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paco Home>授業関連>演習科目一覧(九州大学)>frontier>[九大]行政法演習32期(24年度)

第11回 不作為の違法性

今回の報告では,不作為の違法性というテーマで,関西水俣病訴訟が取り上げられました。報告では,裁量権収縮論と裁量権消極的濫用論について触れられたのち,本判決の判断枠組みや関連判例について詳しい説明がありました。議論の中では,控訴審と上告審の判断の差異や裁量権収縮論が提示した4つの考慮要素について深めました。

大脇先生からは,学説がとっている裁量権収縮論は精密な審査が可能であるのに対し,裁量権消極的濫用論はスカスカの理論であること,しかし最高裁は「絶対に救済しなければいけない場面」で権利救済を行なえるように裁量権消極的濫用論をとっていることを教えていただきました。また,

本件最高裁判決でも裁量権収縮論の4つの考慮要素が検討されているようにも見えることについて理解することができました。
今回は,不作為の違法性を認めることが難しいとされてきた歴史を踏まえることが,本判決の何が画期的だったのかについて考える上で重要であったと感じました。

次回からはゼミ論文の作成に入りますが,選んだテーマの歴史的変遷を丁寧に押さえられた論文を目指したいと思います。(古瀬)

第10回 国家賠償責任の主体

今回の報告は,「国家賠償責任の主体」をテーマに「積善会児童養護施設事件」が取り上げられました。

報告では,民法と国家賠償法の両法における賠償や,「公権力の行使」概念について学説も交えた詳しい解説がされ,それらを踏まえた本判決の分析が述べられました。また,市立保育園の業務や本件と同様に社会福祉法人の運営する施設での業務などにおいて公権力の行使とは言えないとされた判例を題材として射程について検討されました。

大脇先生からは,行政が賠償すべき論理として,本件の第一審は「指揮監督権」や「本来の事務の帰属先」などを採用しているものの,最高裁は主に「本来の事務の帰属先」と「不可分一体性」を採用しており,学説は「不可分一体性」を採用しているということを,その論拠とともに教えていただきました。また,本件はなぜ民事訴訟と行政訴訟の二段構えで構成されているのかということについても,現実問題に触れながら説明してくださりました。

今回の報告は,学説や重要な論点が整然とまとめられた良い報告だったと思います。次回で前期のゼミは最後となります。後期ではゼミ論文の執筆に注力しようと思います。(大久保)

第9回 当事者訴訟(確認訴訟)

今回の報告では,公法上の確認訴訟というテーマで,在外国民選挙権訴訟が取り上げられました。報告では,確認の訴えにおける確認の利益を認定する要件や,地位確認と違法確認について詳しい解説がありました。議論では,本判決において地位確認と違法確認の両方を行っている点について,その意義を掘り下げました。

大脇先生からは,以前は処分性が認められないものを強引に抗告訴訟にしていたが,2004年行訴法改正によって当事者訴訟を活用する方向性が示されたことについて教えていただきました。また,質疑の中で,確認の利益を認定するための要件のうち「有効かつ適切な事項を確認対象とする」という要件について,自己の権利に引き付ける「地位確認」が使いやすい,と学ぶことができました。

今回は,まだ授業で扱われていない内容に関する報告でしたが,充実した議論を通して内容を深めることができたと思います。次回は私の報告です。重要な部分を丁寧に押さえられたいい報告にしようと思います。(古瀬)

第8回 差止訴訟

今回の報告は,「差止訴訟」をテーマに「東京都教職員国旗国歌訴訟」が取り上げられました。

報告では平成16年の行訴法改正で明文化された差止訴訟の要件やその解釈について細かく説明されそれを踏まえた本判決の分析が述べられました。また「重大な損害を生ずるおそれ」という要件に着目した判例や公法上の当事者訴訟で解決できると判断した判例などを例として射程について検討されました。

大脇先生からは差止訴訟のそもそもの意義やそれが使われるケースなどについて説明していただきまた差止訴訟や公法上の確認訴訟などの法定抗告訴訟と無名抗告訴訟の違いや行訴法改正前後の無名抗告訴訟の扱いなどについて教えていただきました。

今回の報告は未学習の内容であったものの,重要な論点や本判決の判断枠組みがしっかりと示されていたとても良い報告だったと思います。次回のテーマである「公法上の当事者訴訟」に関連するテーマであるためしっかり復習しようと思います。(大久保)

第7回 原告適格

今回は,原告適格をテーマに,小田急訴訟が取り上げられました。

報告では,平成16年の行政事件訴訟法の改正を踏まえ,行政事件訴訟法9条2項について詳しい解説がされました。本件上告審と控訴審の間の時期に行訴法改正があったことから,これまでの権利関係を重視した判断枠組から行訴法9条2項を踏まえた判断枠組への変化について,議論の中で詳しく掘り下げられました。

