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paco Home>授業関連>演習科目一覧(九州大学)>frontier>[九大]行政法演習18期(10年度)

第28回 ゼミ論文発表会

提出されたゼミ論文の要旨は以下の通りです。

○大相撲問題(内田)

2008年に始まった新公益法人制度に伴い,既存の法人と同じく日本相撲協会も2013年までに新たな公益法人制度に移行する必要が生じた。しかし,野球賭博問題をはじめとした多くの問題を抱える相撲協会は,公益性が認められず新たな公益法人を設立できなくなるおそれがある。長い歴史を持ち,日本の国技たる相撲を効果的に維持発展していくためには,新たな公益法人に移行するこ とが望まれる。本論文では,協会が抱える様々な問題の原因となった相撲界の諸制度を分析し,新たな公益法人へ移行する妥当性を検討し,公益認定のために協会が改善すべき主なポイントについて考察を加えている。第1,2章では相撲協会の仕組み,諸制度の概要およびその問題点について論じ,年寄株の高騰や部屋制度,維持員制度などの相撲界特有の制度が,暴力団が相撲界に関与する原因であると結論付けている。第3,4章では現行の公益法人制度と新しい公益法人制度を概観し,新しい公益法人に移行することによるメリット,逆に一般社団法人・財団法人に移行することによるデメリットについて論じ,協会が新しい公益法人へ移行する必要性を述べている。第5章ではそれまでの検討を踏まえて,協会が公益認定を受ける際の主要な点について検討している。そして,本場所事業費などの事業費が「公益目的事業」として認められること,そのためには行政庁の裁量の観点から暴力団との関係根絶が必要であると結論付けている。

○地域主権改革と地方財政(前原)

地域主権改革によって2000年に地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(以下,地方分権一括法という。)が制定され事務の配分において劇的な改革がなされた。しかしながらこれを担保する財源の移譲は非常に限定的なものにとどまっている。「一括交付金」はこれを改善するために掲げられたものであるが,これについても不十分である。現在の地方財政において地方交付税の占める役割というのは非常に大きい。交付税額が増加傾向にあるとともに,地方財政の依存傾向も強まってきている。交付税額の決定は基準財政需要額と基準財政収入額の差額である。この算定基準が地方財政を拘束し,地域主権と逆行する結果となっているというのが批判の的になっている。 地域主権の実現のためには権限と財源の移譲がセットで行われることが必要である。自分たちが行うことについては自己の財源でまかなうことが最適な在り方である。しかしながら,実際にこのようにすれば徴税力の地域間格差非常に大きい日本において頓挫する地方公共団体も現れてくる。そこでこのギャップを修正することが地方交付税である。ここでは国の裁量が及ばないようにする必要がある。そこで,交付税額が機械的に確定できるような算定基準を導入すべきである。財源保障の観点と財源調整の観点を両方含んだ算定基準である。この財源的裏付けにより本当の意味での地域主権が出来上がっていくのである。

○虐待する親へのケア・支援(久保田)

平成21年度,児童相談所における児童虐待の対応件数は,44,210件にも上った。多くの子どもたちが,児童相談所によって保護され,親と離れて生活している。この子どもたちを再び親元に帰すことを,家族再統合という。 家族再統合の実現には,親へのケア・支援が欠かせない。虐待をする親は,親自身の虐待体験,周囲からの孤立,子育て不安といった様々な悩みを抱えており,これらを解決しなければ,子どもを家庭に帰しても,虐待が再発するおそれがあるからである。 しかし,多くの親が,虐待の事実を認めず,ケア・支援を拒否してしまう。ケア・支援を実施するにしても,その技術が確立されていない,児童相談所の慢性的な人手不足でケア・支援まで手が回らないといった問題がある。そのため,家族再統合をあきらめなければならないケースが多い。 この現状を変えるためには,①家庭裁判所が親にケア・支援を受けるよう命令できるようにすること,②ケア・支援モデルを作成すること,③児童相談所職員の増員とその専門性を確保し,さらには,関係機関との連携を強めることによって虐待対応全体を改善していく必要があるだろう。

○「悪魔ちゃん」事件と名づけ(安井)

