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グローバル化と公法・私法関係の再編

グローバル化と公法・私法関係の再編』と題する研究書を弘文堂から出版させていただきました。本書は,東京大学の藤谷武史先生を代表者とする科学研究費・基盤研究B「グローバル化に対応した公法・私法協働の理論構築──消費者法・社会保障領域を中心に」(2012-15年度)の研究成果をまとめたものであり,この研究プロジェクトの分担研究者が編著者となっています。

本書に収録されているのは以下の論文です。

  • 浅野有紀=原田大樹=藤谷武史=横溝大「グローバル化と法学の課題」
  • 原田大樹「グローバル化時代の公法・私法関係論」
  • 興津征雄「グローバル行政法とアカウンタビリティ」
  • 浅野有紀「法理論におけるグローバル法多元主義の位置付け」
  • 横溝大「グローバル化時代の抵触法」
  • 小畑郁「グローバル化による近代的国際/国内法秩序枠組みの再編成」
  • 村西良太「財政・金融のグローバル化と議会留保」
  • 浅野有紀「国際知的財産法制に関する分配的正義および人権の観点からの考察」
  • 藤谷武史「グローバル化と「社会保障」」
  • 大西楠・テア「グローバル化時代の移民法制」
  • 横溝大「インターネットにおける非国家的秩序の様相」
  • 原田大樹「国際消費者法への展望」
  • 浅野有紀「私法理論から法多元主義へ」
  • 藤谷武史「グローバル化と公法・私法の再編」

このうち,「グローバル化時代の公法・私法関係論」「グローバル行政法とアカウンタビリティ」「グローバル化時代の抵触法」「グローバル化による近代的国際/国内法秩序枠組みの再編成」「財政・金融のグローバル化と議会留保」「グローバル化時代の移民法制」「私法理論から法多元主義へ」「グローバル化と公法・私法の再編」は,この研究プログラムの中間総括である社会科学研究65巻2号に掲載された論文を加筆修正したものです。これら以外は書き下ろしとなります。

本書は,弘文堂の北川陽子さんから刊行が提案され,約1年の期間で刊行まで漕ぎ着けることができました。緻密かつスピーディーに編集作業をしてくださった北川さんに心より御礼申し上げます。

国際性と学際性による公法の方法論の開放

ハンス・クリスティアン・レール「国際性と学際性による公法の方法論の開放」の翻訳を,自治研究91巻11号(2015年)42-75頁に掲載させて頂きました。これは2014年10月に同志社大学で開催された研究会における報告の翻訳であり,ドイツでは既に公刊されています(Hans Christian Röhl, „Öffnung der öffentlich-rechtlichen Methode druch Internationalität und Interdisziplinarität: Erscheinungsformen , Chancen, Grenzen”, VVDStRL 74, Berlin: De Gruyter, 2015, S.7-37.)。また,研究会でコメント頂いた大橋洋一先生(学習院大学),山本隆司先生(東京大学),太田匡彦先生(東京大学)からもコメントを頂戴し,末尾に掲載することができました。

本稿の掲載および研究会の開催に際しては,高木光先生(京都大学)の多大なご助力を得ました。ありがとうございました。

行政法学と主要参照領域

『行政法学と主要参照領域』と題する著書を,東京大学出版会から2015年3月に出版させて頂くこととなりました。これは,同出版会からこれまで出版されてきた『例解 行政法』(2013年10月),『演習 行政法』(2014年3月)に引き続くもので,これら2冊の理論的な基礎と広がりを明らかにすることを目的とする研究書です。同時に本書は,『例解』『演習』と読み進めてきた学習者が,これらで取り上げられている論点の理論的な前提や現在の議論動向を知りたいと考えたときに手にとってもらえる発展的な学習書ないし参考書としても利用できるようになっています。

本書を構成する13章は以下の通りであり,書き下ろしが全体の2/3近くを占めています。初出(書き下ろしに関してはその内容を報告した研究会)は次の通りです。

  • 序章 行政法総論と参照領域理論
    「行政法総論と参照領域理論」法学論叢(京都大学)174巻1号(2013年)1-20頁 

[第1部 租税法]

  • 第1章 法治主義と租税法律主義
    書き下ろし(租税法ワークショップ,2014年4月22日,一橋大学大学院国際企業戦略研究科)
  • 第2章 課税処分と租税債務関係
    書き下ろし(租税法ワークショップ,2014年4月22日,一橋大学大学院国際企業戦略研究科)
  • 第3章 行政執行国際ネットワークと国内公法
    書き下ろし(租税法ワークショップ,2014年4月22日,一橋大学大学院国際企業戦略研究科)

