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paco Home>授業関連>演習科目一覧(九州大学)>frontier>[九大]行政法演習14期(06年度)

ゼミ論文集完成

大橋ゼミとしては最後となるゼミ論文集が本日刊行されました。今年度は大橋 將先生によるゼミ論文集編集の講習が行われたこともあり,例年になく統一感あふれるものとなりました。論文委員による丁寧な校正と,校正協力者の多大な尽力のおかげだと思います。大変お疲れ様でした。後ほどじっくり読ませていただきたいと思います。
例年,ゼミ論文集の刊行と時を同じくして暖かくなるのですが,今年は逆に大変寒い中での論文集配布となりました。暖冬であった今冬に限って「啓蟄」が暦の上だけだというのは何とも皮肉なものです。
ゼミ論集は近日中に,法学部学習室で閲覧可能となる予定です。

第25回 ゼミ論文発表会

今年度の最終回,また大橋ゼミとしても最終回となった今回は,ゼミ論文の報告会が行われました。神戸大学から角松先生が駆けつけてくださり,またOG(12期)の古賀さんにも参加していただきました。

提出されたゼミ論文の要約は以下の通りです。

○鳥居いつほ「放送通信二元論の限界と放送制度の改善~電波は誰のものか~」

電波は誰のものなのかという疑問を解くことから,よりよい放送制度について検討を加えることが本稿の目的である。現在電波は様々な方法でいろいろな立場の者に利用をされていることから,電波全体を考えると規模が大きすぎ困難であるため,本稿では,地上波テレビ放送を主とした「放送」と,携帯電話を主とした「通信」の一部を対象とすることとした。また,「放送」と「通信」が電磁的コミュニケーション事業の一形態であることから,特に「通信」の部分においては無線と対照的な有線にも目を向けるようにした。 以上の点を踏まえ,第1章で放送通信二元論に関して,「放送」と「通信」を区別する理由とそれぞれの係る規制についてまとめ,第2章でニューメディアの登場により,「放送」と「通信」を分けて考えるべき論拠がなくなってきていることと,免許制に代表される放送のもつ閉鎖性について述べ,第3章で電波は誰のものかについて検討し,放送制度の改善点について私見を述べた。 本稿の結論としては,電波は観念的には国民全体のものであり,その電波を国民によって信託された国が,国民に代わって監理し,電波を割当てているのだというものである。よりよい放送制度に改善するには,放送免許の撤回を可能にするというような放送免許制度の再考と,電波監理審議会の行政委員会への変更および委員の構成の再検討が必要である。

○三角啓介「道州制論の検討」

本稿は,近時盛んになっている地方分権の推進をそのねらいとする「道州制」の導入に関する論議を踏まえて,その導入の是非や具体的な制度設計を考えることを目的としたものである。 第1章では,筆者の問題意識と本稿の目的を述べる。続く第2章では,まず,「道州制」の語を定義した上で,道州制の議論の基礎となる歴史を踏まえた都道府県制度の現状を確認し,その上で道州制の議論の経緯を確認し,以上の前提に立った上で第28次地方制度調査会「道州制のあり方に関する答申」の内容について確認する。第3章では,道州制の検討に不可欠な地方自治の概念について憲法的な視点を中心として検討を加え,日本国憲法の第8章の条文に関する解釈や議論を確認し,その上で,外国の憲法との比較や,地方自治の手続保障に着目する。そして,第4章では,まず,道州制の是非の検討を行った上で,連邦制の問題点を指摘し,さらに進んで道州制と憲法の規定との整合性,具体的制度設計について検討し,補足的に道州制特区法の問題点について触れる。また,具体像として九州を例にとって筆者の想像を述べる。第5章で以上をまとめる。 以上を経て得られた本稿の結論は,地方分権を目的とした道州制の導入は,現今の都道府県制度について指摘されている問題点の解決等を図るために必要なものであり,その導入の具体的制度設計に当たっては,地方自治の保障に十分に配慮したものとすべきであるというものである。

