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第2回 行政法Iの復習(1)

今週は,「行政法Ⅰの復習」ということで,3年生からそれぞれのテーマに関する報告をしていただきました。

報告の内容は,以下の通りです。
・阿部さん:行政裁量
・礒部さん:法律と条例の関係
・上野畑くん:行政行為と行政契約
・上山さん:契約正義論
・鵜篭くん:権限禁止濫用原則
・栄留くん:行政指導

阿部さんの行政裁量については,行政の活動を覊束行為と裁量行為にわけ,さらに後者を覊束裁量(法規裁量)と便宜裁量(自由裁量)にわけるという学問上のゼロサム的な分類は裁判上とられておらず,実際は行政の裁量の度合いの問題,つまり審査の幅の問題として表れていると見る方がよいのではないかということが話にのぼりました。

磯部さんの法律と条例の関係については,条例とひと口にいっても①法律の委任に基づく委任条例,②とくに法律の委任なく制定される自主条例があり,とくに①の委任条例が問題となるテーマです。従来の法律先占論の相対化が公害問題に端を発するなど,環境法ともかかわりの深いテーマですので,難しいながらしっかりと押さえたい論点です。

上野畑くんの行政行為と行政契約の区別については,①法律根拠の要否②規律力の有無③公定力の有無で区別するとあります。行政行為で行うのか,行政契約で行うのかについては,実務上のメリット・デメリットがあり(土地収用の例などは典型です),レジュメで述べられているように選択的関係となりやすく,論点としては重要なものだと思います。

上山さんの契約正義論の報告については,恥ずかしながら私は初耳のもので大変新鮮でした。契約正義論は,行政法規違反の契約の効力を私法上も無効とする余地を広げようとするもので,消費者保護などの場面で活躍しそうな論理ではありますが,行きすぎると私的自治の原則に抵触するなどの問題点には注意が必要そうです。

鵜篭くんの権利濫用原則については,比例原則との対比として,比例原則が量的規制なのに対し,権利濫用原則が質的規制ではないかという結論が提示されました。権利濫用原則は,とある目的のための法制度を異なる目的のために流用するという場面で特に問題となるので,確かに質的な規制といえる部分は多分にあるように思われます。目的の流用という側面から考えると,法律の目的規定違反による違法判断(つまり,単純な法解釈)でカタがつくということも考えられるという点も先生からご説明いただきました。

栄留くんの行政指導については,私のいたグループでは,石油カルテル事件との関連から,行政指導の適法性と違法性阻却事由との関係性の方に話がいきました。行政指導は,柔軟性のある行政の活動でありメリットも当然あるわけですが,このカルテル事件のような不透明性があるということは留意しておきたいものです。

以上6名の報告がありましたが,どの報告も水準が高く,良い報告だったのではないでしょうか。次回も同様に,3年生による行政法Ⅰの復習の報告があります。4年生も行政法Ⅰについては記憶があいまいな部分が多い(私だけ?)と思われますので,一緒に復習ができたらと思います(安井)。

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