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2019年度第4回GNL科研研究会

科学研究費基盤研究A「グローバル法・国家法・ローカル法秩序の多層的構造とその調整法理の分析」(GNL)の2019年度第4回研究会(ローカル基礎理論チーム主催)を, 2020年2月6日(土)に東京大学社会科学研究所で開催しました。同研究会は,特別研究員奨励費「トランスナショナル・ローの法理論の研究―グローバルな土地収奪を事例として―」(代表・岡野直幸氏)との共催により,Law and Globalizationの法哲学的研究において国際的に著名な研究者であるHans Lindahl教授(オランダ・Tilburg University)を招聘して行われたものです。分担研究者・ゲスト・プロジェクト外の研究者等,計9名が参加し,大変白熱した議論が行われました(討論は全て英語)。

○「The Politics of Global Law : Human Inclusion and Exclusion」(Hans Lindahl)
 Lindahl教授の近著Authority and the Globalisation of Inclusion and Exclusion (Cambridge University Press, 2018)を踏まえて,同教授のグローバル法理論の全体像が示されました。従来のグローバル法理論では,法秩序の「空間(space)」ないし「空間性(spatiality)」の側面の理論化が十分になされていないこと,「包摂」を標榜する「グローバル化された」法秩序が固有の規範体系を持った「他者」としての法秩序を包摂することには,後者の空間的「排除」を不可避的に伴うこと,「非-法性(a-legality)」は前者の観点からの合法性/違法性(legality/illegality)という評価(すなわち法秩序への包摂)への後者からの抵抗を法理論的に表現するものであること,そこで働く「承認」の作用は,双方向的であるが非対称的(asymmetrical recognition)でしかあり得ないこと(相互承認reciprocal recognitionの論理では「他者の馴化・同調」を十分に防ぎ得ないこと)を自覚し,「ある法秩序の基体となる集団的自我=われわれ」が原初的に存在するものではなく「代表/現前re-presentation」作用によって媒介された構築物であることを踏まえて,「われわれのうちにあるわれわれとは異質な『他者』」との境界を可能な限り開放的かつ不確定(contingent)なものに保つ法理論の戦略,が強調されました。

○「コメント:Postmodern Schmitt ?」(松尾陽・名古屋大学教授)
 法思想の観点から,Lindahl教授の理論とカール・シュミットのそれが,「集団的な行為が法を作る(法に先立つ政治)」契機を強調する点では類似しつつも「集団」の捉え方において対立すること,「非-法性」をはじめとする概念がジャック・デリダの理論と近接性があること,が指摘されました。Lindahl教授からの応答では,集団に内包される「他者」の概念や「政治」を単に「決定」へと縮減しない捉え方について,さらに掘り下げた説明がなされました。

○「コメント:政治学の立場から」(田村哲樹・名古屋大学教授)
 政治理論の観点から,Lindahl教授の理論が,「政治的なるもの」の重要性を強調するエルネスト・ラクラウやシャンタル・ムフの議論と類似すること,Lindahl教授の理論では「われわれ」をいかに構成するのかという民主主義の理論が明らかにされていないこと,が指摘されました。Lindahl教授の応答では,ラクラウやムフとの異同や,「われわれ」の前にまず代表/現前の作用があることの不可避性,が説明されました。

規範の空間において「グローバル」と「ローカル」が交錯するダイナミズムを法理論的に明らかにしようとするLindahl教授の議論は,まさに本科研のローカル基礎理論チームが取り組む理論的課題に正対するものであり,非常に有益な議論の機会を持つことができたと考えています(藤谷武史)。

第13回 ゼミ論文報告会

本日はゼミ論文の提出会でした。

ゼミ生全員がそれぞれのゼミ論文の要約とゼミの感想を述べ,原田先生より個人とゼミ全体に関して講評を頂きました。

ゼミを通じて養った論理的思考や文章作成能力などを各々の今後の活動に生かすことができたらと思います。(小池)

第12回 ゼミ論文経過報告④

本日はゼミ論文の4グループ目の経過発表が行われました。

占部君は,ナッジ型の政策手法に関して政府が行動ターゲティング広告を行う場合を想定し,検討をしてくれました。具体的には,既存の民法や消費者契約法では,行政の行動ターゲティング広告を規律することが困難であると考えられるため,その解決策として立法により情報提供義務を行政契約に対しても課すことを提案してくれました。(小池)

第11回 ゼミ論文経過報告③

本日は3グループ目のゼミ論文経過報告が行われました。

1人目の発表者の畦地くんは,ビットコインなどの仮想通貨で使用されているブラックチェーン技術の一般的な応用について,個人情報保護法との関係性から発表をしてくれました。

2人目の発表者の山口さんはふるさと納税制度について,従来の目的と,返礼品目的の寄付が多い現状との差を問題点として,現行の制度を活かしつつ元来の目的に沿うような改善の必要性を発表してくれました。