○ぱにっく「格差社会と教育のあり方」

今年度の流行語大賞のトップテンに格差社会が入るなど,現代日本では,格差について取りざたされることが多い。第二章で,格差社会問題の特徴を述べ,3章では所得格差の有無について言及している。その結果,所得格差は存在し,若年層において格差が拡大しつつあることに気がついた。4章では,若年層の格差に着目し,続く5章では,階層と格差の関係について述べた。その結果,格差の背景には,教育と経済状況の関連性の問題があることが判明した。そこで,以下の章では,教育による格差是正策について検討したい。6章以下では,教育と経済状況の関連性を改善したフィンランドの教育制度を参考にし,日本の教育制度の現状を踏まえ,学力向上には少人数教育など教師の数を増やして,きめ細かい指導を行うことが必要だと考えた。現行制度では,学校が独自に少人数学級編成やそれに伴う学校の教師の増員を行うことは,財政上の問題から困難を極める。学校が独自の教育を行うためには,都道府県教育委員会と首長の協力が必須である。

○中島彩水「都市防災と内水氾濫」

本稿は近年の集中豪雨による都市型水害について考えるものである。大河川の堤防決壊ではなく,堤防決壊とは無関係に発生する内水氾濫について,博多駅の浸水被害を例に考察した。 日本は古来より水害に見舞われてきたが,その水害は築堤工事やダム建設などによって昭和の末には相当軽減されていた。しかしここ数年で河川の氾濫以外の水害が都市部で発生しており,それが内水氾濫である。 本稿では内水氾濫が起こるメカニズムを世界・全国版と福岡版で調査し,博多駅浸水後の行政の対策を福岡市の報告書や市政資料から把握した。そこで世界的には温暖化やエルニーニョ現象が豪雨を引き起こし,全国大都市のヒートアイランド現象と相まって局地的・集中的な豪雨をもたらしていることがわかった。一方,博多駅周辺の内水氾濫は地形的要因と下水道の処理能力不足に起因していた。 最後に実際の浸水被害時に活動している実働部隊の性質やその組織について,さらに災害対策基本法にもとづき作成される福岡市地域防災計画について検討した。河川法や森林法も水防に関する規定がないわけではないが,水防法と地域防災計画が中心的役割を果たしているようだ。 結論として,内水氾濫は都市型要因と大気・海水循環型要因の2種類によって引き起こされる。そのため,予防策として防災計画や温暖化防止対策をPLAN⇒DO⇒CHECK⇒ACTIONのPDCAサイクルに乗せ繰り返し目的追求をしていくべきであり,博多は「治水都市博多」へ移行していくべきである。

○さんま「自転車交通」

現在,日本は世界で第3位の自転車保有大国であるにもかかわらず,他国と比較して自転車道の整備など自転車に関する政策が遅れている。そういった状況の下で,自転車に関する問題,特に放置自転車や歩行者対自転車の交通事故増加などが大きく取り上げられ,ますます自転車の地位は危ういものとなっている。具体的には,放置自転車台数は年々減少していっているものの,それに伴い撤去する台数が増加していたり,歩行者との事故の問題を重く見た警察庁が積極的な検挙を宣言したりしている。しかし,そもそもこのような状況を生み出したのは,日本のクルマ中心の社会であると考えられる。クルマの通行スペースが道路の大半を占め,歩行者と自転車が限られたスペースの中で衝突している現状は,自転車や歩行者の「交通権」を侵害しているように思える。この問題を解決するため,ヨーロッパの自転車利用に積極的な国々の施策を見てみると,これらの国々はそろってクルマの都市部への流入を抑えた上で自転車の利用の拡大に向けた施策を行っていた。そこで,日本もそれらの国々を見習い,クルマの流入を抑え,それによってできたスペースに自転車道を設置し,駐輪スペースを設けるという方策を考察した。

○友石さやか「公共サービス改革法」

平成18年7月7日に「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」(以下「公共サービス改革法」という)が施行され,日本にも市場化テストが導入されることになった。そこで本論では第1章で一般的な公共契約における手続き,その問題点を概観し,第2章で市場化テストの仕組みや,現存の民間委託の手法とどういった点がことなるのかを少しだけみていく。そして,第3章で市場化テストの課題を探しそれに対する私案を出す。今回は官,民のどちらが落札するにしろ,公平な評価を持って落札者を選ばなければ市場化テストの大切な前提を欠くと考えたので落札者をどのようにしたら公平に選ぶことができるかについて重点を置いた。 公共サービス法はまだまだ問題点や本当にうまく機能するのかという点で疑問もあるし,改善すべき点が多々あるが,公共サービス法のなかで行政契約を手法として用いたことは行政契約を考える上で大きな役割を果たすことになる。あまり重視されてこなかった行政契約をもう1度考える上でも規制緩和,民間解放ということを改めて考える上でも有効な素材である。今まで行われた民間委託が行政主体と関連の深い法人や団体と契約により結びついている状況について,民間競争入札という手法を制度化したのだから手続きとして公正性・透明性を確保できる制度として意義があると考えた。