[第2部 社会保障法]

  • 第4章 福祉契約の行政法学的分析
    「福祉契約の行政法学的分析」法政研究(九州大学)69巻4号(2003年)765-806頁 
  • 第5章 媒介行政と保障責任
    書き下ろし(国家による「非営利型移転」の支援と公共サービスの設計・平成25年度第4回研究会,2014年1月16日,京都大学大学院法学研究科)
  • 第6章 グローバル社会保障法?
    書き下ろし(国際シンポジウム・非営利型移転における国家の役割の諸相,2014年10月7日,京都大学大学院法学研究科[報告言語:英語,報告原題 Redistribution in the Globalized Policy-Making and Enforcement Process])

[第3部 環境法]

  • 第7章 原子力発電所の安全基準
    「原子力発電所の耐震基準の多層化とその実現過程」『原子力安全に係る国際取決めと国内実施』(日本エネルギー法研究所・2014年)121-140頁
  • 第8章 原子力損害賠償と国家補償
    「行政法学から見た原子力損害賠償」法学論叢(京都大学)173巻1号(2013年)1-25頁
  • 第9章 投資協定仲裁と国内公法
    書き下ろし(台湾大学法律学院・京都大学法学研究科交流研討会,2013年9月17日,国立台湾大学)

[第4部 都市法]

  • 第10章 指定確認検査機関と国家賠償
    書き下ろし(第60回京都行政法研究会,2013年11月9日,京都市
  • 第11章 財産権としての容積率?
    書き下ろし(クラウド・コンピューティング時代の情報群の法的保護と管理の探求・2014年度第1回研究会,2014年5月12日,九州大学)
  • 第12章 特区制度と地方自治
    「震災復興の法技術としての復興特区」社会科学研究(東京大学)64巻1号(2012年)174-191頁

研究会等でご教示頂いた先生方には心より御礼申し上げます。また,本書4・5・12章の執筆に際しては,神奈川県,北九州市,品川区,横浜市,内閣官房の担当者の方々にヒヤリングを行い,実務におけるさまざまな考慮をご教示頂きました。その全てが記述に反映できているわけではありませんが,お話を伺うことによって行論の方向性が明確になりました。ヒヤリング調査にご協力頂いた方々にも感謝申し上げます。

本書の出版をもって,『例解』から続く参照領域三部作のプロジェクトが終了します。これまであまり例のない方向性の著作物の出版にいち早く理解を示して下さり,さまざまなサポートをして下さった編集担当の山田秀樹さん(東京大学出版会)と東京大学出版会の関係者の皆様方にも御礼申し上げます。また,京都大学大学院法学研究科からは,昨年度の『公共制度設計の基礎理論』に続いて2回目の出版助成を頂きました。同僚の先生方のご厚情にも心より御礼申し上げます。

日本における議会留保理論

国立国会図書館国際政策セミナー2月19日に国立国会図書館で開催された国際政策セミナー(講演会)「国会による行政統制―ドイツの『議会留保』をめぐる憲法理論と実務」において,「日本における議会留保理論」と題するコメントをさせて頂きました。

国際政策セミナーは,国立国会図書館が主として一般市民を対象に定期的に企画しているセミナーで,今年は議会留保がテーマとなりました。セミナーでは,ドイツ・ベルリンフンボルト大学のChristian Waldhoff教授の基調講演のあと,日本側から2つのコメント(もうお一人は高田篤・大阪大学大学院法学研究科教授)がなされ,その後ディスカッションとなりました。ディスカッションでは,司会の棟居快行先生(国立国会図書館)の巧みな進行のもと,さまざまな論点が取り上げられ,ほぼ時間通りに終了しました。

参加者数はおおむね200名程度で,一般市民の方のほか,国会関係者・国会図書館関係者や公法をはじめとする研究者の方々もいらっしゃっていました。個人的には,元ゼミ生2人と再会することができて,よかったです。

団体訴訟の制度設計

「団体訴訟の制度設計──特定商取引法を具体例として」と題する論文を,論究ジュリスト12号(2015年)150-155頁に掲載させて頂きました。論究ジュリスト12号の第2特集は,2014年7月に九州大学西新プラザで開催したシンポジウム『団体訴訟の制度設計』における報告(2本)とコメント(3本)をベースにしたものであり,以下の論文が掲載されています。