大脇先生からは,本件鉄道事業は「低周波騒音」などの点でとても危険であり,だからこそ付属街路事業とは切り離されて考えられたことを教えていただきました。また,改正行訴法9条2項は裁判官に裁量を与える側面があるものの,「実効的権利救済」の観点に立ち,厳格な「法律上保護された利益説」から原告適格を認める判断枠組が緩められてきた歴史を踏まえると前向きに捉えることができる,と述べられました。

今回の報告は,形式面のミスも少なく,射程に関わる判例を多く紹介していた点が良かったです。関連判例についても学習し,本件と比較することでより原告適格についての理解を深めていこうと思います。(古瀬)

第6回 処分性

今回の報告は,「処分性」をテーマに「浜松市土地区画整理事業計画事件」が取り上げられました。

報告では,本判決と本判決により判例変更された青写真判決とを比較しながら、判断枠組みや付随的効果論などの学説について述べられました。また,本判決の射程について,非完結型計画と完結型計画に分けて,それぞれで処分性が認められるか検討が行われました。

大脇先生からは,完結型計画には処分性が認められない一方で非完結型計画には認められる根拠や,完結型計画においてどのように取消訴訟に持ち込むかについて解説していただきました。

今回の報告は,射程について細かい検討がなされており,また脚注も充実している良い報告だったと思います。次回以降の報告にも期待しています。(大久保)

第5回 司法的執行

今回の報告では,司法的執行をテーマに宝塚市パチンコ店建築中止命令事件が取り上げられました。報告では,本判決が学説から強く批判されていることについて,射程を限定的に解するべきであるという報告者の考えが述べられました。

報告後,最高裁の判断について,そもそも法律上の争訟についての判断をしなくても本件訴えを却下できたのではないか,といった点などについて議論が行われました。大脇先生からは,そもそも本件中止命令が不作為の非代替的義務であること,本判決が事実上板まんだら事件判決の事件性の要件,終局性の要件に自己の権利利益の保護という要件を追加しているようにも見えることについて解説していただきました。

今回の報告では,法律の射程について考えることの重要性を改めて感じました。次回は私の報告回なので,法律の射程についてしっかり触れるようにしようと思います。(古瀬)

第4回 違法性の承継

今回の報告は,「違法性の承継」をテーマに「東京都建築安全条例事件」が取り上げられました。

報告では,違法性の承継をめぐる学説を中心に本判決の判断枠組みや射程について述べられました。その後は,本判決と原審における判断の違いや,本判決と学説との対比について議論が行われました。

大脇先生からは,違法性の承継は原則として認められないことや,違法性の承継が認められる必要性などについて具体例を踏まえながら細かく教えていただき,より理解を深めることができました。

今回の報告は,あまり馴染みのないテーマであったために,報告がいまいち分かりにくいものとなってしまったため,より丁寧な説明となるようにレジュメを作っていこうと思います。(大久保)

第3回 理由の提示

今回の報告は,「理由の提示」をテーマに「一級建築士免許取消事件」が取り上げられました。

報告では,「理由の提示の程度」という点を中心に本判決の判断の是非について私見が述べられました。報告後は,本判決の射程や理由の提示を厳格に求めることの是非について議論しました。

大脇先生からは,手続きの重要性を強調することがシステムの瓦解を防ぐうえでとても重要な意味合いを持っていることを教えていただき,行政裁量を広範に認めることの危険性について考えを深めることができました。

今回の報告は,私見や報告者が議論を深めたい点が明確に示されており,報告後の充実した議論に繋がっていたように感じました。自分の報告回の参考にしようと思います。(古瀬)

第2回 専門技術的裁量

今年度から広報委員を務めます,3年生の大久保です。よろしくお願いします。

今回の報告は,「専門技術的裁量」をテーマに,「伊方原発訴訟」が取り上げられました。

報告では,本判決において,裁量が認められる根拠や司法審査の密度及び手法が分析されたのち,福島第一原発事故を受けて改正された新規制法下でも本判決の枠組みを採用できるかについて報告者の私見が述べられました。

大脇先生からは,司法審査には「手法(判断代置審査,判断過程審査,社会観念審査)」と「密度」の2つの軸があり,一見手法が変わっているようでも,実は密度が変わっているだけの事例があることを説明していただきました。

今回の報告は,規制法が変わる前後に応じて参考文献も使い分けており,細かいところまで意識できている良い報告だったと思います。次回以降の報告にも期待しています。(大久保)

第1回 医薬品ネット販売事件

今年度から広報委員を務めます,3年生の古瀬です。よろしくお願いします。

今年度最初の報告は,「委任立法の限界」をテーマに「医薬品ネット販売権確認訴訟」が取り上げられました。

報告では,「授権趣旨の明確性」の基準が示された理由について,本判決と令和2年のふるさと納税に係る総務省告示に関する最高裁判決を比較する形で報告者の私見が述べられました。

大脇先生からは,本判決の「立法過程における議論をしんしゃくした上で」という部分について,裁判所が国の規制に対して厳しい姿勢をとっていることが表れていると説明していただきました。

今回は形式面に対する指摘が4年生,院生からしか出なかったので,3年生も内容面だけでなく形式面についても指摘しあえるようになっていきたいと思います。(古瀬)

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