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第27回 論文発表会

今日は夏休みから作成してきた論文の発表会が行われました。

これまでたくさんの指摘を受けて,個性豊かな論文になっていると思います。

最近は体調不良による欠席者も多かったですが,欠席者なく,よかったです。(三戸)

提出された論文のタイトルと要旨は以下の通りです。

○自転車交通の規制と保護(へなちょこ)

近年,日本ではエコブームや健康増進のため自転車利用者が増加してきた。それに伴い,交通事故件数は減少傾向にある反面,自転車関連事故は横這いの状況であり,特に対人事故の割合は増加傾向にある。自転車関連事故の原因・問題点は①自転車の車両としての認識不足,②利用者の運転技術の未熟さ,③通行区分の不確立が挙げられる。一方で,自転車関連事故の増加を受け,2006年道交法が改正され約30年ぶりに自転車に関する規定が見直された。道交法における自転車の取締りは刑罰でしか行われず,他の車両が行政罰に留まることができるのに対し著しく公平を欠くものである。この問題を解決するために,自転車も他の車両と同じ処理で取り締まりができるように自転車に免許制度を導入し,同時に自転車関連事故の原因の①②を解決すると共に,自転車関連事故の原因の③通行区分の確立のため,地域・地区の特性に合った区分を設けるという方策を考察した。

○環境対策とその有効性(ゆか)

地球温暖化に伴って,植生や生態系が大きな影響を受けており,人類もその例外ではない。しかしその結果,地球温暖化に対しての関心が年々高まってきている。近年環境対策として個人・自治体の取り組みが注目されてきており,これからさらに取り組みは促進されていくと考えられる。 取り組みの代表例として,本稿ではマイバッグ運動とペットボトルリサイクルを取り上げている。これらの利点や問題点を第1章で述べている。結果として,マイバッグ運動によってレジ袋を廃止に追い込むのではなく,マイバッグと有料レジ袋を平行利用することにより,二酸化炭素の削減を行っていくのが望ましいと考えられる。この案について,県単位の取り組みで成功した地域も存在している。一方ペットボトルリサイクルに関して現在海外流出の問題が深刻化している。その背景として容リ法の問題がある。現在の容リ法では自治体は自らの予算のみで分別収集を行わなければならず,このことが海外流出にもつながっている。そこで特定事業者には再商品化の義務を課すだけでなく,分別回収の費用を一定の率分負担するという仕組みが考えられる。第2章では,環境大国と呼ばれているドイツの政策,デポジット制やデュアルシステムなどを例に挙げ利点などを論じ,第3章ではそれを参考として個人・自治体の日本の今後の環境対策について考察している。

○財政健全化法の影響と課題(UR!)

「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」(以下,財政健全化法)は従来の地方財政再建促進特別措置法(以下,旧財政再建法)の廃止に伴って導入されたものであり,今年一部施行され,今後平成20年度決算を対象として本格始動する。財政健全化法の制定は,自治体財政が急激に悪化したことに起因する。地方財政悪化の背景としては,歳入面では三位一体改革,歳出面では借入金の増大が要因として挙げられる。旧財政再建法制では財政再建団体に対する対策を中心としており,早期是正のスキームが欠けていた。財政健全化法は,4つの健全化判断比率と「早期健全化基準」「財政再生基準」の2つの基準により,自治体の財政状況を判断する。そして財政の透明性を確保するため,公表制度を導入したことによりチェック体制を強化した。 今回,財政健全化以上とされた市町村は43団体である。今後,自治体の財政縮減の流れがさらに加速化する恐れがある。このような「財政健全化至上主義」ともいうべき,財政健全化優先により,住民の生活が脅かされることがあってはならない。真に財政の透明性を確保するために,自治体は決算時に財政健全化法の判断比率に基づく結果をより明確に開示する工夫を凝らし,そして市政基本条例・財務条例において予算作成時に生かすべきだ。財政健全化を目指すにあたり,自治体・住民・議会が一体となって財政運営に取り組むことこそが早期健全化につながると考える。

○マンション紛争と事前規制(松井)

日本では,マンション建設をめぐる紛争が後を絶たない。その多くは,周辺住民の予期しなかった高層マンションの建設が突然計画されることから始まる。実際に,私の実家の隣にも高層マンションの建築が計画された。本稿では,私の上記の事例をもとにマンション紛争が起こる原因を考察し,紛争の早期発見・予防のための制度改革案を提唱する。 まず,事例の問題点がマンションの高さと建設される位置にあることを述べ,このようなマンションが建設される原因を建築基準法のなかから調べていく。建築基準法の一般的な問題点は,容積率による建物のボリュームの制限方法は,どの程度の大きさの建物が建てられるか予想しづらいためにマンション紛争の早期発見が難しい点である。また,規制の内容が全国一律に規定されているため,地域の実態とは乖離した緩い規制になっていることも問題である。建物の高さには,容積率と斜線制限が関係するが,どちらにも緩和規定が設けられているため,高層化を促進している。さらに,総合設計制度のように一定の条件を満たすことで規制を緩和する手法もマンション紛争を引き起こす原因となっている。 次に,マンション紛争の予防に向けた取り組みを考察し,その利点と欠点を述べた。条例による対策には,法的拘束力がない点や,住民・事業者双方に譲歩する意思がなければ成り立たないという欠点がある。ダウンゾーニングについては,高層化を抑える手法としては有効だが,既存不適格となる建物への対応が問題である。地区計画・建築協定は地域の実態を反映させた規制を設定できるようになる点で,建築基準法の欠点を補うことができる。しかし,住民の合意形成が困難である。 最後に,制度の改革案を述べた。建築自由を原則とする現在の建築基準法の改正を提唱し,その方向性として,建築不自由を原則とし,建築確認制度を許可制度に改める。現行制度の中で紛争の予防に役立つ地区協定や建築協定に関しては,住民の合意形成を容易にするために,税制の優遇などのインセンティブを与えることを提案する。