昨今の親の価値観の多様化に伴い,子の名の多様化が見られる。その中で,一時社会の耳目を大いに集めた「悪魔ちゃん」事件(東京家裁八王子支審平成6年1月30日)のように,子がその名によって人格を害されるおそれも出てきた。本稿は,そのような社会情勢のもとで,どのような命名の制限が望ましいかについて論じるものである。 現行の戸籍法は,子の名には常用平易な文字を用いることとしている(戸籍法50条1項,同法施行規則60条)。活字等の公的福祉に着目したもので,ほかの観点からの制限は,現行法上採られていない。しかし,「悪魔ちゃん」事件をみていると,現行法の制限に加え,子の福祉の防衛という観点の制限も必要であると思われる。 命名の制限には,①意味の制限,②文字の制限,③読みの制限があるが,①と②の制限を行うことが妥当である。それにより,子の福祉を担保し,かつ公共の福祉に適合することができる。その具体的方法として,行政が,子又は公の福祉に反する名の受理を拒否できる根拠となる一般条項を定め,また,現行法の文字制限の枠組みを維持した制度が望ましい。 現行法より厳しい制限を課す制度であるので,当事者救済として,家事審判による不服申立て制度(戸籍法121条)や,国家賠償制度をより活用する必要がある。また,子が戸籍のない状態を作らないために,出生届を「名未定」として受理する取扱いが,名について問題のある出生届についてはされるべきである。

○年金支給開始年齢と定年年齢を接続させるために(木村)

日本では急速な高齢化に伴い,年金制度改革が行われ,年金支給開始年齢が60歳から65歳へと段階的に引き上げられることとなった。そこで,高齢者雇用政策に変化が迫られることなり,平成16年「高年齢者等の雇用の安定に関する法律」(以下,高年法という。)が改正され,65歳までの雇用の確保が事業主に義務付けられることとなった。高年法の影響は大きなものがあり,定年制を設けない事業所が2割強,雇用確保措置をとる事業所が9割を占めるに至ったのである。しかしながら,高年法は雇用確保措置の導入はもたらしたが,60歳以降継続して雇用を行う者の選定基準を設けることを許容しており,実態として,希望者全員の雇用がなされているわけではないのである。 この状況の解決策として本稿では,高年法9条2項に雇用確保措置を行わない場合には法違反を行ったことに伴う制裁的効果として,定年制の定めのないものとみなすか65歳定年を実施したものとみなす私法的効果を有する規定を設けること,また,継続雇用の選定基準設定にあたっても65歳までの雇用確保という高年法の基本目標,理念・目的,高年法9条1項にいう希望者全員雇用の原則を踏まえるならば,基準対象者の選抜は整理解雇に準ずるものとして整理解雇が有効とされる4要件を踏まえて手続的規制を明確にすることを提案する。

○非正規雇用者と住宅のセーフティーネット(とろろ)

本稿は,現在日本増加している非正規被用者について,住宅のセーフティネットとしてどのような施策が必要かを検討するものである。 非正規被用者は,正社員と比べて相対的に賃金が低いために住居の確保が難しく,また不安定な雇用形態から,職を失うことが住居の喪失に直結しやすい。日本では,2008年末の「年越し派遣村」が注目を集めるまで,住居に焦点をあてたセーフティネットは構築されてこなかった。その背景として,日本の住宅政策や企業福祉が,正規被用者を中心に据えていたことが挙げられる。住宅政策は,中間層の持家取得を促すことに重点をおいて行われたため,低所得者向けの公営住宅や民間の賃貸住宅に関する施策が手薄であった。また,正規被用者と非正規被用者,大企業と中小企業で大きな差があった。すなわち,非正規被用者は,賃金が安いことに加えて,住宅政策や企業福祉の恩恵を十分に受けられないことから,正規被用者に比べて住居の確保が難しくなっているのである。 「派遣村」以降,従来セーフティネットとして考えられてきた雇用保険と生活保護の間を埋める「第二のセーフティネット」と呼ばれる各種補助制度が創設された。しかしながら,これら第二のセーフティネットは,失業,離職していることがその主要な要件である。そのため,不安定な非正規被用者として働いている人に直接には機能しない。非正規被用者が,生活保護に陥る前に使える制度が必要である。その対策として,筆者は,①民間賃貸住宅の買い上げによる公営住宅数の増加・公営住宅の入居条件を緩和させること②就労しているか否かを問わない家賃補助の創設が必要だと考える。

○地上デジタル化問題(権藤)

