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第15回 透明性原則の行政法学的考察
今回の報告は、行政における「透明性原則」という法の一般原則を憲法理念にまで高められるのではないか、ということでした。意見としては、現状の問題点がはっきりしない、憲法理念に高めることによるメリットは何か、などが出ました。
2005.10.17 | Comments(3) | Trackback(0)
中尾健太 | 2013/04/14 17:21
小澤様
コメント,ありがとうございます。
①透明性概念を冒頭で明確に定義すべきとのご指摘について
この研究を始める際に透明性に関する文献を色々と読んでみましたが,透明性の内容は論者によってバラバラです(レジュメ脚注48-50)。結局,行政の透明性そのものを統一的に定義することはできない(また,それらの定義を集約して統一するだけの意味があるかは疑わしい)というのが現時点での管見です。実際の法律でも行政組織の透明性について規定してありますが,具体的に何を意味するかは条文には規定されていません。個別の法領域・政策領域で不統一的に解釈運用されているのが現状だと理解しています。民主主義とか平等という語句が統一的に使用されている訳ではない,ということと同様です。
ただし,行政の透明性を考察する上では,行政情報の取り扱い(行政情報の提供手段)という透明性概念の共通項の存在に注目すれば,(透明性がいかなるものかは定義できないとしても)透明性がいかなる場合に確保されるか,ということを理解することができます。そこで本稿では,(透明性の確保手段としての)行政情報の提供手段に注目し,これらを透明性の定義の前提条件(レジュメ序章3-2)として整理し,これに沿って現行法制度でいかなる透明性の確保が試みられているかを検証することを,目的としています。それゆえ,透明性「そのもの」の定義を敢えて保留しています。強いて定義すれば,行政の透明性とは「行政情報の提供可能性」ということになります。
透明性概念そのものの定義が必要ではないかと言われると,確かに必要性を感じていない訳ではありません(非常に悩ましいところです)。これまでの行政法学でも透明性概念に触れられることはありましたが(レジュメ31頁),それらとはもっと異なる意味での透明性概念が,法学界でも現実界でも使用されるようになっています。ならば,そのよう多義的な透明性概念に精緻な定義を与えるよりも,どういう法制度が整備されていれば「行政の透明性が確保されている」と言えるのかということを問題として扱うべきではないか,というのが管見です。研究を最後まで進めるまでは明確な結論は出せませんが,透明性の内容は,終局的に議会制定法(更に上位の憲法)において個別に具体化されるべきではないか,と考えます。
②「透明性の氾濫」状態が解決されないとのご指摘について
私自身は,「透明性」という語句が氾濫しているのは,それが使用されている各領域での文脈の差異が原因であると考えています。それゆえ,ある領域での「透明性」は別の領域で通用するものではないし,通用させるだけの意義も無い,と考えています。
「氾濫状態が問題である,解決しなければならない」というような氾濫状態を問題視する立場よりも,「氾濫状態の原因は何か,今後そのような法現象にどう向き合うべきか」というような氾濫状態を受け止める立場から,行政の透明性を考察することを念頭に置いています。したがって,本稿では氾濫状態を解決することを目的としている訳ではありません。
質問の趣旨に沿わない点があったら,申し訳ありません。
失礼します。
小澤俊哉 | 2013/04/14 17:21
丁寧なコメントありがとうございます。レスポンスが遅れてしまって申し訳ありません。
コメントを頂いた後に考えていたことは,主に二つで,一つはコメントの①,②を受けての方法論的なこと,もう一つは論文の内容からは少し外れますが,新しい透明性概念を字面通りの単なる透明(=公開)に加えて民主主義原理を要素としていると捉えることと,議会の公開性を要素の一つとしている本質性理論との関係だったんですが,結局,両方とも自分では何もまとまった考えも出せず,時間だけが経ってしまいました。。。
本質性理論云々は個人的に気になっただけなので,特に気にしていただかなくて構わないです。①,②の問題についてはレジュメの構成は大体理解できたのですが,お答えしていただいた方法で論文が最終的にどのような形になるのか,というのが自分にはまだわからないので,後は最終的にどのようなものになるかを楽しみにしていたいと思います。結局あまり有用な問題提起できず申し訳ありません。
全く関係ない話ですが,ブログで議論するということ自体から,サンケイ新聞意見広告訴訟の事案が少し体感できてしまった気がします(笑)
では失礼します。
小澤 | 2013/04/14 17:20
えー,放って置くとブログも休眠してしまいそうなの勢いなので,管理人が少し書いてみます。
今回の報告の感想ですが,「透明性」の用語法がはっきりしないと冒頭で書いてある以上,以後になんの分類・説明もなく「透明性」の用語を使う(P11の表中での「透明性の目的」が「行政自体の透明性の向上」である,など)ことは避けたほうが良いのではないか,また,透明性の分類を序章の早い段階で暫定的な形ででも提示し,その分類に沿って展開がなされないと(序章3での分類と以下の展開との関わりも今ひとつわからない)結局,「透明性の氾濫」が解決してないままなのではないか,などと思いました。(読み足りないだけなら申し訳ないです。)
マジメに書いた割りにあまり有用な批判にもなってないですね。これはもしや休眠を促進してるのかも。。。どうせならもっとポップな(?)コメントが良いのでしょうか,どんなコメントをしようか暗中模索な管理人です。みなさん,えいやっ,とコメントをしていただけると嬉しいです。