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現代実定法入門

弘文堂より『現代実定法入門―人と法と社会をつなぐ』を出版させて頂きました。

単著の法学入門を書いてみたいと思ったのは,今から10年以上前のことでした。博士論文(『自主規制の公法学的研究』)を書いているときに,自主規制の素材を集めるため行政法以外の分野の著書・論文を多く読んでいると,それぞれの分野で議論している内容は外見上は全く違うように見えても,同じような頭の使い方をしているのではないかと感じることがよくありました。その思いはその後,多くの学際的な研究会に参加させて頂いて報告や議論をしたりするたびに強化され,そのような法分野を越えた共通の考え方を示すことができれば,研究面で新たな発見に繋がるのではないかと感じていました。

また,教育の場面でも法学入門の必要性を感じていました。行政法の授業では,六法科目や応用科目の内容を前提としていることが多く,必ずしも全ての学生が行政法の前提となっているこうした科目を履修した上で行政法の授業に来ている訳ではないことから,こうした科目の内容を短く紹介する必要があります。その作業の過程で,法学部出身者であれば少なくともこのくらいの知識があった方がよいのではないかという要素がある程度固まってきました。

本書は,こうした経験を背景にして,法学のそれぞれの分野を超えた共通の概念や考え方をできるだけ明快に説明すること,法学部出身者であれば知っておきたい法的な知識(=さまざまな社会問題の背景に存在している法的な構造)をコンパクトに説明することに主眼を置いた法学入門書です。単著の法学入門であるため,各章のまとまりは必ずしも法学の各科目には対応せず,人間社会のルールという観点から再構成したものとなっています。本書の副題が「人と法と社会をつなぐ」となっている背景には,こうした事情があります。

本書の出版に当たっては,弘文堂の北川陽子さんに大変お世話になりました。ありがとうございました。

第3回ERG科研研究会

科学研究費基盤研究B「政策実現過程のグローバル化に対応した法執行過程・紛争解決過程の理論構築」(ERG科研) の第3回研究会を同志社大学司法研究科で開催しました。

【3月29日(水)】
○「独占禁止法におけるベスト・プラクティスと『アウトソーシング』」(中川晶比兒・北海道大教授)

行政機関の国際ネットワークの具体例として言及されるICNや,域外適用の問題でかならず引き合いに出される独禁法の適用問題を中心とする報告をして頂きました。競争法領域と他の領域の構造的な違いがよくわかりました。

○「租税・財政・金融分野におけるグローバル化と法執行の現状」(藤谷武史[研究分担者])

BEPSの問題で国際的な執行協力の枠組が加速しつつある国際租税法を中心に,法執行におけるグローバル化の現状とそれによって生じる新たな法的課題への対応が議論されました。

【3月30日(木)】
○「法的・政治的現象としてのドイツ帝国」(大西楠テア[研究分担者])

トリーペルの議論から,今日の公法学にも通じる方法論的課題やグローバル化の法的把握のヒントを得ようとする意欲的な報告でした。

このほか,今年度・来年度の活動に関する調整や,研究成果報告の方法についても活発な議論が行われました。

行政法クロニクル

本日発売の法学教室2017年4月号(439号)から2年間の予定で,行政法の連載を担当することとなりました。

連載は「行政法クロニクル」と題して,行政法理論の近時の変容とその方向性を展望することを目的としています。かつて行政法学の通説と呼ばれた田中二郎先生の体系と,現在の基本書がとっている説明との間には,かなり大きな差があります。他方で,実務や公務員試験の世界では,なお田中説の影響と思われる議論や概念が残っています。そこで,現在の行政法理論に田中二郎説がどの程度の影響を残し,あるいは残していないのかを,田中二郎説において重要な概念・議論と位置付けられてきた項目を取り上げながら説明するのが,この連載の中心的な課題です。

第1回は「行政の概念」を取り上げており,田中二郎説の内容(I. 原像)と現在の行政法の基本書の説明(II. 現状)を対比させた上で,その差異が生まれた背景事情を説明し(III. 架橋),今後の行政の概念をめぐる議論の可能性を模索する(IV. 展望)こととしています。

なお,現在のところ,以下の項目について順次取り上げることを予定しています。

○2017年度
・行政の概念(4月号)
・行政法と民事法(5月号)
・法律と条例(6月号)
・行政行為論と行為形式論(7月号)
・行政裁量(8月号)
・行政行為の分類(9月号)
・契約と行政行為(10月号)
・行政行為の効力(11月号)
・行政行為の無効と取消(12月号)
・行政行為の取消と撤回(1月号)
・行政立法と行政基準(2月号)
・行政上の義務履行確保(3月号)