日本では2011年7月24日に地上デジタル放送が完全実施され,アナログ放送が一斉に終了する。その目標として「電波の有効活用」をして周波数を空けるということがあるという。他にはゴースト(二重映り)がなくなること等がメリットとして挙げられている。地上デジタル放送視聴のためにはテレビやチューナー購入など国民は負担を負うが,このことに対しては不満の声も上がっている。総務省は低所得者層等を主な対象とした支援を行っており,独自の取り組みを行っている自治体もある。この地上デジタル 放送完全移行の経緯を見ると,法律としては2001年に施行された電波法改正法が挙げられるものの,その条文には「地上デジタル放送化」や「アナログ放送終了」という言葉はなく,直接的には周波数割当計画によってアナログ放送終了が決められたのだと言える。手続きという面からこの地上デジタル放送完全移行について考察すると,法律の留保原 則に従っているのかどうかが問題となる。重要事項留保説の立場をとるとこれは「アナログ放送の終了」が国民に大きな負担を強いることにより重要事項であるから,法律の留保原則に抵触していることになる。また同時に内容の面から考察すると,周波数割当計画の変更公示から10年というアナログ放送の終了期日の設定は,テレビの性質等やデジタル放送が開始された時期を考慮すると短いように思われる。国は更なる支援を行う等して国民の負担を減らすか,法律を改正してアナログ放送終了の期日を延長すべきである。

○福岡市とオリンピック招致(林田)

本稿では,オリンピック のもつコンセプトに着目した。時代により推移してきたオリンピックのコンセプトのから,福岡オリンピックの意義について考えたい。第1章では,これまでのオリンピックの変遷をそのコンセプトから見ていき,そして今回の福岡案について紹介する。福岡案では福岡の中心から近い場所にメイン会場を設けるとしたが,その対象となったのが須崎であった。須崎埠頭の再開発が進まなければ福岡案の成立は難しい。第2章では,その福岡案の正否の鍵となる須崎埠頭の問題について個別に考える。第3章では私見として,各オリンピックのコンセプトに照らした福岡オリンピックについて論じる。また,21世紀型のオリンピックの開催というコンセプトを表した福岡案が20世紀型のオリンピックから抜け出せられたのかをみていく。

第27回 ゼミ論文経過報告10

通常のゼミの形式では今回が最後となりました。

・「『悪魔ちゃん』命名事件と名づけ」(安井)では,一般条項を設けて子の福祉を害する場合には届出を拒否できるという私案が示されました。最終的な訴訟の局面をより深く検討することが今後の課題となります。

・「地上デジタル放送移行に伴う問題の考察」(権藤)では,地デジの決定過程と負担の問題を中心に議論を整理していく方向性が提示されました。まだ調べ切れていない部分があるので,時間との戦いになりそうです。

第26回 ゼミ論文経過報告9

新年初回のゼミとなった今回もオープンゼミでした。

・「大相撲改革」(内田)では,新しい公益法人制度に相撲協会が移行する際の問題となりそうな論点が取り扱われました。条文上の要件との対応関係をもう少し詰めるべきだとの意見が出されました。

・「年金型生命保険二重課税問題」(福嶋)では,還付手続の問題が主として議論されました。国家賠償の利用可能性や,源泉徴収の法関係の解明が今後の課題となります。

第25回 ゼミ論文経過報告8

今週はオープンゼミで,多くの見学者を迎えて報告者は緊張していたようです。

・「地域主権確立のための地方交付税改革」(前原)では,前回までとは違って地方交付税の改革の議論が中心でした。地方交付税制度の問題点を把握する際に,それが制度の問題なのか運用の問題なのかを区別して議論した方がよいとのアドバイスがなされました。

・「オリンピックと福岡市の再開発」(林田)では,前回までの方向性と転換して,オリンピック招致の際に議論されていた福岡市の再開発問題が中心になりました。都市計画や市街地再開発に関する法的しくみの分析が不十分であることが問題点として指摘されました。

第24回 ゼミ論文経過報告7

今回は笠木先生にもご参加頂き,社会保障法の観点から懇切なご指導を頂きました。

・「年金支給開始年齢と定年年齢を接続させるために」(木村)では,論文の目的を明確化した上で,高齢者雇用の安定のためにどのような手段がとられうるかが議論されました。政策目的を頼明確にした上で,とりうる手段を検討する作業が今後必要になりそうです。