○発明の母「美術館の新展開」

美術館とは,芸術に関する資料を収集し,保管し,展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し,その教養,調査研究,レクリエーション等に資するために必要な事業を行い,あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする。この美術館を支えているのが,美術館で働く専門職員・学芸員である。しかし学芸員は,非常に困難な状況に立たされており,その存在のあり方そのものが,美術館全体の問題を左右している。具体的には,雇用環境の悪さ,外国の同等制度と比べた場合の専門性の低さ,就職率の低さ等である。学芸員の問題は,いわば日本の制度設計から取り残された,塞がれていない穴のようなものである。 そして昨今,その美術館に指定管理者制度が導入され始めた。本制度に関して,美術館界の動きは様々であり,指定管理者制度を上手く活用する美術館,導入を見送る美術館,そして全く新しい独自の制度を考える美術館があった。指定管理者制度を巧みに使いこなした目下成功している自治体として,長崎県がある。 しかしこの長崎県でさえも,学芸員については限界があった。やはり,指定管理者制度は美術館には適さないのではあるまいか。指定管理者制度とは,文化行政を切り捨てて,美術館運営のリスクを軽減するための,ただの隠れ蓑ではないのだろうか。そして,放置された学芸員の問題は,この指定管理者制度によってますます深刻化するのではあるまいか。学芸員の問題をこれ以上放置することは,日本の美術界にとって大きなマイナスである。

○梶原大志「薬害訴訟と医薬行政」

 昨年の8月に福岡地方裁判所におけるC型肝炎訴訟での勝訴は記憶に新しいものである。そのC型肝炎訴訟のように,医薬品の副作用による被害が拡大した薬害事件というのは日本では,昔から数多く存在する。その薬害を引き起こしたのは,法制度の不備や国,企業,医師の癒着という構造である。それら薬害事件の代表としてクロロキン薬害や,薬害エイズが例に挙げられる。それらの訴訟は,医薬品の副作用による被害の発生を防止するために薬事法上の権限を行政側が行使しなかったということを国家賠償法1条1項に基づき争点とした。そして,クロロキン薬害訴訟では被告国は無罪,薬害エイズ訴訟では一部勝訴という形に終わった。それらの判決を受けて今回の福岡地裁の判決が出たわけだが,薬害訴訟において,国の責任はある程度認められるようになってはきているが,その救済の範囲は当時の医学的知見を考慮して行われるため,限定的である。その救済の範囲にある被害者もそうでない被害者も,薬害における被害者であることにはかわりはなく,それら被害者を増やさないためにも薬害事件を未然に防ぐことが重要である。現在,医薬品の安全性は医薬行政によって向上されつつある。医薬品の安全に関することは薬事法によって定められており,薬事法はこれまでに,何度も改正されて医薬品の安全性の確保の向上が図られてきた。その他にも様々な政策が行われている。私たちが,生きていく上では医薬品は絶対不可欠であり,医薬品は絶対的に体に良いものではないので,これから先も医薬行政はより安全な医薬品を目指して発展していかなければならない。それと同時に,国,企業,医師がそれぞれの医薬品の安全性への責任を果たさなければならない。