○公的医療保険分野への民間保険参入の可能性(Zakkun)

日本の医療保障は,急激な高齢化,医療高度化による医療費の増大,景気低迷による財政難により,現状のままの制度の維持は困難とされている。加えて国民の医療のニーズは多様化しており,それらへの対応も求められる。このような現状は世界各国共通の問題となっており,如何に医療費をコントロールし,良質かつ適切な医療を提供していくかという課題を世界各国有している。こうした状況の中,医療費抑制のための医療制度改革の方向として,最近は市場原理の導入,民営化の視点が議論されている。すでにそのような議論をもとにした医療改革を行っている欧米諸国(その中でもアメリカ,イギリス,オランダ,フランス)の例を見ることで,日本での医療改革の方向性,特に民間保険の参入可能性を検討していく。 近年医療制度改革を行った欧米諸国を比較してみると,いずれも共通しているのは,国または保険者の権限強化による医療費のコントロールと,競争原理の導入による医療ニーズへの対応を中心としていることである。日本での医療改革を議論する際もその2点を中心に据えて考えなければならない。以上の点を踏まえ,改革の方向性として民間保険参入の必要性・可能性を述べ,さらに日本における改革の具体案として公私財源併用を認めるシステム案をいくつか提案する。

○原子力発電所の設置と住民参加(三戸)

国内でのエネルギー消費の増大から,原子力発電所の設置が進められている。発電所を設置することでエネルギー供給,自治体財政への影響が期待できる。一方では事故の危険性や高レベル放射性廃棄物の処分が問題視されている。特に設置される土地の住民には直接的な危険が生じる可能性がある。地点の選定や立地計画の発案は,住民に知らされずに行われることもあり,発電所設置に当たって住民の反対運動が起こることが多い。これらは設置手続上の住民参加制度の不備によるものと考えられる。設置手続では,環境影響評価,公聴会において住民の意見を聴くことが定められている。しかしこれらの制度によっては,意見を述べることはできても意見に沿うような措置を講じさせることが出来ない。またこれらの機会が設けられるときには計画は実行段階に移っており,参加手続が儀式化しているおそれがある。このような手続上の不備から,近年では発電所設置の際住民投票が行われるケースもあるが,発電所設置に関して個別の条例を定めて実施する住民投票には,法的拘束力が認められず,意見を反映させる手段として妥当とは言えない。また,住民と事業者・自治体間での討論を重視すべきであり,これらは反原発派の活動によって実施される住民投票でなく,本来の設置手続上において配慮されるべきだろう。そこで,計画実行前に住民の意見を取り入れる制度を設けるべきである。

○地区計画の事後救済(ばんちょ)

本稿は都市計画の一類型である地区計画を対象とし,その事後救済制度のあり方を探るものである。従来地区計画は,計画決定等の段階での処分性が認められていないが,地区計画の制限内容の具体性から,処分性否定の根拠についてはかねてから批判があった。また,後続処分段階での紛争解決には実効的な権利救済という観点から問題点が指摘されてきた。   これについて平成17年の行訴法改正では,当事者訴訟としての確認訴訟が法律に明記され,地区計画訴訟においても活用の可能性が期待されているが,出訴期間の定めがないことや,判決の対世効が認められないことから,地区計画決定等を争う訴訟制度としては不十分である。そこで再び処分性を認める可能性を探ると,紛争の成熟性や,都市計画事業について求められた程度の権利侵害の具体性は有していると捉えることもでき,特に地区計画について処分性を否定する根拠はないと考える。 そこで地区計画決定等に処分性を肯定するとの立場をとった上で,具体的制度設計を検討すると,地区計画訴訟制度には多数の利害関係者の調整,既存の秩序への配慮,計画自体の裁量性・専門性に留意する必要がある。これらの留意点を踏まえれば,処分性を肯定し取消訴訟を行うのみではなお遡及効などの問題点が残るため,裁決主義を採用した訴訟制度を設けるのが望ましいのではないかと考える。

○裁判員制度における上訴の問題(三笠)