・「虐待する親へのケア・支援」(久保田)では,児童相談所の体制整備や家庭裁判所との役割分担についての私見が提示されました。家庭裁判所がなぜより多くの役割を担うべきなのか,また親への支援と親権喪失との関係について,活発な質疑がなされました。

第23回 ゼミ論文経過報告6

今回から最終回の報告に入りました。

・「非正規被用者のセーフティーネットとしての住宅」(とろろ)では,住宅困窮者に対する行政施策を整理した上で,住宅手当を創設する私案が示されました。政策手段としての適切性や財源調達の問題をさらに検討する必要がありそうです。

・「若者と雇用」(秋吉)では労働者派遣制度にしぼった検討がなされました。派遣契約の解除に関する法制度のあり方や労働者派遣制度そのものの制度趣旨の検討,さらには労働者派遣法の検討が若者の雇用の改善に資することになるかどうかを精査することが今後の課題となります。

第22回 ゼミ論文経過報告5

今回もゼミ論文経過報告が行われました。

・「地上デジタル放送移行に伴う問題の考察」(権藤)では,地上波デジタルの停波を予定通りにして良いか,国民負担のあり方はどうなっているかが議論されました。他方で,誰がどのように政策を決定したのか分かりにくいことも問題として指摘されました。

・「年金型生命保険二重課税問題と還付手続」(福嶋)では,今年7月に出された最高裁判決の考え方と1審・2審判決との違い,還付手続上の問題点が提示されました。

第21回 ゼミ論文経過報告4

今回もゼミ論文経過報告が行われました。

・「「悪魔ちゃん」命名事件と名づけ」(安井)では,戸籍法の定めている制度の分析と,悪魔ちゃん命名事件の検討が中心となりました。法制度の問題点の把握は進んでいるので,最終的にどの方向で結論を出すのかが課題となりそうです。

・「文化的価値と公益性から見た大相撲改革」(内田)では,相撲の歴史や公益法人制度改革の問題が取り扱われました。「文化的価値」とは何かを巡ってさまざまな側面からの議論が行われました。

第20回 ゼミ論文経過報告3

今回もゼミ論文作業の経過報告が行われました。

・「地方財政の硬直化」(前原)では,国から地方への財源移転の適否が問題になりました。報告者の偏在性が少ない税源への増税案に対して,財政調整はそれでも必要なのではないかという意見が出されました。

・「オリンピック開催の問題点」(林田)では,論文の目指す方向性が焦点になりました。福岡での開催という切り口で書いていくのか,あるいはオリンピックの決定手続の改善案を示すのかなどが議論されました。

第19回 ゼミ論文経過報告2

今日は笠木先生にも参加して頂き,専門の見地からのご指導を頂きました。

・「非正規被用者のセーフティーネットとしての住宅」(とろろ)では視野を広げ,労働・社会保障制度と住宅の法制度との連携関係が議論の中心になってきました。社会手当や税金利用の可能性,あるいは借地借家法制との接点が今後の課題となりそうです。

・「若年者の雇用」(秋吉)では,非正規雇用の問題点とその対策が提示されました。今後はそれぞれの対策の法的な根拠や資金について精査する必要がありそうです。

第18回 ゼミ論文経過報告1

今回から2巡目の報告に入りました。今回の報告者はいずれも順調に調査研究が進んでいるようでした。

・「虐待する親へのケア・支援」(久保田)では,児童虐待への対応のために家庭裁判所に更なる役割を期待すべきであるとの私見が示され,それについて議論がなされました。

・「高齢者雇用」(木村)では,社会保障制度の維持可能性の観点から高齢者雇用の必要性を検討する方針が示されましたが,視点をさらに明確化する必要性が指摘されました。

第17回 ゼミ論文構想報告3

ゼミ論文構想報告の3回目では以下のテーマが扱われました。

・「『悪魔ちゃん』命名事件と名づけ」(安井)では,戸籍法の制度が対象となり,意味上不適切な命名を避けるためにどのような規制手段が考えられるか,そもそも規制の必要性が論証できるのかが議論されました。