○屋良朝太「近年の生活保護行政における問題点」

近時,生活保護に関わる報道をよく耳にする。50年以上も前に成立した生活保護法に綻びが現れてきているといわれる。本論文では,近年見られる生活保護行政の問題点について言及する。 まず初めに実際に近時に報道されたニュースを考慮することで現実に起こっている問題を挙げる。次に第1章でまず基礎的な生活保護制度の概要としてその意義,基本原理等について述べる。以降,具体的な問題を扱っていくが,第2章では生活保護費削減の動きに関わる諸問題として,現実に生活保護制度で国民の最低限の生活が保障されているかについて論じる。まず,自分自身,最も問題があると考えた申請書交付拒否問題について扱う。さらに,申請書の交付拒否する一番の原因は生活保護費にかかる予算を削減しようとするところにあると考えられるが,生活保護費は財政的問題だけで削減してよい性質のものではないことに鑑み,削減の合理的原因として考えうる生活保護基準の適否と不適切受給問題の2点について言及する。その後,実際に運営をする立場としての職員の意識の問題について扱う。第3章では最低限生活の保障からさらに発展して,自立にむけての制度としての提言を行う。 本論文で述べるように,確かに現在の生活保護運営には問題があるといえる。国民の最後のセーフティーネットである制度ということをもう一度見直し,財政面だけにとらわれることのない,人権視点の生活保護運営を意識しなくてはならない。

○鳥飼裕紀「行政における文化振興のあり方」

戦後,わが国は経済発展を遂げ,物質的に豊かな生活を送ることができるようになった。しかし一方で,経済活動に直接的な関係ないと思われていた芸術文化については,国や自治体による関心が払われることは少なかった。しかし,近年は文化芸術振興基本法の制定など文化関係の法整備が進み,また多くの自治体において文化関係のホールなどといった施設が整備されるなど,文化振興に対する行政の姿勢が積極的なものに変わってきたように思われる。ところが,そうした施設の不採算性や,国の文化政策の相変わらずの不十分さを批判する声も多い。 そこで,文化振興が地域や国の経済活性化,あるいは福祉政策としての側面など文化政策を行う意義についてみた上で,特に地方自治体レベルでの文化政策について検討した。そして,先進的な取り組みを行っている自治体は,住民参加の仕組みを整え,またそもそもその地域に存在している文化資源を利用して,文化政策を効果的かつ効率的に行っていることがわかった。また,そのような仕組みに加え,文化事業ごとの具体的目標を設定し,その評価とのサイクルを確立することも重要である。こうした施策を採ることで、従来とは異なる効果的な文化政策が展開できることになる。

○藤田麻裕子「街路樹考」

街路樹は日常的に目にするものにも関わらず住民にも行政にもあまり意識されていない。そのため管理が杜撰でかえって邪魔もの扱いされたりすることも頻繁にある。しかし,実は街路樹は多くの機能をもっており,しかも他では代替できない役割を複合的にはたすことができる有用性の高いものだ。そのため街路樹の歴史は長く,日本ではその歴史を奈良時代までさかのぼれ,時の権力者によって保護もされてきた。だが,現代に入り街路樹は無理な伐採をされたり,制約された空間で邪険にされたりと酷い扱いが目立つようになって来た。これは,街路樹関して確たる法令が無く,行政が事務的に管理してきた結果である。一応道路法に道路の付属物としての定義が記されているもののほかに存在するのは道路緑化技術基準という昭和63年に道路局長から通達された規定のみである。そこで,街路樹を有効に活用する手法が必要になっており,現行の制度上で考えると景観法の活用がそれなりに有効である。景観計画に定められた区域の道路は景観計画に即して整備することが必要になり,そうなると,街路樹もその維持管理には景観法の規制や支援を受けることになるからである。しかしながら景観法の活用のためには依然として合意形成という大きな壁が存在する。そこで,自治体と住民との間で土地利用を調整できる団体をつくることが有効なのではと考え,道路管理の様式と財政の問題も踏まえて,緑を中心とした地域づくりを目的とする広域連合の設立を提案するに至った。

○西田智洋「自治体の破綻」

夕張市は一時借入金などの不適切な財政処理を繰り返し,巨額の債務を抱えることになった。自治体の財政の健全性を図る指標のひとつとして挙げられる実質収支比率が20%を超えたら自治体には起債制限がかかり,起債するためには財政再建団体に移行しなければならない。夕張市はこの実質収支比率20%を遥かに超える数値をみせ,財政再建団体に移行することを表明した。財政再建団体は財政再建計画を策定しそれに基づいて財政を立て直していくが,夕張市の財政再建計画は現実的なものであるか疑問が残る。 夕張市のように巨額の債務を抱え,返済能力に疑問が残る自治体のため,「新しい地方財政再生制度研究会」が開かれた。この研究会ではまず,昭和30年から殆ど変わることのなかった現行の財政再建制度の課題として,自治体財政の健全性を示す実質収支比率だけではカバーしきれない会計があることを挙げ,新たにフロー指標とストック指標という指標を提言し,自治体財政の健全性を表そうとしている。夕張市も実質収支比率ではカバーしきれていなかった会計での赤字があった。この指標の対象範囲を広げることによって財政が悪化している傾向を掴みやすくなり,早期の財政健全化を図ることができる。 早期の財政健全化を行えば,財政再建を大掛かりにすることもなく,早め早めに対応できるので,フロー指標やストック指標の基準設定は厳格になされるべきである。そのためにも,まずは自治体が正確な指標を報告させる制度を整備することと,また外からのチェックということで第三者機関が必要である。