  • 村上裕章「団体訴訟の制度設計に向けて──消費者保護・環境保護と行政訴訟・民事訴訟」論究ジュリスト12号(2015年)114-118頁
  • 島村健「環境法における団体訴訟」論究ジュリスト12号(2015年)119-130頁
  • 斎藤誠「消費者法における団体訴訟──制度設計の考慮要素について」論究ジュリスト12号(2015年)131-143頁
  • 宇賀克也「団体訴訟の必要性──団体訴訟シンポジウムにおけるコメント」論究ジュリスト12号(2015年)144-149頁
  • 原田大樹「団体訴訟の制度設計──特定商取引法を具体例として」論究ジュリスト12号(2015年)150-155頁
  • 山本隆司「団体訴訟に関するコメント──近時のドイツ法の動向に鑑みて」論究ジュリスト12号(2015年)156-163頁

個人的には,「集団的消費者利益の実現と行政法の役割──不法行為法との役割分担を中心として」で展開した消費者団体訴訟に関する基礎理論を,具体的な法制度に展開する場合に考慮すべき内容を検討することを目指しました。その意味では斎藤論文の問題関心との共通性が高いですが,島村論文で触れられている団体訴訟の理論的基礎付けとも対応する内容も含まれています。

【お知らせ】非営利型移転における国家の役割の諸相

2014年10月7日(火)・8日(水)の2日間,京都大学大学院法学研究科主宰の国際シンポジウム「非営利型移転における国家の役割の諸相」が,紫蘭会館別館で開催されます。詳細はチラシをご覧下さい。使用言語は英語です。

2014年10月7日(火)

Keynote Lecture

13:00 Opening Ceremony

13:05 Keynote: "Empowering Non-Profit Transfers by the State" (高木光・京都大学大学院法学研究科教授)

Panel 1: Aspects of Financial Transfers into the State

13:30 "Taxation without Redistribution" (岡村忠生・京都大学大学院法学研究科教授)

14:05 "Empowering Non-Profit Public Services in the Water Sector" (Prof. Dr. Silke Ruth Laskowski, Universität Kassel)

Panel 2: Aspects of Financial Distribution by the State

15:30 "Constitutionalizing and De-Constitutionalizing Distribution: The Welfare State in German Public Law" (Wiss. Ass. Dr. Florian Meinel, Humboldt Universität zu Berlin)

16:05 "Redistribution in the Globalized Policy-Making and Enforcement Process" (原田大樹・京都大学大学院法学研究科教授)

16:40 Comment

2014年10月8日(水)

Panel 3: Changes of the State in Redistribution

13:05 "Essential Roles of the Nation State in Redistribution" (Prof. Dr. Hans Christian Röhl, Universität Konstanz)

13:40 "The Potential of Monetary Instruments in Improving Public Services" (Prof. Dr. Monika Böhm, Universität Marburg)

14:15 "Redistribution by Public Sectors and the Change of the Public Law in Japan" (毛利透・京都大学大学院法学研究科教授)

Discussion

15:30 Discussion

【お知らせ】意見交換会・科研全体研究会のご案内

京都大学大学院法学研究科主宰の国際シンポジウム開催にあわせ,下記の通り意見交換会・科研全体研究会を開催致します。ご多用のところ恐縮ですが,ご参集いただけますと幸いに存じます。

***

このたび,公益財団法人社会科学国際交流江草基金の後援を受け,高木光教授(京都大学大学院法学研究科)の招聘により,ベルリン・フンボルト大学のフローリアン・マイネル氏が来日されることとなりました。マイネル氏は近時のドイツ公法学の若手の研究としては珍しい歴史研究に取り組み,ドイツを代表する行政法学者であるForsthoffの学説を多面的かつ緻密に検討した著書を公刊しておられます(Der Jurist in der industriellen Gesellschaft, Ernst Forsthoff und seine Zeit, 2011)。現在は,ヴァルドホフ教授のもとで教授資格論文の執筆作業に取り組んでおり,次世代を代表する最若手の有力な公法学研究者の一人と目されています。

そこで,マイネル氏に上記博士論文のエッセンスと,10月7・8日に京都大学で開催される国際研究集会におけるご報告(Constitutionalizing and De-Constitutionalizing Distribution: The Welfare State in German Public Law)の内容とを織り交ぜながら,戦後(西)ドイツの給付行政法の展開をお話頂き,その後自由に討論する意見交換会を下記の通り企画いたしました。みなさま万障お繰り合わせの上,ご参集下さい。