・「行政手続への国民参加」(権藤)では,パブリック・コメント制度の現状が問題点として指摘されました。

・「年金型保険二重課税問題」(福嶋)では,今年7月に出された所得税と相続税の二重課税に関する最高裁判決に見られる税法上の問題が扱われました。

今回で1巡目の報告が終わりました。2巡目では,問題の原因を法制度分析によって明らかにする作業がより求められることになると思います。

第16回 ゼミ論文構想報告2

ゼミ論文構想報告の2回目となった今回は,次のテーマが報告されました。

・「地方財政の硬直化」(前原)では,地方の政策の自由度を高めるため,地方の財源面での自主性をどう確保するかが問題であるとの指摘がなされました。

・「大相撲問題」(内田)では,相撲協会の度重なる不祥事が,新しい公益法人制度との関係で分析されるとの方向性が示されました。

・「福岡でのオリンピック」(林田)では,福岡でオリンピックを開催することの是非や,開催する場合にどのような方法・手続がとられるのかが議論されました。

第15回 ゼミ論文構想報告1

後期のゼミが始まりました。今回は社会保障法に関連するテーマでもあったため,笠木先生にもお越し頂き,ご指導をお願いしました。

・「非正規被用者のセーフティネットとしての住宅」(とろろ)では,日本の住宅政策の特色や,その結果生じている非正規被用者の住宅確保難が問題として示されました。

・「虐待する親へのケア・支援」(久保田)では,児童虐待に対する法制度の中で親への支援やケアの問題が十分に考慮されていないという問題関心が提示されました。

・「高齢者雇用」(木村)では,高齢者雇用に関する問題が包括的に取り上げられ,高齢者雇用の安定をめぐる法制度の概観が報告されました。

・「若者の雇用」(秋吉)では,生産力の向上の観点から,若年層の雇用問題,とりわけニートの問題が議論の対象になりました。

第10回 公法上の当事者訴訟

今回は,行政上の当事者訴訟を議論のテーマに据え,在外国民選挙権訴訟(最大判平成17年9月14日)を扱い,議論を行いました。最近は在日外国人参政権が取り沙汰されていますが,今回はその逆バージョンと言えるかもしれません。
本件では,原告が4つの請求を行い,そのうち①自らに選挙権があることの確認と,②損害賠償についてのふたつが,本案審議され,請求が認容されています。今回のゼミでは,①については,今後その射程が及ぶ範囲,②の判示については,先例と考えられる最判昭和60年11月21日との関係性が中心となりました。
憲法の授業で,違憲判決の多くは選挙権に関するものと南野先生に教わった記憶がありますが,本件もその例にもれず,選挙権に関して違憲判断がなされています。それだけ,選挙権というものは重要であるということの裏返しだと考えます。今回はそれらのことに関する考えも深まった有意義な議論ができたと思います。参議院選挙を目前に控えて,非常にホットな話題でした。報告者の方はお疲れ様でした(安井)。

第9回 差止訴訟

今回は,差止訴訟がテーマでした。扱った判例は,鞆の浦訴訟(広島地判平成21年10月1日)です。鞆の浦は,ジブリ映画「崖の上のポニョ」のモデルとなったところでもあり,歴史的,文化的価値のある景勝地として有名です。
今回主に議論になったことは,差止訴訟特有の議論である重大な損害要件,補充性要件についてです。また,原告適格についても,鞆の浦に住む住民には全員にこれを認め,原告に一部いた,鞆の浦に住んでいないが仕事などでそこを毎日訪れている人には,原告適格を認めなかった広島地裁の判断方法についても議論がありました。
差止訴訟は,「前にずらされた取消訴訟」とも言われますが,取消訴訟とは違う独特の論点がありました。今回のゼミで,それらに対する理解も深まったと思います。ジブリ映画は「紅の豚」しか認めない広報係ですが,「崖の上のポニョ」もぜひ見てみたいと思います。報告者の方,お疲れ様でした(安井)。

第8回 義務付け訴訟

今回は,義務付け訴訟の問題について,東京高判平成21年3月5日(ガーナ人在留特別許可義務付け訴訟)をとりあげて議論しました。
司会が,急造+先週発表分の訂正レジュメのことで頭がいっぱいだった私ということで,個人的にはどうなることやらと思いましたが,杞憂に終わってなによりでした。今回は入管法49条1項でさだめられた異議の申出が,義務付け訴訟における「申請」ということができるのかについて焦点が当てられ,議論がされました。
今回の判例は,背景となる出入国管理制度がまず難しく,さらに原告の請求が複数あり……ということでなかなか難しいものだったと思いますが,報告者の準備もあって有意義な議論になったと思います。義務付け訴訟についての理解は深まったでしょうか? 広報係は深まった部分をまた埋め立ててしまわないように頑張りたいと思います。報告者の方はお疲れ様でした!
今週は金曜日にお待ちかねのゼミコンがあります! 集合は18時50分に岩田屋西通り側,詳しいことはコンパレク係の方からまた連絡があるかと思います。コンパレク係の方は,コンパのセッティングご苦労様でした。
また,来週はゼミの写真撮影です。16時25分くらいまでには,集合をよろしくお願いします(安井)。

