[25後] 行政法総論

paco Home>授業関連>開講科目一覧(京都大学)>[25後] 行政法総論

お知らせ

シラバス

基本情報

授業の概要・目的

行政法は,行政機関の活動を基礎付け,あるいは制限する法であって,行政法に関する知見を深めることは,公共政策の確実な実現や公共紛争の予防の観点から不可欠である。しかし,行政法は極めて多種多様な内容を有しており,これを非体系的に学ぶことは非効率かつ非現実的である。そこで,行政法全般に共通する基本的な考え方や,行政法全般に適用される法理(行政通則法)を学ぶことで,個別の行政法の理解を容易にすることが,行政法総論の目的である。
公共部門で活躍する人材を養成する公共政策大学院においては,公共制度を設計するための手段としての行政法総論の側面に注目する必要があることから,行政法総論の三大分野のうち行政作用法・行政組織法に重点を置くこととし,その理解に必要な範囲で行政救済法の問題にも触れることとする。

到達目標

達成すべき公共政策目的に対して,どのような法制度を設計すべきか,行政法総論の知識を用いて具体的な制度像を示すことができること。

授業計画と内容

第1回 行政法の特色
身近な事例や時事問題から,行政法の基本的な特色を把握する。また,行政法を通底する基本的な概念や考え方を紹介する。

第2回 行政法の法源
行政法は法律以外のさまざまな法形式が存在する点に大きな特色があり,その相互関係や規範間の調整の考え方を理解することが,極めて重要である。ここでは,行政法の法源として紹介される法形式を概観した後,とりわけ法的問題が多い条例の問題を取り上げる。

第3回 法律による行政の原理
行政法学の最も重要な考え方は,行政活動が法律に従ってなされなければならないとする法律による行政の原理である。具体的な政策課題を取り上げながら,どのような場合に法律(条例)の根拠が必要となるか,法律の根拠を置かないときにはどのような活動形式が用いられるかを整理する。

第4回 行政救済の基礎
違法な行政活動によって自己の権利・利益が害されたと考える市民・企業は,行政救済法に基づいて権利・利益の救済を求めることができる。ここでは,行政救済の基本的な類型(行政争訟・国家補償)及びその基本的な特色を紹介する。

第5回 行政組織の基礎
行政組織の設置は,特定の政策課題を恒常的な公共管理の下に置く契機となる。そこで,行政組織法の基本的な考え方や,国家行政組織法の概要,公務員法の基本的な骨格を紹介する。

第6回 国と地方の行政組織
国とともに統治機構上重要な役割を果たしているのが,都道府県・市町村等の地方公共団体である。そこで,地方行政組織法の基本的な内容を理解するとともに,中央地方関係を規律する地方自治法及び個別の法律の特色を把握する。

第7回 行政手続と情報管理
行政過程の基盤を形成しているのが,行政手続法と情報管理法である。行政の意思決定が適切になされるための法制度としての性格を持つ両者を併せて考察し,併せて,近時の行政のデジタルトランスフォーメーションに関する法制度も検討する。

第8回 行政基準
行政機関が定立する一般的な規範である行政基準は,法律と同様かそれ以上に大きな役割を果たしている。そこで,行政基準の手続ルールと実体ルールとしてどのような内容があるかを紹介する。

第9回 行政計画
都市計画や社会保障計画のように,行政活動の具体的な内容を,計画策定手続の中で定めていく行政活動は,多くの政策分野で使われている。ここではその基本的な考え方を紹介するとともに,具体的な行政計画を取り上げてその現状を検討する。

第10回 行政行為(1)
行政行為(処分)は,行政活動の形式として最も重要なものであり,多くの法理論・関連判例が生み出されてきた。(1)では,行政行為の概念,効力,実体ルールを取り上げる。

第11回 行政行為(2)
ある行政活動が行政行為(処分)とされると,事前段階では行政手続法の規律を,事後段階では行政不服審査法・行政事件訴訟法の規律を受け,全体として民事法とは大きく異なる手続ルールに服することになる。(2)では,行政行為の手続ルールを,事前・事後に分けて検討する。

第12回 行政行為(3)
行政活動の大きな特色は,法律から自動的に決定内容が導出できる場面よりも,行政機関に判断の余地が認められる場面が目立つことである。このような行政裁量がどのような場合に認められるか,行政裁量が認められると裁判所ではどのように審査されるかを,主として行政行為に絞って検討する。

第13回 行政契約・行政指導
行政行為は法令に基づく一方的な行為形式であるのに対して,相手方との交渉や同意に基づいて活動する形式として,行政契約と行政指導がある。我が国ではこれまで行政指導が多用される反面で,行政契約が使われる場面はそれほど目立ってこなかった。しかし,近時行政契約を立法によって採用するケースが広く見られるようになってきている。ここでは,交渉による行政活動の特色やその法的課題を検討する。

第14回 行政の実効性確保
日本の行政法制度は,義務履行確保手段が一般的に脆弱であり,それが法執行における病理現象を生んできている。そこで,行政の実効性確保手段の現状を整理した上で,具体的な政策課題を念頭に置いて,どのような実効性確保手段を整備すべきかを検討する。

期末試験

第15回 フィードバック

履修要件

特になし。

成績評価方法等

筆記試験75点,平常点評価(授業時の発言等)25点とする。

教材

(教科書)
原田大樹『グラフィック行政法入門』(新世社・2017年)
原田大樹『判例で学ぶ法学 行政法』(新世社・2020年)

(参考書等)
原田大樹『ファーストステップ 演習 行政法』(東京大学出版会・2023年)
原田大樹=興津征雄=巽智彦編著『行政法演習サブノート210問』(弘文堂・2024年)

授業外学修

PandA及び教材配布Webサイトを通じて配布される予習課題・復習課題に取り組むこと。

    

研究関連

授業関連

HDG

Links

Weblog

follow us in feedly follow us in feedly