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第11回 規制権限の不行使
今回の報告は,「規制権限の不行使」をテーマに「泉南アスベスト事件」が取り上げられました。
報告では,裁量権収縮論,裁量権消極的濫用論の説明がなされたのち,最高裁では裁量権消極的濫用のみが採用されていることが紹介され,本判決は,石綿被害に関する国の責任の重さの認定や生命健康を産業発展よりも優先すべきことを認められた点で意義を持つことが示されました。
大脇先生からは,会社ではなく国を訴える理由の説明や,工場周辺住民が保護範囲内に含まれるかどうか等についての説明があり,ゼミ生のこの事案に関する深い理解につながりました。
今回の報告は,国家賠償に関するもので,今までのゼミで取り扱ったテーマとは異なるものでしたが,活発な議論が行われたように思います。前期の判例報告は最終回となりましたが,後期の論文執筆に向けてテーマ探しを行っていきたいと思います。(安富)
2025.07.14 | Comments(0) | Trackback(0)
第10回 職務行為基準説
今回の報告は,「職務行為基準説」をテーマに「奈良民商事件」が取り上げられました。
報告では,取消訴訟の違法性と国家賠償訴訟の違法性との相違についての学説や,国家賠償法の要件である過失と違法性についての2つの立場等の説明がなされたのち,本判決の分析がなされました。その中で,本判決は所得税の更正処分について「違法性相対説」に立ち,違法性の評価については「職務行為基準説」を採用しているとする見解やそれに反対する見解,また過失相殺法理による違法性阻却の観点から考える見解などが紹介されました。
大脇先生からは,本件は税務署が反面調査などを行い,納税者は税務署の行う調査に協力していない以上,税務者側の落ち度が認められることや,学校や検察といった特定の領域では違法性一元論のように違法性と過失の要件が合わさって検討されることを教えていただきました。
今回の報告は,学説の展開や論理構成などかなり難解な事件を扱ったものでしたが,とてもよく整理されていてわかりやすかったです。いよいよ次回で前期の判例報告は最終回となるので,これまでの振り返りをしつつ,後期に向けて研鑽を積んでいきたいです。(大久保)
2025.07.07 | Comments(0) | Trackback(0)