第24回 自治体破綻・道州制

後期のゼミ報告としては今回が最終回となりました。
自治体破綻の報告では,財政再建団体となった夕張市の対策とその問題点,あるいは破綻を未然に防ぐための法的なしくみの検討の必要性が扱われました。
道州制の報告では,これまでの地方自治・分権論を踏まえ,具体的にどのような道州制を構想するかが取り上げられました。財政調整や道州内部の自治構造,あるいは道州制による人材の地域定着の問題について私見を具体化することが今後の課題となりそうです。
今回もオープンゼミで,多くの2年生の方に見学いただきました。

第23回 街路樹・内水氾濫

街路樹の報告では,街路樹を道路の附属物としてしか見ていない現行のしくみの問題が指摘され,いくつかの解決案が出されました。具体的な条文を自分で解読する技術を高めると,より説得的な話の運び方ができると思います。
内水氾濫の報告では,福岡市の報告書を踏まえ,博多駅の水害の原因と対策の分析が中心となりました。防災組織の問題や,防災計画の作り方について深めることが今後の課題となります。
今回はオープンゼミで,2年生の方々にも見学していただきました。次回もオープンゼミとなります。

第22回 美術館・文化行政

美術館の報告では,前回質問で出ていた「学芸員」の仕事の問題と,指定管理者制度の問題が取り上げられました。最終的な論文の方向性がまだ見えにくい内容だったので,今後はこれらの論点を咀嚼して主張をうまくまとめていくことが必要なようです。
文化行政の報告では,先進的な事例としていくつかの自治体の取組が紹介されました。まだ自分の意見が正面から出ていないので,論文提出までにオリジナリティを高めることが課題となります。

第21回 電波行政・市場化テスト

市場化テストの報告では,公共サービス改革法の分析の不足が指摘されました。内容の上でもまた理論的な説明としても詰められていない点が多いので,そうした問題点を1つでも捉えて突っ込んだ分析をするとよいと思います。
電波行政の報告では,放送・通信二元論の崩壊を受け,現在の放送における規制のあり方をどう考えるべきなのか,またそもそも電波は誰のものと考えるべきかが報告の中心となりました。日本社会におけるテレビの位置づけの特殊性にも配慮して,新たな規制システムとしてどのようなものが望ましいかを考えることが必要との指摘がなされました。

第20回 格差社会・生活保護

格差社会の報告では,格差が存在しそれが固定化しているところに問題があるとした上で,どのような教育の環境整備を行えばよいかに議論の中心が移りました。とくにフィンランドの教育のあり方に,ゼミ生の関心が集まりました。
生活保護の報告では,いわゆる水際作戦の問題と不適切受給の問題が取り上げられました。行政手続法が定めているルールとの関係で生活保護の現状をどう分析すればよいのかが今後の課題となりそうです。

第19回 自転車・薬害問題

今回のゼミは久しぶりに角松先生のご参加・ご指導を頂きました。いずれの報告も前回の報告よりも完成度は上がっていますが,論文全体の構成に配慮することと,おもしろそうな論点を見つけてさらに掘り進んで検討することが課題となりそうです。ゼミ終了後は角松先生を囲んで食事会を開催しました。

第18回 自治体破綻・道州制

今回が1巡目の報告の最終回でした。自治体破綻の問題では,夕張市の破綻原因や,債権放棄を含む法制度にすべきかどうかが論点となりました。また道州制では,道州制を導入すると具体的にどういう点で変化が生じるのか,憲法改正が必要なのかなどが議論されました。