○2018年度
・国家賠償(4月号)
・損失補償(5月号)
・行政審判(6月号)
・当事者訴訟(7月号)
・取消訴訟の審理と判決効(8月号)
・取消訴訟の訴訟要件(9月号)
・仮の救済(10月号)
・行政委員会(11月号)
・道州制と圏域構想(12月号)
・独立行政法人論と行政主体論(1月号)
・公物と私法秩序(2月号)
・行政法各論と参照領域論(3月号)

第2回ERG科研研究会

科学研究費基盤研究B「政策実現過程のグローバル化に対応した法執行過程・紛争解決過程の理論構築」(ERG科研) の第2回研究会を同志社大学司法研究科で開催しました。

【1月21日(土)】

○「国際法適合的解釈と法の多元化・多層化」(山田哲史・岡山大准教授)

グローバル化論の観点から新たな憲法理論の構築を行っている山田哲史・岡山大准教授にお越し頂き,近著で扱われている国際法適合的解釈に関する日・独・米の比較研究の成果をご報告頂きました。

○「憲法学からみた投資協定仲裁(村西良太[研究分担者])

近時国内公法学でも注目を集めつつある投資協定仲裁について,その統治機構論から見た問題点を整理し,今後の検討の方向性を示す報告でした。

【1月22日(日)】

○「国際職務共助手続の法構造」(須田守・京都大准教授)

行政手続に関する基礎理論研究で新機軸を示しつつある須田守・京都大准教授をお招きし,国際職務共助手続を検討する上で必要になる基礎理論や基礎概念について,ドイツでの議論を踏まえた報告をして頂きました。

○「国際通商におけるプライベート・スタンダードの台頭」(内記香子・大阪大准教授)

国内法の議論とも整合性の高い国際取引法・通商法の議論をこれまで提示してこられている内記香子・大阪大准教授に,国際取引法におけるプライベート・スタンダードの現状やその背景,さらには法的アプローチの際に解決が求められる諸課題に関する報告を行ってもらいました。

街区管理の法制度設計

12月16日に総務省で開催された2016年度第3回21世紀地方自治制度研究会において,「街区管理の法制度設計──ドイツBID法制を手がかりに」と題する報告をさせて頂きました。

近時,日本では街区や狭域のエリアを単位とするまちづくりの活動が盛んになっており,その法的スキームを検討する必要性も高まっています。報告では,11月下旬にドイツのハンブルク州とバーデン・ヴュルテンベルク州の現地調査を行った結果も踏まえ,ドイツのBID法制の現状と特色,日本に導入する際に論点となる諸問題を取り上げました。

時間的制約からあまり質疑の時間が確保できませんでしたが,多くの貴重なご意見を頂戴できました。ありがとうございました。

本案審理の動向と課題

7月30日に立命館大学大学院法務研究科で開催された第16回行政法研究フォーラムにおいて,「本案審理の動向と課題」と題する報告をさせて頂きました。

今年の行政法研究フォーラムは,2004年に改正された行政事件訴訟法の改正後の動向や課題を検証する企画で,全部で4つの報告がありました。このうち本案審理に関する問題を担当することとなりましたが,範囲が極めて広いことから,行政裁量の審査の問題を,出入国管理及び難民認定法の退去強制・難民認定の事件に絞って検討することとしました。この分野では,近時興味深い下級審裁判例が多く蓄積しており,そこから裁量統制や本案審理の一般論を展開できないか模索しました。

報告にあたっては,フォーラム事務局の野口貴公美先生に大変お世話になりました。ありがとうございました。

政策実現過程のグローバル化

6月13日に日本銀行金融研究所で開催された日本銀行金融研究所セミナーにおいて,「政策実現過程のグローバル化」と題する講演をさせて頂きました。

講演では,公法学におけるグローバル化論の背景を示した上で,立法・執行・紛争解決のそれぞれの局面でグローバル化論が既存の理論をどのように変容させる可能性があるかを扱いました。その後の質疑応答では,国際金融市場規制,なかでもバーゼルI・II・IIIの法的性格の問題や,EUにおける金融規制の特色・課題が議論されました。