平成16年5月21日に施行された「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」によって,平成21年5月21日に開始される裁判員制度については,国民の意思を司法にも反映させるというメリットの他,様々なデメリットについても指摘されている。その中でも本論で着目したのは裁判員裁判における上訴審,とりわけ最後の事実審と言われる控訴審における問題である。そもそも日本の刑事訴訟法において控訴は原審の法律上の問題だけでなく,事実に関する問題についても審議する事実審であると同時に,原審の資料に基づいて原判決の当否を審査する事後審という性質を持つ。「考えられる裁判員制度の概要について」(以下,座長ペーパー)において,裁判員裁判の控訴審は従来通り,事後審とし,基本的に破棄自判を行わず,差し戻しを原則とする旨定めている。裁判員制度を形骸化させないためにも,破棄自判を積極的に認めることはできないだろう。しかし,上級審の拘束力の問題や,審理の長期化によるさまざまな弊害から差し戻しに対して批判的な意見も出ている。この問題は非常に難解であり,実際の裁判員裁判においてどのような判決が出されていくかなどの資料を入念に検討した上で結論を出すべきであろうと考えるが,現時点で打開策を出すとすれば,やはり裁判員制度導入の理念を尊重するためにも原則差し戻しの形を採るべきであり,その際,控訴審は「...の点について再び検討すべき」などの具体的な部分差し戻しを行い,差し戻し審ではその点のみを審議していくというのが現実的ではないだろうか。

○ペットブームと動物保護(中山)

近年のペットブームはとどまる所を知らず,ペットを飼育している家庭は年々増加しており,ペットビジネスの利益は膨大なものである。そして,それに付随して問題も生じている。中でも深刻な問題は,大量のペットが殺処分されているということである。動物を取り扱う法制度は複雑多岐にわたっている。中でも動物愛護管理法はその中核となるものである。動物管理行政はこれに従って行われる。法制度が複雑多岐にわたっているのは,動物を取り扱う行政活動は,公衆衛生政策,農業政策といった分野に分散化しているためである。日本はかつては動物管理行政が海外と比較して劣っていると言われてきたが,動物愛護管理法の改正等を重ねる等,現在では改善されつつある。動物管理行政の中心は以前は保健所であったが,最近では動物管理センター(名称は様々である。)が中心となっている自治体が多い。保健所と動物管理センターは,それぞれ特徴がある。これら2つの出先機関は,様々な業務を行っており,動物管理行政において,重要な役割を果たしている。動物保護の取り組みとしては,行政側も力を入れてきたが,近年は,民間でも様々な取り組みが行われている。NPO団体はその代表である。これからの日本における動物保護の可能性としては,法制度の更なる改正を始めとして様々な可能性があると思われるが,重要なことは,これを積み重ねて,動物愛護の精神を啓蒙し,基盤を築くことである。

○第三者機関の公正・中立性の検討 ──福祉サービス評価を素材として── (空閑)

行政改革,規制緩和の流れにより増大した第三者機関は公正・中立だと謳われるが,本当にそのように言えるのか検討を行うのが本稿の目的である。第三者機関は「当事者ではない主体から構成される,一定の目的を持った法人格を有する独立組織」と定義付けることができ,「公的組織が規制をする場合に利用する,登録・認定をされ決定や情報加工を行う私的組織」と位置付けることができる。このような総論的議論を踏まえ,福祉サービス評価を扱う第三者機関を取り上げ,認証要件等その公正中立性の検討と担保策についての考察をした。指定機関と異なり法的統制の及ばない第三者機関ではあるが,公正さを保つために何らかのコントロールが必要である。そこで,公正・中立性を確保するための判断基準として監督機関による第三者機関の統制,職員規制,情報公開,救済手段について検討をした。システム上ある程度公正・中立性の確保はできているものの,今後第三者機関の行為に対する救済手段を充実させていく必要がある。

○スーパー早期審査制度(宮崎)

本稿で取り上げるのは,2008年にその試行が開始された「スーパー早期審査制度」,およびその先駆けとなる早期審査制度である。我が国の特許制度は審査主義を採用しており,そのため審査手続の迅速化という課題を内在的に持っている。また,研究開発活動のグローバル化やビジネスモデルの早期化といった社会的な情勢から,特許の出願人のニーズは多様化している。こうした状況を踏まえ,特許手続の,とりわけ審査の段階についても,特許庁を中心として対策がとられており,その一つが本稿で取り上げるスーパー早期審査制度である。 スーパー早期審査制度および早期審査制度は立法による法制度ではなく,運用上のいわゆるガイドラインに基づく制度であるが,法制度である優先審査制度がほとんど利用されていないのに対し,毎年利用数を伸ばしている点等から有用な制度であると言える。しかし,早期審査を採用した際に起こる先発・後発出願の前後関係の問題や,制度利用にかかりたとえば利用を拒絶された場合に起こる行政法的な問題など,検討すべき課題がある。 近年,行政法および知的財産法はともに急速な制度設計の見直しを行われており,その中で訴訟や審判手続における行政法との比較が行われるなど交流がもたれはじめているように感じられるが,制度の基礎となる審査手続についても,あらためて行政一般法に立ち返った考察をすることも必要なのではないかと考える。

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