第6回 原告適格

今回は原告適格をテーマに,小田急訴訟が扱われました。小田急訴訟とこれまでの原告適格の判例との違いや,小田急訴訟後の原告適格判断の流れ(特に場外車券場事件判決)が議論の対象になりました。

第5回 処分性

今回は,処分性の判例ということで,最大判平成20年9月10日(浜松市都市区画整理事業計画事件)について議論を行いました。
議論の中心は,本判決について,なぜ処分性が認められるのかについての補足意見,意見のうち,どれが今回の事例においては望ましいか,でした。また,早い段階で処分性を認めてしまうと,逆に出訴期間の要件が厳しくなってしまうことから,処分性を認める時期むやみに早めることも問題があることについては,留意が必要そうです。
ほかにも,たくさんの論点について議論がされ,今回は大変有意義だったと思います。広報係はその中にあっても「1日1発言」を最低限しかこなすことができなかったように思います。次以降,頑張りたいと思います!
報告者の方,お疲れ様でした(安井)。

第4回 行政法Iの復習4

今回は,最後の「行政法Ⅰの復習」ということで,「行政契約」,「行政計画」,「実行性担保手段」について報告,議論を行いました。主に,
・「行政契約」…行政契約における私人の救済(行政上の当事者訴訟)について
・「行政計画」…行政計画の処分性(判例の傾向)
・「実効性担保手段」…行政刑罰と行政上の秩序罰の違い,宝塚パチンコ事件(最判平成12年7月9日,民集56巻6号1134頁)はどう解決すべきか
などを議論しました。
また,レジュメについては,小学校高学年に説明するくらいのつもりで分かりやすくするように心がけることについて,再度確認しました。
来週からはいよいよ判例を詳しく検討することになります。準備が大変だとは思いますが,頑張っていきましょう。報告者のみなさんお疲れ様でした(安井)。

第3回 行政法Iの復習3

前回に続いて,「行政法Ⅰの復習」ということで,「行政裁量」,「行政手続」,「行政指導」についての報告と,議論が行われました。
内容的には,
-「行政裁量」・・・行政裁量と他の裁量のない行政活動がもつ司法権とのかかわり
-「行政手続」・・・行政活動の手続上の瑕疵と取消しと,審査基準と処分基準について法が課す義務の違いについて
-「行政指導」・・・行政指導の担保としての応答留保等が許される「特段の事情」について
が特に中心となりました。
今回は,なかなか難しいことをやったように思います。忘れないようにしないと! 報告者のみなさんお疲れ様でした(安井)。

第2回 行政法Iの復習2

「行政法Ⅰの復習」ということで,「行政の基準設定行為」,「公定力」,「行政行為の無効と取消」についてそれぞれ報告を行い,のちに議論を行いました。
今回から原田先生も議論に参加され,ゼミの活動が本格的に始まったという感じです。
具体的な内容としては,
-「行政の基準設定行為」・・・「委任命令」と「執行命令」の違い及び,その分類の意義
-「公定力」・・・公定力の現代的意義(特に取消訴訟の排他的管轄との関係)と,農地委員会と地方自治の関係について
-「行政行為の無効と取消」・・・無効と取消の違いと,その要件等について
といったような事柄が中心になりました。
基本的な部分を思い出すという点では非常に有意義なゼミであったと思います。3年生にとっては良い復習になったでしょうか。報告者(私も含む(笑))のみなさんお疲れ様でした(安井)。

第1回 行政法Iの復習1

記念すべきゼミの第1回目は,自己紹介,役員選出,そして「行政の信頼保護原則」についての報告・議論を行いました。
ネットの不調で,残念ながら原田先生は参加されませんでした。次回以降に期待です!
これから1年間(まずは半年),みなさん頑張っていきましょう(安井)。

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