  • 日時 2014年10月10日(金) 13時~18時
  • 場所 京都大学大学院法学研究科 法経本館3階 小会議室
  • 演題 Ernst Forsthoff  notion of 'Daseinsvorsorge' and the administrative law of the welfare state in Germany after 1945
  • 使用言語  英語・ドイツ語(報告は英語で行います)

***

このたび,京都大学大学院法学研究科の高木光教授を研究代表者とする科研・基盤研究(A)「国家による『非営利型移転』の支援と公共サービスの設計」の招聘により,コンスタンツ大学のハンス・クリスティアン・レール教授が来日されることとなりました。レール教授は,民間化や多層化に代表される国家の役割の変容と行政法理論の再構築に関する幅広い業績で知られており,また今年秋にドイツ・デュッセルドルフで開催される国法学者大会では,公法学方法論に関する報告を行うこととなっています。国家による非営利型移転の支援を検討している本研究課題との関係では,国家の役割の変容や行政法学の学際的な取り組みが方法論にどのような影響を与えるのかという問題は,極めて興味深い基礎理論上の論点と言えます。

そこで,レール教授に同報告のエッセンスを中心とする方法論上の課題をお話しいただき,その後自由に討論する全体研究会を下記の通り企画いたしました。当日は通訳・コメントゲストとして,大橋洋一教授(学習院大学)・山本隆司教授(東京大学)・太田匡彦教授(東京大学)にもご参加いただく予定です。みなさま万障お繰り合わせの上,ご参集下さい。

  • 日時 2014年10月11日(土) 13時~18時
  • 場所 同志社大学寒梅館(法科大学院)201 教室
  • 演題 Öffnung der öffentlich-rechtlichen Methode durch Internationalität und Interdisziplinarität
  • 使用言語 ドイツ語(英語による質疑も可)

「生活保護法」の適用

「『生活保護法』の適用」と題する小稿を,法学教室408号(2014年)29-34頁に掲載させていただきました。

今年度前期の法学教室は,条文に注目して,その解釈の方法を説明する特集を憲法・民法・刑法と連続して組んでおり,9月号では行政法が特集されています。憲民刑では個別の条文を対象としていましたが,行政法では1つの条文に焦点を当てることが難しいため,関連する複数の条文を挙げて解説するスタイルになっています。

行政法の条文の解釈・適用にあたっては,問題となっている条文だけではなく,関連する法律の条文,当該法律の委任を受けた法規命令の内容,委任を受けずに設けられている通達等の行政規則の内容などにも目を配り,また行政通則法と個別法,行政上の法の一般原則と個別法の間でも視線の往復を図る必要があります。この小稿では,「生活保護法」の指導指示・不利益処分を具体例にして,そのような作業の方法を説明すると共に,行政法総論の重要な諸概念を具体例に則して説明しています。

団体訴訟の制度設計

7月26日に九州大学西新プラザで開催された公開シンポジウム「団体訴訟の制度設計」において,同名のコメントをさせていただきました。

このシンポジウムは,村上裕章先生を研究代表者とする科研基盤B「現代行政の多様な展開と行政訴訟制度改革」が主宰したもので,暑い中ではありましたが,25人程度の参加がありました。まず,神戸大学の島村健先生から,環境法の団体訴訟に関する正統化論と具体的な制度設計に関するご報告があり,続いて東京大学の斎藤誠先生から,消費者法の団体訴訟をめぐる解釈論・立法論が展開されました。これを受けて,東京大学の宇賀克也先生とともに,両報告に対するコメントをさせていただきました。さらに,東京大学の山本隆司先生からも,コメントも含めた全体に対するご意見を頂戴し,その後フロアでの議論となりました。

団体訴訟に関する行政法上の諸課題やその相互関係が改めて整理され,今後の議論に向けて解決すべき課題とその方向性が明確になったように思われます。ご報告・コメントを頂いた先生方と,主宰の村上裕章先生に感謝申し上げます。

障害者差別禁止(改訂稿)

2007年に『行政課題別条例実務の要点』に収録された「障害者差別禁止」の改訂稿が,2014年5月刊行の追録に含まれています。

前回の刊行時からこれまでの間に,障害者差別禁止を内容に含む条例の数が急増すると共に,国連の障害者差別禁止条約を日本も署名・批准するという大きな変化がありました。そこで今回の改訂稿では,障害者差別禁止条約の国内実施法の現状を検討した上で,障害者差別禁止条例の意義・機能を明らかにすることと,新たに登場した条例に見られる興味深い政策実現手法を取り上げることを中心としました。

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