2人とも議論の中で,今後さらに活用が見込まれたり,活発に利用されるであろう技術や制度について深く話してくれ,非常に学びのあるゼミ活動となりました。(古閑)

第10回 ゼミ論文経過報告②

本日は2グループ目のゼミ論文経過報告が行われました。
今回のゼミ活動には福岡県の東筑高校の生徒が研修で見学に来てくれました。

私,古閑はDID(解離性同一性障害)患者による犯罪の未然防止について,精神保健福祉法の措置入院の今担っている役割や,制度としての疑問点について発表しました。
原さんは育児休暇の取得拡大に向けて,現状のさらなる分析と,企業に働きかけて育休の質を高める施策について,問題点も考慮しつつ発表してくれました。

質疑の時間では高校生も積極的に質問をしてくれ,発表者も改めて理解を深めることができ,また最終的な論文執筆に向けて調査が必要な箇所も明確にすることができました。(古閑)

第9回 ゼミ論文経過報告①

本日は1グループ目のゼミ論文の経過報告が行われました。

伊藤さんは「防災行政の現状と地区防災制度」というテーマで,新潟県中越地震などを経て歴史の中で防災制度のあり方がどのように変化したか説明をした上で,東日本大震災の後に生まれた地区防災計画制度のメリットや課題等について検討してくれました。

小池さんは「地域との調和図った民泊制度の実現に向けて〜京都市を例に〜」というテーマで,京都市の独自条例を中心に調査し,地域の住民の生活やコミュニティと両立させるために,地域の実情に合わせてどのような特徴のある条例が制定されているのかを発表してくれました。

和多田さんは,「高齢運転者とその安全対策を巡る諸問題」というテーマで,高齢者ドライバーの事故への解決策として試験内容の改善,自主返納の促進,限定免許の導入の3案の内容とそれらを導入する上での課題について検討してくれました。(小池)

2019年度第3回GNL科研研究会

科学研究費基盤研究A「グローバル法・国家法・ローカル法秩序の多層的構造とその調整法理の分析」(GNL)の2019年度第3回研究会(グローバル実証チーム主催)を,2019年12月8日(日)に北海道大学東京オフィスで開催しました。分担研究者等約10名が参加しました。

○「ハードローとソフトローの理論的な研究の促進を目指して」(清水真希子・大阪大学教授)
民事法の立場からのソフトロー研究の成果を踏まえ,トランスナショナルな局面における国際法学のソフトロー論や,法哲学における法多元主義の議論との対比を試みる興味深い内容でした。議論の中では,民事法・公法・国際法のそれぞれのソフトローに関する議論の相違や,法哲学における議論との関連状況,さらにモデル法の理論的扱いなどが取り上げられ,白熱したやりとりになりました。

第8回 ゼミ論文テーマ報告④

4グループ目のゼミ論文のテーマ報告が行われました。

森山さんは,「文化財の保存活用のための法整備について」と言うテーマで,昨今の文化財の保護や推進を巡る動きを調査し,現状の法制度合理的なものであるか検討してくれました。」

占部さんは,「ナッジ理論の行政への適用と強制の概念について〜コンパクトシティを題材に〜」というテーマで,コンパクトシティ化を推進する上で行動経済学上のナッジ理論を活用できないか居住誘導の為の従来の方法も紹介しながら検討してくれました。

本日でゼミ論文のテーマ発表は終了しました。

来週からはゼミ論文の経過発表が行われます。(小池)

第7回 ゼミ論文テーマ報告③

今回は3グループ目のゼミ論文テーマ報告でした。

畦地くんは今流行のキャッシュレス決済の分野のうち,ビットコインなどの仮想通貨の普及にかかる問題点について発表してくれました。
また,山口さんは総務省が新制度を発表した,ふるさと納税の地域指定とそれをめぐる訴訟について発表してくれました。

両者ともホットな分野について発表してくれ,関係法律のみならず最新の技術や政策について学ぶことができました。(古閑)

第6回 ゼミ論文テーマ報告②

2グループ目のゼミ論文テーマの発表が行われました。

古閑さんは,「精神疾患患者の人格同一性と刑事責任からの保護をめぐる諸問題」というテーマで,解離性同一性障害に罹患した人物の別人格が犯した犯罪に関して被告人に刑事上の責任能力が認められるか否かを判例や学説を踏まえて検討してくれました。

原さんは,「男性の育児休業取得の現状と課題」というテーマで,男性の育児休業の取得率を向上させるために現行の制度が十分であるか検討してくれました。発表後は,育休取得者の育児の質を向上させる方法などについても議論がなされました。

二人テーマが共に大変現代的であり,全員が関心を持って質問や議論を行う姿が印象的でした。(小池)

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