講演に際しては,日本銀行金融研究所制度基盤研究課法制度研究グループの方々にお世話になりました。ありがとうございました。

第1回ERG科研研究会

今年度より採択された科学研究費基盤研究B「政策実現過程のグローバル化に対応した法執行過程・紛争解決過程の理論構築」(ERG科研:Enforcement and Dispute Resolution in the Globalized World) の第1回研究会を同志社大学司法研究科で開催しました。

【6月11日(土)】

○「グローバル化論のこれまでとこれから」(原田大樹[研究代表者])

本科研に先行する基盤研究B「グローバル化に対応した公法・私法協働の理論構築──消費者法・社会保障領域を中心に」(PPG科研)の成果を踏まえつつ,これまでのグローバル化論が明らかにしてきたことと,これから明らかにすべきことを提示しました。

○「グローバル行政法(Global Administrative Law)研究の現状と課題」(興津征雄[研究分担者])

2014年秋から約1年間のニューヨーク大学における研究滞在を踏まえ,現在のグローバル行政法論が何を目指そうとしているのか,そこから我々は何を学ぶべきかが報告されました。

【6月12日(日)】

○「民法学から見たグローバル化論」(吉政知広[研究分担者])

民法学がグローバル化論に対してこれまでどのように応接してきたのか,その背景にはどのような事情があるのかを,「正統性」や「多元性」といったキーワードに着目して論じる報告でした。

○今後の研究方針等の決定

初年度に取り組むべきことを確認し,中期的な報告・公表の機会についても検討が行われました。

日独文化研究所 講演会のご案内

3月末に,ドイツ・コンスタンツ大学のHans Christian Röhl教授が,関西を訪問されます。公益財団法人日独文化研究所では,この機会に,一昨年のドイツ国法学者大会で高い評価を受ける報告をされ,ドイツの学界で注目されているレール教授に,ドイツ公法学の最新の議論状況を踏まえ,グローバル化対応の公法学のあり方を展望する講演をしていただくこととなりました。詳細は以下の通りです。

  • 講演テーマ:「公法にとっての国際化の挑戦」(Herausforderungen der Internationalisierung für das Öffentliche Recht)
  • 日時:2016年3月30日(水)15時~17時(予定)
  • 場所:同志社大学寒梅館(室町キャンパス・法科大学院)6階大会議室
  • 使用言語:ドイツ語
  • 主宰:公益財団法人日独文化研究所
    〒606-8305 京都市左京区吉田河原町19番地3 Tel: 075-771-5200 Fax: 075-771-5242

準備の都合がございますので,ご参加いただけます方は,日独文化研究所理事・大阪大学大学院法学研究科の高田篤教授にメールで(takada@law.osaka-u.ac.jp[@を半角に変えて下さい])御連絡下さい。

行政における政策実現手法の新展開

2016年3月9日に国立国会図書館東京本館で開催された政策セミナー「行政における政策実現手法の新展開」において,「人口減少時代における政策実現手法の展開」と題する報告をさせていただきました。国立国会図書館調査及び立法考査局は,2011年度から外部専門家との連携による国政課題の共同研究である連携事業を行っており,今年度の行政法務課・行政法務調査室では,人口減少時代における行政活動の変容を全体テーマとして連携を行ってきました。その成果報告会となる政策セミナーでは,近時多くの中心市街地で取り組みが始まっているエリアマネジメントを素材に,その機能や理論的意義について検討する報告を行いました。

この連携事業の成果は,今月下旬に刊行される予定の『レファレンス』誌(782号・2016年3月号)に掲載され,インターネット上でも公表されます。同誌に掲載予定の論文は以下の通りです。

  • 原田大樹「人口減少時代における政策実現手法の展開」(京都大学大学院法学研究科教授)
  • 山口和人「人口減少社会ドイツにおける市民活動活性化の意義」(国立国会図書館調査及び立法考査局 専門調査員 行政法務調査室主任)
  • 田中嘉彦「英国における行政システムとガバナンス」(国立国会図書館調査及び立法考査局 行政法務課長)
  • 大迫丈志「行政の担い手とその統制」(国立国会図書館調査及び立法考査局 行政法務課)
  • 西川明子「子ども・若者の政策形成過程への参画」(国立国会図書館調査及び立法考査局 前 行政法務課)
  • 今岡直子「人口減少社会における地方自治体とICT」(国立国会図書館調査及び立法考査局 行政法務課)
  • 松田恵里「スペインの地方自治制度」(国立国会図書館調査及び立法考査局 行政法務課)

政策セミナーの際には,国立国会図書館の大迫さん・田中さん・山口さんはじめ,多くのスタッフの方々のお世話になりました。ありがとうございました。

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