)のようになります。

[上級] 不定数詞vielの語尾

vielは後ろに可算名詞が来ると通常の語尾がつき,不可算名詞が来ると語尾がつきません。

[可算名詞] Viele Leute kommen hierher.(多くの人がここに来ます。)
[不可算名詞] Ich habe heute viel Zeit.(今日は時間があります。)

副詞的用法

ドイツ語の形容詞はそのままの形で副詞として使うことができます。この場合には語尾変化はありません。形容詞と副詞は必ずしも完全には一致しません。例えばgern(...するのが好き)は副詞ですが形容詞ではありません。

形容詞の名詞化

男性・女性・複数の変化語尾を持つ形容詞を大文字で書き始めると,「...な人」という意味の名詞になります。例えばder Deutscheやein Deutscherは男性のドイツ人,die Deutscheやeine Deutscheは女性のドイツ人,die DeutschenやDeutscheはドイツ人たちという意味になります。男性のドイツ人を格変化させると次の表のようになります。

単数・不特定 単数・特定 複数・不特定 複数・特定 複数・冠詞類
1格 ein Deutscher der Deutsche Deutsche die Deutschen alle Deutsche(n)
2格 eines Deutschen des Deutschen Deutscher der Deutschen aller Deutschen
3格 einem Deutschen dem Deutschen Deutschen den Deutschen allen Deutschen
4格 einen Deutschen den Deutschen Deutsche die Deutschen alle Deutsche(n)

中性の変化語尾を持つ形容詞を大文字で書き始めると,「...な物」という意味の名詞になります。例えばdas Deutscheはドイツ語という意味になります。これらは抽象的な意味を表すことがほとんどです。中性の強変化語尾を持つ形容詞とetwas/nichtsを使うと「何かあるもの」「何も...であるものはない」という意味になります(例: nichts Neues(新しいことがなにもない))。

[中級] 形容詞の表現

ドイツ語は英語に比べて形容詞を使った表現が豊富であると言われます。

この法律の草案には理由付けが必要です。
(ドイツ語) Dieser Gesetzentwurf ist begründungspflichtig.
(英語) This draft of the act has required justification.

この例のようにドイツ語では形容詞が一言で述語部分を表せることがあります。これが可能になっている背景には,語尾を付けることで名詞から簡単に形容詞を作ることができるというドイツ語の特色があります。

副詞(Adverb)

副詞は動詞・形容詞や文全体を説明する際に用いられ,形容詞の述語的用法と同様に語尾変化がありません。副詞には次のようなものがあります。

副詞は,動詞(不定詞)から遠い順に,Te(時間)-Ca(因果関係)-Mo(様態)-Lo(場所)と並ぶのが普通です。感覚的には日本語の語順と似ています。

形容詞と副詞の比較級・最高級

比較級・最高級の語形変化

英語と同じく,ドイツ語にも形容詞と副詞の比較表現があります。ドイツ語の場合にはもとの形を原級(Positiv),比較の形を比較級(Komparativ),最もという意味を表す形を最高級(Superlativ)といいます。基本的ルールは次の通りです。

[比較級] 原級+er (例)neu(新しい)→neuer(より新しい)
[最高級] 原級+st (例)neu→neu[e]st(最も新しい)

発音上の理由から特別な変化をする形容詞・副詞もあります。

不規則変化をする形容詞・副詞もあります。

hoch(高い)→höher→höchst
nah(近い)→näher→nächst
gut(よい)→besser→best
viel(多くの)→mehr→meist
bald(すぐに)→eher→ehesten
oft(頻繁に)→häufiger→häufigsten
gern(好んで)→lieber→liebst
sehr(とても)→mehr→meisten

原級・比較級・最高級の用法

原級を使った表現

so (原級) wie (比較対象) の表現が頻繁に使われます。英語のas (原級) as (比較対象)にあたります。

Taro ist so groß wie Ken. (太郎は健と同じくらい背が高いです。)
Yuji ist nicht so groß wie Taro. (裕二は太郎ほど背が高くありません。)

[中級] 「...の半分・2倍・3倍の...です」という表現は原級を使って halb/doppelt/dreimal so (原級) wie (比較対象)で表します。英語の ... times as ... as ...にあたります。
例: Die Einwohnerzahl in Tokio ist [etwa] dreimal so groß wie diese in Kyushu.
(東京の人口は九州の[約]3倍です。)

比較級を使った表現

(比較級) als (比較対象)の表現が重要です。英語の (比較級) than にあたります。また差の程度を明示する場合にはum+4格または4格を比較級の前に置きます。

Taro ist größer als Yuji. (太郎は裕二よりも背が高いです。)
Hanako ist [um] vier Jahre älter als Yumi. (花子は由美より4歳年上です。)

[中級] 比較対象を持たない比較級を絶対比較級といいます。この場合には「どちらかというと」という意味になって原級よりも弱い意味になるので注意が必要です。

[中級]「...すればするほど~です」は比較級を用いて je ...(比較級), desto ~(比較級)で表します。英語のthe+比較級...,the+比較級~にあたります。
語順は,Je+比較級+...+動詞,desto+比較級+動詞+...のようになります。

Je mehr, desto besser. 
(多ければ多いほどよいです。)

nicht 形容詞(原級) genugを使って同様の意味を表現することもできます。

Man kann nicht vorsichtig genug sein.
Je vorsichtiger, desto besser.
(注意してもしすぎるということはありません。=注意すればするほどよいです。)

最高級を使った表現

最高級の表現方法は2通りあります。1つは格変化(定冠詞+最高級の形容詞+名詞)によって表現する方法で,付加語的用法と他社比較の述語的用法で用います。もう1つはam+最高級-enで表現する方法で,述語的用法と副詞的用法で用います。「健はクラスの中で最も速いです。」という意味を共通に持つ次の4つの表現が考えられます。

[付加語的用法] Ken ist der schnellste Läufer in dieser Klasse.
[述語的用法] Ken ist am schnellsten in dieser Klasse. 
[形容詞の名詞化] Ken ist der Schnellste in dieser Klasse. 
[副詞的用法] Ken läuft am schnellsten in dieser Klasse.

最高級の範囲を明示する場合には上の例のようにinを使うほか,vonや名詞の2格が用いられます。inや2格の場合には範囲が,vonの場合には複数のものが後続します。

[中級] 「最も...なものの1つ」は最高級を用いて einer/eine/eines +des/der/des (最高級)+名詞の複数形 の形で表します。名詞の性によって形が変わってくるので注意が必要です。英語のone of the (最上級)+名詞の複数形にあたります。

Die Universität Kyoto ist eine der besten Universitäten in Japan. 
(京都大学は日本で最もよい大学の1つです。)

[中級] 比較の対象を持たない最高級を絶対最高級といいます。この場合には「非常に...」という意味になり,普通の最高級よりも意味が強まります。副詞の絶対最高級はaufs 最高級+-eの形をとります。

[中級] 通常の最高級は他者比較ですが,自己比較の場合もあり得ます。この場合には述語的用法であってもam+最高級-enしか用いません。

Der Bodensee ist an dieser Stelle am schönsten
(ボーデン湖はここが一番美しいです。)
    

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