第17回 街路樹・内水氾濫

今回のゼミはどちらの報告も工学部系の内容が多く,おもしろかったです。街路樹の報告では,街路樹の意義・歴史からはじまり,街路樹をめぐる法制度や現状・問題点が扱われました。技術基準の策定方法や部局間の調整の欠如が問題の核心のようです。
内水氾濫の報告では,内水氾濫に対する関心はすでに20年前からあったこと,その要因として土地利用の問題や森林伐採問題,下水道整備の問題などいくつかの要素があることが指摘されました。今後は具体的なケースの中で主要因をしぼり,どのような対策が必要かを論ずることが求められます。

第16回 美術館・文化行政

美術館の報告では,長期的な視野に立ってよい美術品を収集するという目的に対して,学芸員の制度と指定管理者の制度がそれぞれどのような影響を与えているのかが議論の中心となりました。学芸員についてその実態も含めた詳しい調査が必要となりそうです。
文化行政の報告では,全体として総論的な内容が中心でした。今後はその中でもとくに注目されるような事例に焦点を当てて,掘り下げて検討する作業が求められます。

第15回 電波行政・市場化テスト

電波行政の報告では,携帯電話やPLCなどをめぐる時事的問題に関心が集まりました。最終的にどのような方向で論文を構成するのかが今後の作業のポイントとなりそうです。
市場化テストの報告では,他の外部委託との違いや,このしくみが行政法理論に与えるインパクトをめぐり議論が行われました。法律上手当てすべき問題がかなり残されているように見えました。

第14回 格差社会・生活保護

格差社会の報告では,様々な分野のアプローチで「格差」がどう捉えられているか,その原因が何に求められているかが扱われました。報告者は教育との関連を議論する方向ですが,格差の原因が教育にあることの論証がさらに求められています。
生活保護の報告は,主として生活保護と貯蓄の問題を取り上げていました。この先はさらに別の問題にも取り組む方向のようです。実態を踏まえた改善提案が出てくるとよいと思います。
今回は,OG(12期)の木村さんが参加しました。ありがとうございました。

第13回 放置自転車・薬害問題

後期最初のゼミは,3年生2人のゼミ論文構想報告でした。放置自転車では,自転車の歴史や自転車の法制上の扱いをめぐって議論が盛り上がりました。薬害問題では,C型肝炎訴訟やエイズ問題などの事件の経緯が紹介され,薬害問題と一般の権限不作為の国家賠償との差異を明らかにする必要が指摘されました。

ゼミ合宿

9月21日から23日まで,九重の九大山の家・研修所でゼミ合宿が開催されました。今回は初めて1年生も参加した合同合宿の形式をとりました。取り上げたのは次の判決です。
(共通)
・研修1 在外邦人選挙権制限違憲訴訟上告審判決(最判2005(平成17)年9月14日民集59巻7号2087頁)(三角・友石・発明の母)
・研修2 住民基本台帳ネットワーク差止等請求事件(金沢地判2005(平成17)年5月30日判例タイムズ1199号87頁) (屋良・ぱにっく)
(3・4年生)
・研修3 指定確認検査機関の建築確認と訴えの変更(最判2005(平成17)年6月24日判例時報1904号69頁)(篠原・西田・梶原)
・研修4 都市計画法53条と損失補償(最判2005(平成17)年11月1日判例タイムズ1206号168頁)(鳥居・中島)
・研修5 日韓高速船補助金訴訟上告審判決(最判2005(平成17)年11月10日判例時報1921号36頁) (鳥飼・さんま・藤田)
(1年生)
・研修3 外国人の公務就任権(最判2005(平成17)年1月26日民集59巻1号128頁)
・研修4 商品先物取引と成年後見(神戸地判2006(平成18)年2月15日)
・研修5 光市母子殺害事件(最判2006(平成18)年6月20日)

研修6では,三角君による九州新幹線長崎ルートを題材とする報告を中心に,議論が行われました。新幹線の財源調達の方法や,国土形成計画法との関係が取り上げられました。
研修7では,後期のゼミ論文のテーマ決めを行いました。現段階でのテーマは次の通りでした。
・放置自転車(さんま)
・薬害訴訟 or ニート問題(梶原)
・格差社会(ぱにっく)
・生活保護(屋良)
・市場化テスト(友石)
・電波行政(鳥居)
・美術館(発明の母)
・文化行政(鳥飼)
・街路樹(藤田)
・内水氾濫(中島)
・自治体の破綻(西田)
・道州制(三角)

