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paco Home>授業関連>演習科目一覧(九州大学)>frontier>2024年7月

第11回 不作為の違法性

今回の報告では,不作為の違法性というテーマで,関西水俣病訴訟が取り上げられました。報告では,裁量権収縮論と裁量権消極的濫用論について触れられたのち,本判決の判断枠組みや関連判例について詳しい説明がありました。議論の中では,控訴審と上告審の判断の差異や裁量権収縮論が提示した4つの考慮要素について深めました。

大脇先生からは,学説がとっている裁量権収縮論は精密な審査が可能であるのに対し,裁量権消極的濫用論はスカスカの理論であること,しかし最高裁は「絶対に救済しなければいけない場面」で権利救済を行なえるように裁量権消極的濫用論をとっていることを教えていただきました。また,

本件最高裁判決でも裁量権収縮論の4つの考慮要素が検討されているようにも見えることについて理解することができました。
今回は,不作為の違法性を認めることが難しいとされてきた歴史を踏まえることが,本判決の何が画期的だったのかについて考える上で重要であったと感じました。

次回からはゼミ論文の作成に入りますが,選んだテーマの歴史的変遷を丁寧に押さえられた論文を目指したいと思います。(古瀬)

第10回 国家賠償責任の主体

今回の報告は,「国家賠償責任の主体」をテーマに「積善会児童養護施設事件」が取り上げられました。

報告では,民法と国家賠償法の両法における賠償や,「公権力の行使」概念について学説も交えた詳しい解説がされ,それらを踏まえた本判決の分析が述べられました。また,市立保育園の業務や本件と同様に社会福祉法人の運営する施設での業務などにおいて公権力の行使とは言えないとされた判例を題材として射程について検討されました。

大脇先生からは,行政が賠償すべき論理として,本件の第一審は「指揮監督権」や「本来の事務の帰属先」などを採用しているものの,最高裁は主に「本来の事務の帰属先」と「不可分一体性」を採用しており,学説は「不可分一体性」を採用しているということを,その論拠とともに教えていただきました。また,本件はなぜ民事訴訟と行政訴訟の二段構えで構成されているのかということについても,現実問題に触れながら説明してくださりました。

今回の報告は,学説や重要な論点が整然とまとめられた良い報告だったと思います。次回で前期のゼミは最後となります。後期ではゼミ論文の執筆に注力しようと思います。(大久保)

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