第12回 地方交通

今期の最終回となった今回は,熊本市を例とする交通問題が取り上げられました。LRTと路面電車の違いや,バスレーンの地域による規制強度の違いが話題となりました。交通政策に対する法理論的なアプローチや,都市経営の観点からの掘り下げがさらにあるとよかったと思います。

第11回 銀座ルール,大型店舗

今回は都市計画関連の報告であったため,やや難しい内容となりました。銀座ルールは地区計画に基づくしくみですが,都市再生特区との関係で改めて規制の内容がクローズアップされることとなりました。地区計画に関する説明がもう少しあるとなお分かりやすかったと思います。大規模小売店舗に関しては,先日まちづくり三法のうち都市計画法と中心市街地活性化法は改正案が成立しました。報告の構成により注意を払うことと,今回の改正を待たずにできた対応策の検討がもっとあるとよかったと思います。

第10回 ワークシェアリング,ETC

今回からは報告者が2人となりました。ワークシェアリングの報告では,ワークシェアリングの問題の本質は正社員と派遣・パート労働者との格差をどう考えるのか,あるいは社会保障制度(セーフティーネット)をどう構築するのかの問題と関わることが分かりました。ETCの報告では,ETCのメリットと問題点,ETCが原因で事故が起こった場合に民営化後でも国家賠償法2条の責任が問えるかが扱われました。国家賠償についての理解があまり進んでいないようなので,各自復習をお願いします。

第9回 容器包装リサイクル法改正

つい先日法改正がなされた容器包装リサイクルがテーマとなりました。新法のどこが変化しており,それは以前から指摘されてきた問題点を解消したものといえるのか,他のリサイクル制度と比較して容器包装リサイクル制度にはどのような問題があるのかについて,さらに検討が求められます。

第8回 消費者金融問題

消費者金融のいわゆるグレーゾーン金利問題や,消費者金融問題を防ぐための方策について報告がありました。報告は消費者教育を重視するものでしたが,今年の1月に連続して出された最高裁判決をベースに解釈論での解決を図るルートについてもさらに検討が必要との意見が出されました。

第7回 国立大学の法人化

国立大学の法人化の背景や,法人化によって起こった変化と問題点について議論されました。よく調べてあり,私見も明確でした。今回で3年生の報告は終了し,次回からはいよいよ4年生の番になります。

第6回 ゆとり教育

1977年改訂の指導要領からはじまったゆとり教育の問題が扱われました。行政立法(行政基準)について各自復習をお願いします。

第5回 諫早湾の干拓問題

今回は諫早湾の干拓問題をめぐるアセスメントの問題が取り上げられました。環境影響評価法のしくみと諫早湾干拓の際に使われたアセスメントのしくみとの比較や,戦略的環境アセスメントの問題,法律と条例の関係の問題が議論されました。

第4回 食品安全

今回の報告は,カネミ油症事件の国家賠償訴訟(権限不行使)と食品安全の問題を扱ったものでした。カネミ油症事件では,農林水産省と厚生省との連絡がうまくいかなかったことが問題点として指摘され,同じようなことはBSE事件でも指摘されていました。それとの関係で食品安全委員会の制度設計がこの問題の解決に十分役立っているかが議論されました。

第3回 ハンセン病問題

今期の第1回報告は,ハンセン病に関する国家賠償訴訟を取り上げたものでした。初回報告としてはまずまずの内容であったと思われます。3年生がまだ国家賠償まで授業が進んでいないため,その補足に時間がかかってしまいました。図ったわけではないのですが,来週もまた論点の中心が国家賠償のようです。

第2回 テーマ決定

各自関心を持つテーマを持ち寄って,前期の報告テーマを決定しました。活発な質疑で,学期の始めからこれほど盛り上がったのは久しぶりです。今年度は3年生の報告者に4年生のサポーターがつくことになったので,3年生は気軽に相談できると思います。

第1回 自己紹介・イントロダクション

ゼミ生全員の自己紹介のあと,大橋先生からゼミのコンセプトについてのお話がありました。その後,ゼミ報告の際に必要な技術について,4年生の体験談をまじえた説明がありました。

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